ブルックナー交響曲第8番の名盤紹介〜17枚聴いた中でのオススメは?〜

アントン・ブルックナーの肖像画

作曲家アントン・ブルックナーの交響曲の中で、交響曲第8番ハ短調はとりわけ人気の高い作品。雄大でスケールの大きな曲想ですし、第3楽章ではうっとりするような美しさ。そして第4楽章では高らかなファンファーレで勝利の凱旋を伝えるような爽快感があります。

アントン・ブルックナーの肖像画
アントン・ブルックナーの肖像画

これだけの名曲ですので、名演・名盤も数多いですが、私も今まで16枚のレコーディングを聴き、1枚のBlu-rayで映像を観てきました。その中でもオススメを紹介していきたいと思います。

この曲を多く聴いてきた印象ですが、古くは1960年代のベルナルト・ハイティンクヘルベルト・フォン・カラヤンラファエル・クーベリックから、2019年のアンドリス・ネルソンスクリスティアン・ティーレマンの最新録音までカバーしています。

ただ、名演と言われているフルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ、朝比奈 隆など、聴けていない録音もまだまだたくさんありますので、今後も新たに聴いたものがあればこの記事に追記していきたいと思います。

ブルックナーは作品に何度も手を加えた改訂癖がありまして、交響曲第8番も第1槁(1887年版)と第2槁(1890年版)があり、さらに誰が校訂したかによって、ローベルト・ハース校訂版や、レオポルト・ノーヴァク校訂版などがあります。

ブルックナー国際協会では、第2槁ノーヴァク版を交響曲第8番を正としていますが、指揮者によっては、音楽がカットされていない第2槁ハース版を使う場合もあります。

この記事では、どの版を使ったのかの情報も載せていきます。

第2槁ハース版

評価 :4/5。
ベルナルト・ハイティンク/コンセルトヘボウ管 ブラームス/ブルックナー/マーラー交響曲全集

若かりしハイティンクの切れ味鋭い演奏

ベルナルト・ハイティンクはブルックナーを何度も演奏した指揮者ですが、1960年からアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮してブルックナーの交響曲全集に取り組んでいます。
交響曲第8番はその最初を飾ったもので、まだ昔ながらのスタイルを保っているコンセルトヘボウ管のサウンドと、若かりし頃の切れ味鋭い指揮がマッチしています。
ハース版を使っているのにトータルの演奏時間が74分という驚異的な速さです。

第2槁ノーヴァク版

評価 :5/5。
ブルックナー交響曲全集 オイゲン・ヨッフム/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団&バイエルン放送交響楽団(1958-1966年)

ブルックナーの大家、ヨッフムの最初の全集から

オイゲン・ヨッフムはブルックナーを得意とした指揮者で、ブルックナー国際協会の会長も務めたことがありました。
交響曲全集も2回録音しました。ノーヴァクによる校訂にも協力し、レコーディングは2回ともノーヴァク版を使っています。
最初の全集での交響曲第8番は、1964年にベルリンフィルと録音したもの。
聴きやすさにはこだわらず、妥協しない響きでブルックナーの楽曲の持つ素の部分をさらけ出したかのような演奏です。

第2槁ハース版

評価 :4/5。
ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団 1965年来日公演ライヴ

クーベリックとバイエルン放送響の来日公演でのライヴ!

1965年4月にラファエル・クーベリックとバイエルン放送交響楽団は来日公演をおこないました。大阪のフェスティバルホールで演奏されたブルックナーの交響曲第8番が音源として残っており、2021年4月にリリースされたばかり。
バイエルン放送響らしいスッキリとしたハーモニーで、金管は物足りなさが感じるかもしれませんが、クライマックスでは速めのテンポで混沌とした世界を描き、そして最後も一気に駆け込み、ティンパニも見事に決まっています。

第2槁ハース版

評価 :4/5。
ブルックナー交響曲第8番 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年来日公演

カラヤンとベルリンフィルの来日公演でのライヴ!

