このアルバムの3つのポイント
- バーンスタインがコンセルトヘボウ管に客演したライヴ録音
- 濃厚なドラマ、溢れるヒューマニティ
- 日本のレコード・アカデミー賞を受賞
フリーランスとして客演指揮していたバーンスタイン
20世紀を代表する指揮者の一人、レナード・バーンスタインは、米国出身の指揮者として初めて1957年から1969年までニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を務めました。
1947年から着任していたイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の桂冠指揮者や、晩年の1987年からのロンドン交響楽団の総裁という例外はありましたが、ニューヨークフィルを退任後は特定の常任指揮者などのポジションに就かずに各国のオーケストラを客演しています。作曲家でもあったバーンスタインが作曲の時間を確保するためだったと言われています。
ベートーヴェンに注力した70年代後半
1970年代後半はヨーロッパでのオーケストラや歌劇場、特にオーストリア・ウィーンでの活躍が目立ちます。1978年1月にはウィーン国立歌劇場でベートーヴェンの歌劇『フィデリオ』を指揮していますし、翌1979年9月にには第九をライヴ録音しています。このときにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの交響曲全集も進めており、バーンスタインがベートーヴェンに注力していた時期に当たります。
今回紹介するベートーヴェンの『ミサ・ソレムニス ニ長調 Op.123』のレコーディングは、バーンスタインが1978年3月にオランダの名門オーケストラ、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現在はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団という名称)に客演したときのライヴ録音で、日本のレコード・アカデミー賞を受賞しています。
ほとばしる情熱と濃厚なドラマ
ミサ・ソレムニスはバーンスタインにとって1960年にニューヨークフィルと録音して以来のレコーディングになりました。
オーケストラがウィーンフィルではなく、コンセルトヘボウ管というのも感慨深いです。ベルナルト・ハイティンクが首席指揮者を務めていて、オランダならではの渋いサウンドが残っていた時代です。ウィーンフィルとだったらもっと明るい音色になっていたでしょう。リッカルド・シャイー時代にきらびやかなサウンドに変わってくるコンセルトヘボウ管ですが、例えばこのグロリアでの演奏を聴いてみてください。洗練されていなくて野暮ったさもあるような響きで、大地からこみ上げるような力強さがあります。
くすむような色のコンセルトヘボウ・サウンドに、バーンスタインの全身全霊の情熱とロマン派を思わせる濃厚な音楽作りが合わさります。ヒューマニティ溢れるというか、人種も国境も関係なく、ミサ・ソレムニスを通じて一つになる人間の力強さすら感じてしまいます。
ベネディクトゥスのヴァイオリン独奏はヘルマン・クレバース。この上ない美しさで、まるでセピア色のオーケストラにハッとするような彩りを添えています。
最後まで聴き終えると明日も頑張ろう、と、元気をもらえる演奏です。
音質は△
私は2005年にリリースされたユニバーサル・ミュージックのパノラマ・シリーズのCDで聴いています。第九とミサ・ソレムニスの2枚組の国内盤なのですが、惜しいことに音質はお世辞にも良くないです。
音が遠くに聴こえると思い、音量が小さいのかと思ってスピーカーの音を上げたのですが、迫力感が欠けた感じは変わりません。こもった音ですし、せっかくの演奏がやや興醒めで聴こえてきます。最近リリースされたものでは2018年にリマスターされたもの、SACDやUHQCD x MQA-CDのディスクも出ていますので、そちらのほうがより高音質かもしれません。
まとめ
バーンスタインがコンセルトヘボウ管を客演してライヴ録音したミサ・ソレムニス。バーンスタインらしい情熱と濃厚なテイストが味わえます。
オススメ度
ヴァイオリン独奏:ヘルマン・クレバース
ソプラノ:エッダ・モーザー
アルト:ハンナ・シュヴァルツ
テノール:ルネ・コロ
バス:クルト・モル
指揮:レナード・バーンスタイン
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ヒルフェルスム・オランダ放送合唱団(合唱指揮:マインダート・ベケル)
録音:1978年3月, コンセルトヘボウ(ライヴ)
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
1979年度の日本のレコード・アカデミー賞の声楽曲部門を受賞。
1979年の米国グラミー賞「BEST CHORAL PERFORMANCE, CLASSICAL (OTHER THAN OPERA)」にノミネートされるも受賞ならず。
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