このアルバムの3つのポイント

マーラー交響曲第5番 レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1987年)
マーラー交響曲第5番 レナード・バーンスタイン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1987年)
  • マーラーの第一人者バーンスタインによる指揮
  • ウィーンフィルとのフランクフルトでのライヴ録音
  • 聴きやすさを捨てた、えぐるような演奏

20世紀を代表する指揮者の一人レナード・バーンスタイン。作曲家でもあったバーンスタインが指揮者として注力したのがグスタフ・マーラー。交響曲全集も2回完成させていて、1回目がソニー&RCAレーベルで当時音楽監督を務めていたニューヨーク・フィルハーモニックと第1番から第7番、9番を1960年から67年に録音し、第8番だけロンドン交響楽団で録音しました。そして2回目は1974年から88年にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ニューヨークフィルを振り分けて録音しています。

他にも1979年10月のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との第9番のライヴ録音や、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団とのライヴ録音などあります。

今回紹介するのは2回目の全集の交響曲第5番。1987年9月、ドイツ・フランクフルトにあるアルテ・オーパー(旧オペラ座)でのウィーンフィルとのライヴ録音です。

マーラーの交響曲第5番は名指揮者によるレコーディングが充実しています。

1970年3月、ゲオルグ・ショルティがシカゴ交響楽団の音楽監督に就任して最初のレコーディングとなった第5番や、その20年後の1990年11月のウィーンでのライヴ録音もあります。

また、ベルリンフィルだと1973年2月、ヘルベルト・フォン・カラヤンがついにマーラーを録音したベルリンフィルとの第5番は評論家から冷遇されましたが、アダージェットはとにかく美しかったですし、1993年11月のクラウディオ・アバドとの情熱的なライヴ録音2002年9月のサー・サイモン・ラトルとの首席指揮者就任直後のライヴ録音もあります。

その中でこのバーンスタインとウィーンフィルの録音は唯一無二と言って良いかもしれません。どの演奏よりもえぐるような悲痛さで訴えかけてきます。

第1楽章は非常にゆったりとしたテンポでトランペットのソロがどこか不安そうに始めます。フォルティッシモのトゥッティが加わってから再度トランペットがメロディを奏でるのですが、つんざくような悲痛な音色を絞り出し、オーケストラ全体も心をえぐるように悲しみに包まれていきます。Etwas gehaltener (いくぶんゆっくりと)で主題に入るとこれでもかと切ない旋律が流れます。バーンスタインは葬送行進曲を強く意識しているのでしょう、救いのないような暗さで足取りも重く音楽を停滞させるように進めていきます。

この後、最初のファンファーレが聴こえてから第1トリオで急激にジェットコースターのようになるのですが、ショルティやアバド、ラトルだったらここでテンポを一気に上げて激流を生み出すところですが、バーンスタインはここでもテンポは上げてはいますが行きすぎないように抑えています。再び葬送行進曲の世界に戻され、重たい足取りで音楽がゆっくりと進んで行きます。楽章末では静かに事切れるかのように終えます。聴衆の聴きやすさよりも、いかにマーラーの悲痛さを表現するかに重きを置いたような演奏です。

そして第2楽章はカオスのように様々な情念が渦のように荒れ狂います。ここでもバーンスタインは心地良い響きには決してせず、トランペットも音色を尖らせています。第1楽章、第2楽章と非常に重たい音楽です。

ようやく第3楽章で救いの明るい音楽になりますが、複雑な旋律が絡み合うマーラーの世界観が出ています。ただ、マーラーのこの曲を既に聴いたことがあってベースがあると聴き比べて特徴が分かるのですが、初めてこの第5番を聴く方には難解に感じるでしょう。バーンスタインはマーラー入門者向けではなく玄人好みだと思います。

第4楽章のアダージェット。映画「ベニスに死す」でBGMとして使用されて有名にもなりましたし、カラヤンはこの楽章で官能的な美しさを最大限引き出していました。ただ、バーンスタインが指揮すると生易しい音楽にはしません。この楽章では倚音(いおん)と言われる不協和音が登場するのですが、バーンスタインは心地良いメロディよりもこの不協和音を際立たせて、ここでも悲痛さを表しています。

第5楽章のフィナーレになってようやく晴れたような明るい世界が訪れます。4楽章までとの対比がとにかくすごいですが、ここに行き着くまで聴き続けるのも神経をすり減らす感じがします。最後は華々しく壮大に終わります。

マーラーの第一人者、バーンスタインがウィーンフィルとライヴ録音した第5番。心をえぐるような悲痛さが引き出された、唯一無二の演奏です。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:レナード・バーンスタイン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1987年9月, アルテ・オーパー(ライヴ)

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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コメント数:1

  1. この演奏は自分の中にあるマーラーの5番と少しイメージが違いました。1・2楽章はこれでもかというくらいに深刻。3楽章でも楽しくならずになんだか複雑。4楽章はさすがに美しい。5楽章はこちらが期待しているハラハラドキドキワクワク感は抑え目で、いろんなフレーズが意味ありげに問いかけてきているような気がしました。音だけだとわかりにくいとこがあるかもしれません。

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