このアルバムの3つのポイント

ストラヴィンスキー四大バレエ作品 ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1988, 95年)
ストラヴィンスキー四大バレエ作品 ベルナルト・ハイティンク/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1988, 95年)
  • ハイティンクがベルリンフィルと録音したストラヴィンスキーのバレエ音楽
  • ベルリンフィルの高い機能性
  • ハイティンクらしいバランス感覚

先月(2022年4月)にCDがリリースされたばかりなのが、サー・サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団の三大バレエ音楽(春の祭典、ストラヴィンスキー、火の鳥)。ただ、最新リリースですが、録音時期は2017年9月。ラトルがロンドン響の音楽監督就任記念でのライヴ録音です。

こちらの記事で紹介したように、ラトルはロンドン響の音楽監督を2023年で降り、バイエルン放送交響楽団の首席指揮者に同じ2023年から就任する予定です。なのでストラヴィンスキーのバレエ音楽は勇退を決めたロンドン響との最新録音かと期待したのですが、5年も前のもの。また、演奏もクセが強くて、何回も聴きましたがまだ消化しきれていません。

ということで今日紹介するのは、ストラヴィンスキーのバレエ音楽の録音でも、ベルナルト・ハイティンクベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したもの。ハイティンクの充実ぶりとバランス感覚がよく出ていて愛聴しているアルバムです。

ハイティンクは29年務めたアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)の首席指揮者を1988年に退任していますが、その集大成とも言える85年から87年に掛けて録音されたベートーヴェンの交響曲全集はレコード・アカデミー賞を受賞した名盤として知られています。

ハイティンクはオーソドックスな解釈で知られますが、2000年代以降はより自然体な演奏にシフトしていきました。一方で、80年代後半から90年代は気迫がこもった充実した演奏が多く、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とはブルックナーの交響曲全集を開始しましたが頓挫して選集として終わっています。ただ1995年の交響曲第8番の録音など、この時期のハイティンクらしい気迫があります。

またベルリンフィルとはマーラーの交響曲全集を開始していて、こちらも途中で終わっています。こちらでハイティンクのマーラー録音を整理していますが、ベルリンフィルの圧倒的なパワーとハイティンクの心技体が一体となったような熱演でした。

今回紹介するストラヴィンスキーも、1988年と95年の録音。ベルリンフィルの首席指揮者を長年務めていたヘルベルト・フォン・カラヤンとオーケストラとの間に軋轢があり、89年4月に辞任し7月に急逝してしまうのですが、カラヤン亡き後のベルリンフィルをリードしたのがクラウディオ・アバド。1990年から首席指揮者に就任し、2002年まで在任しました。

このストラヴィンスキーはカラヤンとの晩年と、アバド時代になってから、という時代にまたがっています。

私は2007年にリリースされたタワーレコード限定の2枚組のCDで聴いています。

ハイティンクの卓越したバランス感覚

ハイティンクは幅広いレパートリーを誇っていましたが、マーラーとブルックナーは特にその中心にあったと言えるでしょう。ただ、ハイティンクの持ち前のバランス感覚がよく出ていると感じるのがこのストラヴィンスキー。特に春の祭典です。ベルリンフィルの機能性も見事なのですが、個々の楽器の色彩の重なり方が本当にうまいと思います。中庸な解釈のハイティンクですし、ライヴ録音ではないので、演奏は圧倒するという感じではなく丹精に作り上げています。

火の鳥ペトルーシュカでの色彩の鮮やかさや絶妙なバランスで生み出されるハーモニーも良いですね。

巨匠ハイティンクがベルリンフィルと録音したストラヴィンスキーのバレエ音楽。バランス良く色彩が織り込まれています。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:ベルナルト・ハイティンク
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1988年10月(火の鳥、ロシア風スケルツォ), 12月17-18日(ペトルーシュカ),
1995年2月20-23日(春の祭典、プルチネルラ), ベルリン・フィルハーモニー

iTunesで春の祭典・プルチネルラペトルーシュカ火の鳥を試聴可能。

特に無し。

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