このアルバムの3つのポイント
- マーラーを得意としたバルビローリによる指揮
- ゆっくりとしたテンポで伸びやかに引き出される旋律
- ステレオ効果
マーラーを得意とした指揮者バルビローリ
英国出身の名指揮者、サー・ジョン・バルビローリ。マーラーを得意とし、1963年に久しぶりにベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に客演した際には交響曲第9番を指揮し、聴衆はもちろんオーケストラも感動して翌年にレコーディングが実現されたのが以前紹介した1964年のベルリンフィルとの交響曲第9番の録音。まだマーラーを演奏することが珍しかったベルリンフィルにマーラー演奏の礎を築いたと言われています。
それ以外にも、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団(現フィルハーモニア管弦楽団)と1967年に交響曲第6番「悲劇的」を録音していて、非常にゆったりとした個性的な演奏でした。バルビローリの解釈は旋律を重視し、カルロ・マリア・ジュリーニと少し似たところもありますが、オーケストラが対向配置で演奏しているので、標準配置での演奏・録音に聴き慣れていると新たな発見があります。
バルビローリは今年になってから聴き始めたばかりですが、なるほどと思う演奏が多く、聴き進めるのが楽しみな指揮者の一人です。
今回紹介するのは同じくフィルハーモニア管との第5番嬰ハ短調です。1969年7月、英国のワトフォード・タウン・ホールでのセッション録音。
見事なステレオ効果
バルビローリの録音はステレオ効果が見事だと思います。第9番でもオーケストラが対向配置だったので、特に第4楽章でイヤホンで聴くと第1ヴァイオリンが左から、第2ヴァイオリンが右からシンメトリックに聴こえました。
この第5番でも楽器の位置が手に取るように分かるステレオ録音で、第1楽章の冒頭では右側からトランペット、ホルンは左のやや奥から聴こえます。ヴァイオリンやチェロの歌わせ方が見事です。
第4楽章ではたっぷりと歌わせています。同じくマーラーを得意とした指揮者レナード・バーンスタインはたとえば1987年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との第5番野ライヴ録音でこの第4楽章で決して心地よくならないように倚音を強調してマーラー心情をえぐるように表していましたが、バルビローリはたっぷりと歌わせています。私は好きです。
第5楽章でも非常にゆったりとしてこれほど旋律があることを再認識しました。
まとめ
マーラーの交響曲をゆったりとしたテンポで旋律を引き出したバルビローリの手腕。こういう演奏も素晴らしい。
オススメ度
指揮:サー・ジョン・バルビローリ
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
録音:1969年7月16-18日, ワトフォード・タウン・ホール
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
コメント数:1
Apple Music でハイレゾ 24bit/192kHz で配信されていて、古い録音でも可能な限り良い状態で聴いてもらいたい、という情熱を感じます。1楽章も2楽章も、テンポはかなりゆっくり目です。3楽章はリズムに少しクセがある感じ。4楽章は素直に美しいです。5楽章が特に遅く、ラトル、バーンスタインなどの演奏より 2分半くらい長くなっています。ストレスの解消には向いていないかもしれませんが、興味深い演奏です。