ねぇねぇ、おじさん
やぁ、久しぶりだね。どうしたんだい
お父さんは「聴き比べ」ってのが好きなんだけど、僕は指揮者やオーケストラの違いがよく分かんなくて
なるほど。違いが分かりやすい例で説明しよう
指揮者について先に説明しよう。まずは、この演奏を聴いてみて欲しい。ベルリンフィルの演奏だよ。
チャイコフスキーの「悲愴」だね。雪嵐が降っているような激しい演奏だね。
そう。これはキリル・ペトレンコという指揮者で、今のベルリンフィルの首席指揮者だ。
次にこの演奏を見て欲しい。これはヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮した同じ曲の演奏だ。
音質はちょっと悪いけど、違うのがよく分かる。激しいんだけど、すごい集中力で一つになって演奏されている感じがかな。指揮者も目をつぶって指揮しているし、没頭している感じがする。
そう。ヘルベルト・フォン・カラヤンは音楽に集中するため、目を閉じて指揮をしていた時期もあったんだ。「カラヤン美学」という極限まで磨かれた美しさが定評だった。
これはどうだろう。クリスティアン・ティーレマンという指揮者が同じ曲を同じオーケストラで演奏したものだ。
ん、これは同じ曲なんだけどちょっとゆっくりになってるね。あと何か重厚っていうのかな。音楽に重さを感じる。
よく気付いたね。ティーレマンはドイツ音楽を得意としていて、特にヴァーグナーのオペラで活躍している指揮者なんだ。骨太の演奏が特徴だね。
ただ、同じ指揮者でも時期によって作品の解釈や演奏スタイルが変わっていくことがもちろんある。例えば、若いときはキレッキレの指揮をしていたのに、年を重ねて音楽が円熟してきたり、テンポが遅くなったりするのはよくあるんだ。
なるほど。
今度はオーケストラの違いを聴いてみよう。同じチャイコフスキーの交響曲第5番で、まずはベルリンフィルの演奏から。
やっぱうまいね。さっきの「悲愴」でのバリバリ弾いている感じと違って、しっとりしている感じだね。
うんうん。それでは別のオーケストラで同じ曲の同じ部分を聴いてみようか。オランダのオーケストラ、コンセルトヘボウ管弦楽団だ。
ん、何か違う。こっちのほうが色々な楽器の音が豊かに聴こえるような。
良い着眼点だ。レコーディングの音質の違いとかもあるのだろうけど、確かにコンセルトヘボウ管のほうがふくよかな音楽に聴こえるね。おじさんは「コンセルトヘボウ・サウンド」と呼んでいるんだけど、金管がツヤがあったり、木管や弦も豊かな響きが特徴だ。
もちろん、ベルリンフィルもコンセルトヘボウ管もどっちも世界最高峰のオーケストラで、うまいのは間違いない。ただ、演奏する作品によってはこっちのオーケストラのほうが向いているっていうのはあるよ。
うちのお父さんも、ブルックナー聴くならウィーンフィルだとか、マーラー聴くならコンセルトヘボウ管だとか、よく言っているよ。
同じ作品でも、指揮者の解釈や音楽の方向性、オーケストラの持ち味によって全然違って聴こえるのがクラシック音楽の面白いところなんだ。「聴き比べ」ってやつだね。
クラシック音楽の演奏、録音は本当に数多い。何が良いのか分からないまま闇雲に聴いていても、自分が好きな演奏にたどり着けないかもしれない。1つの作品で聴き比べてみて、好きな指揮者やオーケストラが見つかったら、その後はその指揮者やオーケストラの別のレコーディングを聴いてみよう。そうしたらハズレを引かずに自分が良いなと思える演奏に出会えるだろう。
分かった。まずはベートーヴェンの「運命」で聴き比べてみようかな。
おじさん、ありがとう!
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