スコアに忠実ながら真髄を浮き彫りに ベーム/ウィーンフィルのブルックナー交響曲第8番(1976年)

ブルックナー交響曲第8番 カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1976年)

このアルバムの3つのポイント

ブルックナー交響曲第8番 カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1976年)
ブルックナー交響曲第8番 カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1976年)
  • カール・ベームとウィーンフィルのブルックナー
  • スコアに忠実ながらブルックナーの真髄を浮き彫りに
  • 冒頭の不気味さ

指揮者カール・ベームは20世紀を代表する指揮者の一人で、楽譜に厳格で実直な演奏を持ち味としていました。日本でも1975年の来日公演で空前のベーム・ブームが巻き起こりました。

ベームは特にドイツ=オーストリア音楽を得意としていて、モーツァルトやシューベルトを指揮すると唯一無二だと思います。ブルックナーについても、録音自体はそれほど多くないのですが、まだ人気が出る前の時代から演奏会でブルックナーを多く取り上げていたそうです。

そんなベームのブルックナー録音で、代表的なのは1973年の交響曲第4番「ロマンティック」。ウィーンフィルの美音を活かして牧歌的なこの作品の理想的な演奏をおこないました。

そして今回紹介するのは、交響曲第8番。1976年2月ウィーンフィルとのムジークフェラインザールでのセッション録音です。

こちらの記事にまとめていますが、ブルックナーの作品は使用する版が一つのポイントです。何度も改訂したのでどの稿を使うかという問題もありますし、誰が校訂した版を使うかという問題もあります。

この録音で、ベーム/ウィーンフィルが使ったのは第2稿ノーヴァク校訂版。よく使用される版です。

演奏時間は第1楽章が14分56秒、第2楽章が14分31秒、第3楽章が27分53秒、第4楽章が23分00秒。トータルで約80分です。

同じ第2槁ノーヴァク版の中では、オイゲン・ヨッフム/ベルリンフィル(1964年)が74分、ゲオルグ・ショルティ/ウィーンフィル(1966年)が75分で速めの演奏、マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響(2017年)が80分が中くらい、カルロ・マリア・ジュリーニ/ウィーンフィル(1984年)が87分で遅い演奏でしたので、ベーム/ウィーンフィル盤も標準的な演奏時間です。

私は最近、ブルックナーの交響曲を聴くときは演奏された版を見て、IMSLPというパブリックドメインのWebサイトでスコアを見ながら聴くようにしています。第1槁とか第2槁とか、ハース版とかノーヴァク版とか、解説書で違いを読むよりも、スコアを見たほうが私にとっては分かりやすいからです。

例えば、ブルックナーの交響曲第8番の第2槁(1890年版)のノーヴァク校訂版はこちらにあります。

今回もベーム盤を聴きながらスコアを追ってみたのですが、驚きました。

驚いてしまうほどスコアに忠実に従っているのです。ベームはスコアに厳格で、ウィーンフィルの団員からは「番人」として見なされていました。

例えば、第1楽章の冒頭。アレグロ・モデラートの指示があり、pp (ピアニッシモ)でヴァイオリン1とヴァイオリン2がトレモロでファの音を刻み、ホルン1と2がド、ホルン3と4がソの通奏低音をつなげます。かすかに聞こえるような静音の中、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが不気味な旋律を奏でます。そしてクラリネットがラ→ミと音を飛躍し、不気味さを煽ります。そしてまたヴィオラ、チェロ、コントラバスが不気味な旋律を続けていくのですが、これだけでこんなに怖さを感じたのはベーム盤が初めてです。

3年前の「ロマンティック」のときはまろやかな音色で魅了したベームとウィーンフィルですが、この作品ではオペラを演奏するかのようなドラマ性があります。

中庸なベームなので、演奏にのめり込むことはなく、淡々とはしていますが、スコアを見ながら聴くと細部までこだわっていることがよく分かります。

第2楽章も緊張感がありますし、第3楽章のアダージョでは気持ちよく、ウィーンフィルの持ち味の美しさが出ています。

第4楽章もFeierlich, nicht schnell (荘厳に、速くなく)の指示通り、ゆったりとしたテンポで弦が前打音付きの4分音符を奏でますが、p (ピアノ、弱く)の指示があるのでそっと始まりクレッシェンドしていきます。ff (フォルテシモ)の金管はそこまでパワフルさはありませんが、全体が見事に調和しています。

このベームの録音は何度も再リリースされていますが、私は2007年にリリースされたユニバーサル・クラシックスのThe Best 1000 (UCCG-5109)のCDを持っています。当時は消費税が5%でしたので、税込1,050円でした。

最近の再リリースでは、2016年のSACD(SHM仕様)で4,715円、2018年のSHM-CDで1,870円、2019年のタワーレコード限定のSACDハイブリッドで5,258円と、高音質になったおかげで高くなりました。ちなみに2021年8月にSHM-CDで再リリースされますが、そちらは1,650円です。

現在の演奏家のニューリリースのCDのほうが安いってどうなんだろうと思いますよね。CDを買っても、実際に聴いてみて良いかどうかは「賭け」みたいなものです。4千円とか5千円とか出して「イマイチだな」と思ったら損失も大きいですよ。千円ぐらいでお試し感覚で買えるCDのほうが初心者の方にとっても敷居が下がると思うのですが、最近のレコード業界もカジュアルユーザーはストリーミングで、通の方には高価格・高音質のCDで勝負するという方法なんでしょうか。

レビューを見ると、タワレコ限定のSACDハイブリッドは音質もかなり良いそうです。私は1,050円で買った普通のCDでも充分ですが。。

カール・ベームがウィーンフィルと遺したブルックナーの交響曲第8番。楽譜をに忠実ながらも、ブルックナーの真髄を浮き彫りにした名演奏でしょう。

パワフルな演奏が好きな方には不向きなので、オススメ度を4にしようかとも思ったのですが、スコアを見ながら細部まで聴いてみたら色々な発見ができたので、オススメ度5で紹介します。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:カール・ベーム
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1976年2月2日-5日 , ウィーン楽友協会・大ホール

ドイツ・グラモフォンの商品ページで試聴可能。

特に無し。

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