1929.3.4 – 2021.10.21
※2021/10/30 更新 NHKのプレミアムシアターでの追悼番組の情報を追加しました。
※2021/10/23 初稿
オランダ出身の巨匠指揮者、ベルナルト・ハイティンクが逝去
10月というのに12月並の寒さの日に、悲しいお知らせが入ってきました。
もう既にご存知の方も多いかもしれませんが、オランダ出身の巨匠指揮者ベルナルト・ハイティンク(Bernard Haitink) が2021年10月21日にオランダのご自宅で亡くなったとのことです。
こちらの記事(ベルナルト・ハイティンク フェアウェル・コンサート)で書きましたが、2019年の夏に90歳で指揮者としての活動から引退したハイティンク。最後の夏はオーストリアのザルツブルク音楽祭、イギリス・ロンドンでのプロムスコンサート、そして最後はスイスのルツェルン音楽祭での演奏会を最後に、65年以上に渡る指揮者のキャリアに終止符を打ちました。
私も今は、ザルツブルク音楽祭2019でのブルックナーの交響曲第7番の映像を観ながらこの記事を書いています。信じられないほど軽い指揮さばきで時の流れに身をまかせた悠久の演奏はハイティンクの境地のように思えます。第2楽章のコーダではハイティンクのために黙祷しようと思います。
世界のオーケストラから追悼が続々
ハイティンクは欧米の主要オーケストラでの演奏活動をおこなってきましたので、本当に世界から愛された指揮者だったと思います。ハイティンクと関係の深かったオーケストラから追悼文が続々と出ています。
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ハイティンクが35歳の1961年から1988年まで首席指揮者を務めたオランダの名門オーケストラ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団。首席指揮者を退任してからは疎遠になった時期もありますが、1993年以降ハイティンクは最晩年まで度々客演をおこなってきました。
ハイティンクはレコーディングが多い指揮者でしたが、首席指揮者時代でのセッション録音や2000年代以降のライヴ録音など、コンセルトヘボウ管との録音もかなりあります。ハイティンクと言えばコンセルトヘボウ管というイメージもありますね。
コンセルトヘボウ管の公式HPでは、名誉指揮者ハイティンクへの追悼文が出ています。
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団
ハイティンクのキャリアが若かった1957年から1961年に首席指揮者を務めたのが、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団。
最晩年の2019年6月15日のアムステルダム・コンセルトヘボウでの演奏会でもブルックナーの交響曲第7番を演奏し、オランダのNPOラジオ4の公式YouTubeサイトで全曲観ることができます。
オランダ放送フィルの公式HPでも追悼が出ています。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ドイツのベルリン・フィルハーモニー管弦楽団に度々客演したハイティンク。特にヘルベルト・フォン・カラヤンが亡くなってからの1988年以降のベルリンフィルを下支えしました。
ベルリンフィルの公式HPでも追悼が出ています。
ウィーン ・フィルハーモニー管弦楽団
オーストリアのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とも長く深い関係を築いたハイティンク。1972年から100回以上も指揮したそうです。特に最晩年はザルツブルク音楽祭、ルツェルン音楽祭と最後のコンサートでも共演していましたね。
公式HPでの発表はありませんが、ウィーンフィルの公式Twitter で追悼が出ています。
バイエルン放送交響楽団
ドイツのバイエルン放送交響楽団にもよく客演しました。
最近は自主レーベルBR-Klassik からのライヴ録音が多かったですが、特に2011年12月にマリス・ヤンソンスの代役として指揮したマーラーの交響曲第9番は私の中で何回も聴いている愛聴盤です。
こちらも公式HP での発表はまだありませんでしたが、公式Twitter でツイートしています。
シュターツカペレ・ドレスデン
短期でしたが2002年から2004年にハイティンクが首席指揮者を務めたドイツの歌劇場シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)。次期音楽監督のファビオ・ルイージを巡ってケンカ別れになってそれ以降は客演をしていないそうですが、SKDの公式HP (https://www.staatskapelle-dresden.de/)ではハイティンクが追悼されています。
