セルジュ・チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 リスボン・ライヴ アイキャッチ画像

このアルバムの3つのポイント

セルジュ・チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 リスボン・ライヴ(1994年4月23日)
セルジュ・チェリビダッケ&ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 リスボン・ライヴ(1994年4月23日)
  • チェリビダッケの伝説のリスボン・ライヴの正規盤
  • 1時間41分の長大な旅路
  • 柔らかなミュンヘンフィルの響き

今回はいよいよチェリビダッケのリスボン・ライヴのアルバムを紹介します。

ルーマニア出身の指揮者セルジュ・チェリビダッケ(1912-96年)は録音嫌いだったため、ライヴでは絶賛を博しながらも、その真価が広まるのは没後、秘蔵になっていたレコーディングが出回るようになってからだと言われています。

特に晩年は極端に遅いテンポで演奏し、ブルックナーでは唯一無二の存在を放っていたチェリビダッケですが、彼の最高の演奏、はたまたブルックナーの交響曲第8番の最高の演奏とも言われるのが、今回紹介する1994年4月23日の演奏会のレコーディング。ポルトガルの首都リスボンでの演奏会で、通称「リスボン・ライヴ」と言われています。

2022年に数種類出た正規盤アルバム

演奏会の録音のオリジナルはポルトガルの国営ラジオ局であるRTP Antena 2が収録したもので、以前はプライベート盤として録音が流通しオークションで高値で取引されることもあったようです。

2022年になってチェリビダッケのご子息とミュンヘンフィルの承認を得て正規盤として東武ランドシステムが2022年3月にUHQCD のフォーマットで国内盤アルバムをリリースしました。タワーレコードオンラインでも2022年のクラシックの輸入盤で1位の売上となったアルバムです。

私もこの国内盤 (UHQCD)で聴いています。というのも珍しくオンラインではなくタワレコの店舗(渋谷店)に行ったときに買ったものなのですが、試聴コーナーに平積みで置いてあるのがこの国内盤だけでしたので、他の選択肢を考えずそのまま買ってしまったのですが、オンラインで調べるとこのリスボン・ライヴのアルバムは数種類あります。

2022年3月2日にUHQCD(東武レーベル)、そして6月22日にLPレコード(Altus レーベル)、12月21日にSACD (Altus)、12月28日にXRCD (Altus)が出ました。アルバムが人気だったので高音質で出ることになったのですが、先にUHQCD を買った購入者が、後になってSACD が出たので「買い手をバカにしている」という意見もありますが、今から購入するなら数種類あるうちから自分にあったものを選んだほうが良いです。

UHQCD ではマスターテープの歪みがあって第2楽章のスケルツォの一部(トラック2の4分57秒)でティンパニーの音が一瞬飛んでしまっているところがありますが、それ以外は気にならないです。Altus のほうでは音飛びが改善されているようですが、私はこのUHQCD で満足しています。

このブルックナーの交響曲第8番は、晩年のチェリビダッケらしく非常にゆったりとしています。

解説で音楽評論家の許 光俊 (きょ みつとし)さんが以下のように書いています。

最晩年のチェリビダッケはブルックナー作品を非常に遅いテンポで、ひとつひとつの音が広い空間に広がっていくのを確かめるような演奏をしていた。…(中略)…ただし、そのような音楽は、必ずしもいつでもどこでも成功したわけではない。

許 光俊、「チェリビダッケ・イン・リスボン」の解説にて

録音嫌いのチェリビダッケなので、録音のために演奏したというわけではなく、その場の聴衆のために演奏したのがたまたま録音されていて、そしてそれが会心の出来だった、これが揃ったのがリスボン・ライヴだったと思います。

演奏時間は第1楽章が19分35秒、第2楽章15分51秒、第3楽章33分28秒、第4楽章31分46秒でトータルが1時間41分。ハース版ではなくカットされているノーヴァク版第2稿 (1890年稿)なのにこの長さです。もっとも、こちらの記事で紹介した1993年9月のミュンヘンのフィルハーモニー・イン・ガスタイクでのライヴ録音は1時間44分でしたので、それに比べると若干短いですね。

この演奏はチェリビダッケにしか作れない世界観で奥行きがどこまでも広がっています。ミュンヘンフィルのどこまでも柔らかなサウンドも素晴らしく、チェリビダッケと阿吽の呼吸で滑らかにブルックナーの音楽を描いていきます。

ノーヴァク版の問題点とされる第3楽章アダージョでのフォルテッシモの連結についても、ガスタイクでのライヴ同様、チェリビダッケは2回目のフォルテッシモでやや音量を下げて小さなクレッシェンドをさせることで滑らかにつなげています。

チェリビダッケのブル8は、1990年のサントリーホール・ライヴも評判が高く、私もこれから映像で聴こうと思っていますが、このリスボン・ライヴは間違いなくチェリビダッケの最高の演奏と言えるでしょう。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:セルジュ・チェリビダッケ
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1993年4月23日, リスボン・コロシアム (ライヴ)

特に無し。

特に無し。

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