米グラミー賞&英グラモフォン賞受賞!ポリーニとアバド/シカゴ響の圧倒的なバルトークのピアノ協奏曲(1977年)

バルトーク ピアノ協奏曲第1番・2番 マウリツィオ・ポリーニ/クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団(1977年)

このアルバムの3つのポイント

バルトーク ピアノ協奏曲第1番・2番 マウリツィオ・ポリーニ/クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団(1977年)
バルトーク ピアノ協奏曲第1番・2番 マウリツィオ・ポリーニ/クラウディオ・アバド/シカゴ交響楽団(1977年)
  • ポリーニ唯一のバルトーク録音
  • 研ぎ澄まされたポリーニのピアノとアバド・シカゴ響のスケール
  • 米国グラミー賞と英国グラモフォン賞のダブル受賞!

現代を代表するピアニストのマウリツィオ・ポリーニと、世界的指揮者クラウディオ・アバドは、どちらもイタリア・ミラノ出身で、子どものときから親交がありました。

1992年イタリアの音楽雑誌ムジカの編集長ウンベルト・マジーニによるインタビューで、ポリーニはアバドについてこう語っています。

U) アバドとはもう数十年協演なさっておいでですね。(中略)お二人の関係についてお話しいただけますか。

P) 私たちは子供の頃に知り合いました。彼の方が少し年長ですけれど。(中略)私たちは音楽的にいってもとてもよく理解し合って来ました。特に良かったと思える協演は、ウィーンでウィーン・フィルと演奏したブラームスの第1番、やはりウィーン・フィルとのニューヨークでのベートーヴェンの第4番、第5番、それからまだいろいろ、バルトークの第1番、第2番、シェーンベルクなどがあります。

ウンベルト・マジーニによる1992年のインタビュー(ONTOMO MOOK マウリツィオ・ポリーニ, 音楽之友社)

アバド指揮ベルリンフィルとのブラームスのピアノ協奏曲ウィーンフィルとの1976年のブラームスのピアノ協奏曲第2番については紹介してきましたが、ウィーンフィルとの第1番が良かったのですね。レコーディングだとウィーンフィルとの第1番はカール・ベームが指揮していますよね。

ポリーニ自身が良かったと語っているバルトークのピアノ協奏曲第1番と第2番は、レコーディングでは1977年2月にシカゴのオーケストラ・ホールで録音したものがあります。アバド指揮シカゴ交響楽団との演奏で、今のところポリーニ唯一のバルトーク録音。米国グラミー賞と英国グラモフォン賞をダブル受賞した名盤として知られています。

アバドは1982年から85年にシカゴ響の首席客演指揮者を務め、そしてサー・ゲオルグ・ショルティの後の音楽監督を選ぶ楽団員投票で、僅差でダニエル・バレンボイムに決まりましたが、シカゴ響から信頼されている指揮者でした。このバルトークの録音は1977年2月なのでそれよりも前のものですが、この演奏を聴くとアバド×シカゴ響の魅力が感じられます。

バルトークのピアノ協奏曲には第3番もあるのですが、そちらは最晩年の作品で、打鍵的で無調的な音楽だった第1番・第2番とは全く違う作品で、調性や旋律があって馴染みやすいです。ただ、作曲家兼指揮者のピエール・ブーレーズは「退嬰的である」と評してしばらく演奏しなかったときもありました。

ポリーニとアバドがバルトークのピアノ協奏曲全集にしないで第1番と第2番だけにしたというのが重要なメッセージのような気がしていて、ブーレーズやシェーンベルクなどの現代音楽を得意としたポリーニとアバドらしく、このバルトークでも前衛的な演奏をおこなっています。ポリーニがインタビューで語っていたように、アバドと音楽性のベクトルが同じ方向を向いているのがこの演奏でよく感じられます。

ポリーニの打鍵も非常によく考えられていて、どうすれば無調な響きがするのか、そして太鼓の連打のように打楽器的に演奏するにはどのように打鍵すれば良いのか、スタッカートはどこまでスタッカートにすればエッジの効いた演奏になるのか、などピアノへのタッチをこの上なく工夫しているのがよく分かります。

シカゴ響のパワフルな演奏も圧巻です。この翌年にショルティとヴラディーミル・アシュケナージがバルトークのピアノ協奏曲全集を始めたのですが、このポリーニ・アバド・シカゴ盤と重複しないようにしたためか、オーケストラはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団でした。その演奏も素晴らしいとは思うのですが、やはりシカゴ響のパワフルさには敵わないと思います。特に原始的な音楽の第1番や2番ではなおさら。

一つ惜しいのは音質ですね。ドイツ・グラモフォンはアナログ時代は音質がイマイチなものも少なくないのですが、このバルトークの録音では音作りがやや平坦で大音量で聴いても広がりが感じられません。私は2016年にリリースされた「マウリツィオ・ポリーニ ドイツ・グラモフォン録音全集」で聴いていますが、最近のSHM−CDやUHQCDだとこの辺の音質が改善されているのでしょうか。

ポリーニとアバドの最強コンビにシカゴ響という理想的なオーケストラが組み合わさって演奏された前衛的なバルトークのピアノ協奏曲。圧巻です。

オススメ度

評価 :5/5。

ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
指揮:クラウディオ・アバド
シカゴ交響楽団
録音:1977年2月, シカゴ・オーケストラ・ホール

iTunesで試聴可能。

1979年米国グラミー賞の「BEST CLASSICAL PERFORMANCE – INSTRUMENTAL SOLOIST OR SOLOISTS (WITH ORCHESTRA)」を受賞。
1979年英国グラモフォン賞の「Concerto」部門を受賞。

「米グラミー賞&英グラモフォン賞受賞!ポリーニとアバド/シカゴ響の圧倒的なバルトークのピアノ協奏曲(1977年)」への1件のフィードバック

  1. すごいものを聞かせていただきました。ポリーニのピアノの粒立ちがすごい。Unreal! 本当に人間が弾いているの?難解な楽曲なのに「すごい」という気持ちが先に立って、あっという間に聴ききってしまいました。シカゴ響もまさに「協奏」という感じで、すごいピアノと堂々と渡り合っていました。モニターヘッドホンで聴くと少し高音が強すぎる感もありますが、全ての楽器のパートが鮮明に聞こえます。かゆいところに手が届く感じ。聴き終わると脳が活性化した気分になります。

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