1966年4月から5月にかけて、ヘルベルト・フォン・カラヤンとベルリンフィルが来日して東京、札幌、岡山、松山、福岡、そしてまた東京と3週間で多数の演奏会をおこないました。
5月2日の東京文化会館でのブルックナーの交響曲第8番のライヴ録音がこちらですが、カラヤンこだわりのハース版で直球勝負の演奏を聴かせてくれます。

第2槁ノーヴァク版

評価 :5/5。
ブルックナー交響曲第8番 ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1966年)

オペラの世界を交響曲に。緊張感と美しさ、そして大迫力

ゲオルグ・ショルティはウィーンフィルとヴァーグナーの楽劇「ニーベルングの指環」を全曲セッション録音するという快挙を達成しましたが、同時期に交響曲もいくつか録音しています。
ブルックナーの交響曲第8番は1966年の演奏で、オペラの世界を交響曲に持ってきたようなスケール。緊張感や美しさ、そして大迫力でこの大作を演奏しきっています。

第2槁ハース版

評価 :2/5。
ヘルベルト・フォン・カラヤン シンフォニーエディション

カラヤン/ベルリンフィルの交響曲全集の最初を飾った録音

ヘルベルト・フォン・カラヤンはベルリンフィルと1975年から1981年にかけてブルックナーの交響曲全集を完成させました。
交響曲第8番はその最初を飾っ録音で、1975年1月に録音した後に3ヶ月寝かしてまた4月に録音をおこなっています。
長い時間を掛けてじっくりレコーディングすることで、細部まで磨き抜かれた演奏になった一方で、全曲を通しで聞いてみると、どこかチグハグな印象もあり、オススメはしづらい演奏です。

第2槁ノーヴァク版

評価 :5/5。
ブルックナー交響曲第8番 カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1976年)

スコアに忠実ながら真髄を浮き彫りに

カール・ベームはブルックナーを得意とし、交響曲全集こそ完成しませんでしたが、残された録音はどれも名演です。
交響曲第8番は1976年の録音で、スコアに忠実ながら不気味さ、緊張感、そして穏やかさ、調和を描いています。
迫力は弱いかもしれませんが、ブルックナーの真髄を浮き彫りにした名盤です。

第2槁ノーヴァク版

評価 :3/5。
ブルックナー交響曲全集 オイゲン・ヨッフム/シュターツカペレ・ドレスデン(1975-1980年)

オイゲン・ヨッフム2回目の全集から

オイゲン・ヨッフムは2回目のブルックナー交響曲全集を1975年から1980年にシュターツカペレ・ドレスデンと録音しています。1回目よりさらにエッジを効かせた演奏で、交響曲第8番もより尖った演奏になっています。

第2槁ハース版

評価 :3/5。
ブルックナー交響曲第8番 ベルナルト・ハイティンク/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1981年)

ハイティンク/コンセルトヘボウ管の再録音で、長大に

ベルナルト・ハイティンクは1978年から1981年にコンセルトヘボウ管を指揮してブルックナーの後期交響曲を再録音しました。交響曲第8番は全集のときと同じハース版を使用していますが、テンポがかなりゆったりになり、トータルで85分を要する長大な演奏へと変化しています。

第2槁ノーヴァク版

評価 :5/5。
ブルックナー交響曲第8番 カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1984年)

長大な演奏ながらもしっかりとした骨格を持たせた演奏

カルロ・マリア・ジュリーニは1980年代にウィーンフィルとブルックナーの後期交響曲を録音しています。
1984年の交響曲第8番は日本のレコードアカデミー賞を受賞した名盤ですが、ノーヴァク版なのにトータルの演奏時間が88分という長大さ。
しかし、しっかりとした骨格を持たせてメリハリが効いた演奏に仕上がっています。

第2槁ハース版

評価 :4/5。
ブルックナー交響曲第8番 ヘルベルト・フォン・カラヤン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1988年)

最晩年のカラヤンとウィーンフィルの雄大なブルックナー

ヘルベルト・フォン・カラヤンは、最晩年はウィーンフィルとの録音が多くなり、ゆったりとしたテンポでこれまでの集大成のような味わい深い演奏をおこなってきました。
交響曲第8番についても雄大で、じっくりと噛みしめるような演奏に仕上がっています。

第2槁ノーヴァク版

評価 :4/5。
ブルックナー交響曲第8番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1990年)

ショルティとシカゴ響のサンクトペテルブルクでのライヴ!

