グラモフォン賞受賞、古巣ベルリンフィルでのマーラー交響曲第6番「悲劇的」 アバド(2004年)

クラウディオ・アバド シンフォニーエディション

このアルバムの3つのポイント

クラウディオ・アバド シンフォニーエディション
クラウディオ・アバド シンフォニーエディション
  • クラウディオ・アバドが古巣に客演してライヴ録音した「悲劇的」
  • じっくりと深い解釈
  • 英国グラモフォン賞の最優秀レコード賞を受賞

クラウディオ・アバドは首席指揮者を務めていたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と1999年からマーラー・チクルスを開始しましたが、胃がんによる健康面での問題で2002年にそのポストを下りています。

チクルス第4弾となる交響曲第6番「悲劇的」は、首席指揮者退任後の2004年6月のベルリン・フィルハーモニーでの演奏会でのライヴ録音でした。

レコードショップの説明によると、このレコーディングについて次のような賛辞が贈られたそうです。

孤高の聖職者のごとくマーラーを演じたアバド。この音楽はほとんど宗教だ!あなたも一度聴いたら改宗せざるを得なくなる。

The Financial Times (タワーレコード翻訳)

また、アバドがベルリンフィルの2年前まで首席指揮者だったこともあり、

前王の帰還

Berliner Zeitung (タワーレコード翻訳)

なんてレビューも。

アバドは首席指揮者のポストを退任してからもベルリンフィルに客演をおこないました。またルツェルン音楽祭ではルツェルン祝祭管弦楽団と演奏したものが映像作品としてもリリースされていますが、晩年のアバドはより作品への解釈を深め、高い知性と胸に宿る情熱を併せ持った名演を数々おこなってきました。

首席指揮者という重圧から解放され、より音楽に向き合うことによって演奏に深みが増した印象です。

「悲劇的」については、シカゴ交響楽団1980年に録音していたアバドですが、その時は第1楽章が23分33秒、第2楽章スケルツォが13分20秒、第3楽章アンダンテが15分56秒、第4楽章が30分56秒でトータル83分47秒という超大作でした。

今回の2004年のベルリンフィルとのライヴ録音では、第1楽章が22分48秒、第2楽章アンダンテが13分57秒、第3楽章スケルツォが12分43秒、そして第4楽章が29分44秒でトータル79分22秒になっています。晩年になると演奏が肥大化するのが指揮者の常でもありますが、アバドに関しては再録音のほうが速くなっています。

第2楽章アンダンテ→第3楽章スケルツォの順番は、マーラー協会の意向を踏まえた最近の順番ですが、私個人的にはスケルツォ→アンダンテのほうが音楽性の流れが良くなると考えています。

この録音は、2006年の英国グラモフォン賞管弦楽曲部門最優秀レコード賞(Record of the year)のダブル受賞をしました。

グラモフォン賞は知性的な演奏が受賞される傾向にあると思いますが、アバドとベルリンフィルの「悲劇的」も、標題の重々しい悲劇を求める演奏とは全く違っていて、むしろ純音楽としてマーラーのスコアを美しく調和させた演奏になっています。

2000年や2001年のこのコンビの演奏は、ベートーヴェンの交響曲全集のように激しさを追い求めたが故にアンサンブルが荒削りになっているところがありましたが、この「悲劇的」では別人が指揮しているかと思うぐらいに、調和の取れたハーモニーに仕上がっています。

晩年、モーツァルト管弦楽団やルツェルン祝祭管弦楽団を指揮して奥深い音楽を生み出したアバドですが、そのアプローチがこのアルバムを聴くと予見できます。

「悲劇的」という標題を求める方にはガッカリするかもしれませんが、マーラーの超大作を純音楽として美しい調和を持って演奏しています。アバドの知性と情熱に裏付けられた、晩年のアプローチを予感させるアルバムです。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:クラウディオ・アバド
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2004年6月, ベルリン・フィルハーモニー(ライヴ)

【タワレコ】クラウディオ・アバド/ベルリンフィル Mahler: Symphony No.6(輸入盤CD)

iTunesで試聴可能。

2006年英国グラモフォン賞の「Orchestral」及び「Record of the Year」を受賞。

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