また、詳細な追悼文も出ています。
ロンドン ・フィルハーモニー管弦楽団
続いてはイギリスに移ります。
1967年から1979年にハイティンクが首席指揮者を務めたロンドン・フィルハーモニー管弦楽団。コンセルトヘボウ管との兼任となりましたが、ロンドンフィルのレベルを上げてレコーディングも多くおこない、このオーケストラのプレゼンスを向上させました。
ハイティンクの功績を讃えて、ロンドンフィルの公式HP で追悼が出ています。
ロンドン交響楽団
また、こちらも度々客演したロンドン交響楽団。近年の演奏は自主レーベルのLSO Live でリリースされていますが、ハイティンクの円熟した音楽が味わい深かったです。
シカゴ交響楽団
そしてアメリカに移ります。
2006年からハイティンクが首席指揮者を務めたシカゴ交響楽団。ダニエル・バレンボイム時代の後半から停滞気味だったこの名門オーケストラを、支えました。特にシカゴ響久しぶりのグラミー賞受賞となったショスタコーヴィチの交響曲第4番(2008年、FC2ブログ記事)や、ブルックナーの交響曲第7番(2007年)、マーラーの交響曲第6番「悲劇的」(2007年)など記憶に残る演奏でしたね。
シカゴ響もハイティンク追悼文を出しています。
ボストン交響楽団
そして1995年から首席客演指揮者、2004年から名誉指揮者に就任したボストン交響楽団。
私もボストン出張に行くときはシンフォニー・ホールに必ず行くのですが、名誉指揮者ハイティンクに敬意を表していることが伝わってきます。
ボストン響でも追悼が出ています。
音楽誌でも
著名な音楽誌でもハイティンクへの追悼文が公開されています。
ガーディアン誌
グラモフォン誌
レコードショップでも
タワーレコード
レコードショップのタワーレコードでも早くも追悼が出ていて、ハイティンクのオハコだったブルックナーの交響曲第7番の歴代の録音が紹介されています。
これからも聴き続けたい指揮者
世界から愛された指揮者、ベルナルト・ハイティンク。私もこれまでハイティンクの演奏をかなりの数聴いてきた自負はありますが、作品に忠実で実直なハイティンクのアプローチは、聴く者の心に響きます。
指揮者ベルナルト・ハイティンクの演奏はこれからも聴き続けたいです。
ご冥福をお祈りします。合掌。
NHK のプレミアムシアターで追悼番組
※2021/10/30 更新
NHK BSプレミアムで毎週日曜日の深夜からクラシック音楽のコンサートやオペラの演奏会を放送しているプレミアムシアター。
11月14日深夜の放送では、ベルナルト・ハイティンク追悼番組ということで、2019年ザルツブルク音楽祭の演奏会が放送されます。
前述で紹介してこちらに記事にも書いている、ベルナルト・ハイティンク指揮ウィーンフィルのザルツブルク音楽を2019での演奏会で、当時70歳のピアニスト、エマニュエル・アックスが独奏を務めたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、そして後半がブルックナーの交響曲第7番でした。皆様もどうぞご堪能ください。
コメント数:5
記事で紹介いただいた、オランダ放送フィルとのブルックナー7番を視聴しました。どこまでも切なく美しい演奏でした。随所で活躍するワグナーチューバに気を取られているうちに、2楽章のコーダで不覚にも泣けてきました。ハイティンクの指揮は、打点や指示や目配りが的確だと思いました。本当に遅まきながらですが、他の演奏も聴いてみようと思います。
XIZEさま
コメントありがとうございます。早速オランダ放送フィルの演奏会を視聴されたのですね。
ハイティンクの特徴はよく「中庸」とか「誠実」とか「作品を主役にする」と言われますが、各楽器を響かせるバランス感覚に長けていると私は思います。
華々しさや強烈な個性は無いですが安心して聴ける指揮者と言えます。
キャリアも長いですしレパートリーも幅広いのでレコーディングが膨大にあって、私もとても全ては聴けていませんが、このサイトでも聴いた中でのオススメを紹介していければと思います。
若い頃聴いた、春の祭典に感銘を受けました。何と自然な演奏だった事を記憶しています。最近の指揮者は、身ぶりばかり大きくだらしない服装で、聴くに耐えません。
ヨッチャンさま
コメントありがとうございます。若い頃に春の祭典を聴かれたのですね。
私もハイティンクのベルリンフィルとの春の祭典の録音を紹介しようと思って下書きまでは書いたのですが、まだ聴き込みが足りなくてなかなか筆が進まずにおります。
1970年代にアムステルダムコンセルトヘボウで聴いたのが私の初めての外国のオーケストラ。そして引退前に京都で聴いたブルックナー7が最後で計3回 その前はブラームスの一番だった。終わった後に
良い音楽を腹一杯聴いたと言う感じがした。先入観で評論家のイマイチ評価は感じなかった。京都公演で自動車に乗車するハイティンクを見て 最後なんだろうなぁと思いながら地下鉄に乗車しました。