サー・ゲオルグ・ショルティは1990年11月にソ連のサンクトペテルブルクで演奏会をおこなっていますが、そこで演奏されたのがブルックナーの交響曲第8番。
シカゴ響のパワフルな金管を鳴らしきったスケールの大きな演奏で、シカゴ響の明朗な響きを活かしきっています。特に第4楽章のフィナーレは圧巻です。
1966年のウィーンフィルとの旧録よりも第3楽章のアダージョが少し急ぎ気味になってしまったので、私は旧録のほうが好みです。

第2槁ノーヴァク版

評価 :3/5。
ブルックナー交響曲第8番 リッカルド・シャイー/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(1999年)

ブルックナーの交響曲全集を締め括った、まろやかなサウンド

リッカルド・シャイーはベルリン・ドイツ響とコンセルトヘボウ管を振り分けてブルックナーの交響曲全集を完成させました。交響曲第8番はその最後を飾ったもので、まろやかなコンセルトヘボウ・サウンドを活かして流麗な仕上がりになっています。

第2槁ハース版

評価 :3/5。
ブルックナー交響曲全集(Blu-ray) クリスティアン・ティーレマン/シュターツカペレ・ドレスデン

ティーレマンとの映像でのブルックナー交響曲全集より

2012年からシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者に就任したクリスティアン・ティーレマン。何でも得意とする指揮者が多い中、ティーレマンはオペラに軸足を置き、中でもヴァーグナー、R.シュトラウスを得意とするドイツ音楽の重鎮。ブルックナーも得意としていて、2019年からウィーンフィルともブルックナーの交響曲全集に取り組んでいますが、2012年から2019年にシュターツカペレ・ドレスデンともライヴで9つの交響曲を映像で収録しています。交響曲第8番は2012年6月のドレスデン・ゼンパー・オーパーでのライヴ録音。ウィーンフィルの優雅な響きとは違い、野武士のような荒さを持つシュターツカペレ・ドレスデン。ゆったりとしたテンポで骨太の演奏をおこなっています。

第2槁ノーヴァク版

評価 :5/5。
ブルックナー交響曲第8番 マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団(2017年)

マリス・ヤンソンス晩年の極上のサウンド

マリス・ヤンソンスはブルックナーの交響曲をいくつか演奏しており、コンセルトヘボウ管とバイエルン放送響それぞれにライヴ録音もおこなっています。アプローチが全く異なるので聴き比べてみると面白いですが、バイエルン放送響との極上のサウンドで生み出したブルックナーのほうが私は好みです。
交響曲第8番は2017年11月の演奏で、ヤンソンスの音楽はさらに熟成され、そしてバイエルン放送響のハーモニーはさらに理想的なものに昇華しています。第3楽章の美しさは言葉に表せないです。

第2槁ノーヴァク版

評価 :3/5。
ブルックナー交響曲第2番&第8番 アンドリス・ネルソンス/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(2019年)

ネルソンス×ゲヴァントハウス管のブルックナー・チクルス第5弾

2024年のブルックナー生誕200年のアニバーサリーに向けて、アンドリス・ネルソンスとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団はブルックナーの交響曲全集を進めています。
第5弾となる最新録音が、2019年9月の交響曲第8番と12月の交響曲第2番のライヴ録音。交響曲第8番は、フィナーレで「速くせずに」という指示をまるっきり無視した特急の演奏をおこなっています。

第2槁ハース版

評価 :4/5。
ブルックナー交響曲第8番 クリスティアン・ティーレマン/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(2019年)

ティーレマンとウィーンフィルのブルックナー・チクルス第1弾!

2024年のブルックナー生誕200年のアニバーサリーに向けて、クリスティアン・ティーレマンはウィーンフィルとブルックナーの交響曲全集の企画を進めています。第1弾が2019年10月の交響曲第8番のライヴ録音。
ハース版を使った長大な演奏で、聞き手に高い集中力を求めますが、最後まで聴き終わったときには思わずぐったりしてしまいます。

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