ハイティンク&シカゴのブルックナー交響曲第7番の3つのポイント

ブルックナー交響曲第7番 ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団(2007年)
ブルックナー交響曲第7番 ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団(2007年)
  • ベルナルト・ハイティンクとシカゴ響の2007年ライヴ
  • さらにゆっくりとなったブルックナー
  • シカゴ響の明朗な美しさ

ベルナルト・ハイティンクは大変レパートリーが広い指揮者でしたが、キャリアの初期から晩年まで一貫して重要な作曲家だったのはアントン・ブルックナーでしょう。1963年から1972年にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮して交響曲全集を完成させていますし、その後もコンセルトヘボウ管だけではなくウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、バイエルン放送交響楽団、シュターツカペレ・ドレスデン、シカゴ交響楽団など、欧米の名門オーケストラを指揮してブルックナーの交響曲を録音しています。

ハイティンク最後のザルツブルクとなった、ザルツブルク音楽祭2019でも、ウィーンフィルを指揮してブルックナーの交響曲第7番を演奏し、悠久の流れを感じさせる奥深い演奏をおこなっています。紹介記事はこちらです。

シカゴ交響楽団と言えばアメリカを代表するオーケストラの一つですが、ブルックナーについても名演をおこなってきました。音楽監督だったサー・ゲオルグ・ショルティとの交響曲全集や、首席客演指揮者だったカルロ・マリア・ジュリーニとの後期交響曲の録音もありました。そしてショルティの次の音楽監督だったダニエル・バレンボイムもブルックナーの交響曲の演奏をおこなっています。

シカゴ響の持ち味であるパワフルな金管や、美しい弦楽器、そして明るい音色がブルックナーの交響曲に彩りを添えます。

シカゴ響の試練の時期に首席指揮者を務めたハイティンク

2000年代中盤はシカゴ交響楽団にとって試練の時期でした。音楽監督のダニエル・バレンボイムに対して任期後半からマンネリ化して不人気だったこともありシカゴ響は定期会員が減少して赤字経営に陥ってしまいます。2006年でバレンボイムの音楽監督は終了したのですが、後任の音楽監督は決まりませんでした。そのとき、シカゴ響は首席客演指揮者だったピエール・ブーレーズが名誉指揮者になり、ベルナルト・ハイティンクが首席指揮者を務めることで状況を打開しようとしました。

シカゴ響の自主レーベルCSO Resoundも同時期に

近年ではオーケストラによる自主レコーディング・レーベルの設立が相次ぎましたが、シカゴ響も2007年4月から自主レーベルCSO Resoundを設立し、シカゴ響のライヴ録音をリリースしています。ハイティンクも首席指揮者に就いてからマーラーの交響曲第3番(2006年)、ブルックナーの交響曲第7番(2007年)、マーラーの交響曲第6番(2007年)、ショスタコーヴィチの交響曲第4番(2008年)などのライヴ録音がCSO Resoundからリリースされています。特にショスタコーヴィチの交響曲第4番は米国グラミー賞を受賞する快挙となり、シカゴ響の面目躍如に貢献しています。

ハイティンクはブルックナーの交響曲第7番については、ノーヴァク版を多用しました。ブルックナーの交響曲全集のときの1966年の第7番の録音ではハース版を使っていましたが、それ以降は第7番はノーヴァク版を使っています。この2007年のシカゴ響とのライヴ録音でもノーヴァク版を使用しています。

キャリアとともに肥大化する演奏時間

ハイティンクのブルックナーの交響曲の演奏はキャリアを積んで肥大化していったことが知られています。この交響曲第7番についても何回か録音をおこなっていますが、演奏時間は1966年→1978年→2007年の順で以下のとおりです。

  • 第1楽章: 18:08 → 20:49 → 21:33
  • 第2楽章: 20:58 → 22:21 → 22:26
  • 第3楽章: 9:18 → 9:50 → 10:30
  • 第4楽章: 11:45 → 12:04 → 13:01

1978年のコンセルトヘボウ管との録音は1つ前の記事で紹介していますが、ゆったりとしたテンポながら音楽は遅滞することなく進んで行ったのですが、この2007年のシカゴ響との録音では、さらにゆっくりになっています。

ただ、この録音はハイティンクのこれまでのコンセルトヘボウ管との録音とは一味違う出来になっています。コンセルトヘボウ管はまろやかなサウンド、ふくよかな木管、ツヤのある角ばらない音色の金管などが特徴ですが、シカゴ響と言えばヴィルトゥオーソ・オーケストラで、金管もパワフルで、弦が官能的な美しさが特徴。そういう意味での聴き比べでも色々な発見のある録音です。

第1楽章は冒頭でハッとする弦の明るさ

第1楽章の冒頭から「おっ」と思いました。細かい静寂なトレモロの上で、チェロが良い響きで第1主題を奏でます。そしてそれに続くヴァイオリンなどの高音域の弦の響きが本当に美しいこと。シカゴ響の官能的な美しさは2000年代でも健在ですね。ちょっと音楽の流れはゆっくりとしすぎている感じがしますが、シカゴ響の豊かな響きのおかげで音楽はギリギリのところで遅滞せずに済んでいます。

第2楽章は中盤とクライマックスに注目

第2楽章では中盤の弦の美しさが特に素晴らしいです。そしてクライマックスでは金管も弾けるように巨大な伽藍堂を生み出すのですが、ハイティンクのバランス感覚が冴えてパワーが出すぎないように絶妙にコントロールされています。

そしてこの楽章は最後まで耳を傾けていたいです。長い通奏低音が徐々に徐々に、消えていくのです。

第3楽章

第3楽章はキビキビとして明るい音色がシカゴ響らしいです。テンポはゆっくりとしているのですが、不思議と躍動感を感じる演奏です。

第4楽章

そして最後の第4楽章は冒頭から弦の官能的な美しさが素晴らしい。ここでもハイティンクのバランス感覚が健在ですね。クライマックスではパワフルな金管で、ここでも巨大な伽藍堂を感じさせてくれます。

シカゴ響の試練の時期を感じさせないような、首席指揮者のベルナルト・ハイティンクによる明朗なブルックナー。ゆったりとした演奏ながら不思議と躍動感を感じる演奏です。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:ベルナルト・ハイティンク
シカゴ交響楽団
録音:2007年5月10, 11, 12, 15日, シカゴ・オーケストラ・ホール(ライヴ)

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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