- ウィーンフィルとのライヴによるベートーヴェン交響曲全集
- 濃厚で荒れ狂うような演奏
- まるでショスタコーヴィチを聴いているような緩急の付け方
レナード・バーンスタインとウィーンフィルによる交響曲全集
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団はベートーヴェンの交響曲の録音が非常に多いオーケストラだが、1970年代はカール・ベーム(1970〜1972年)、レナード・バーンスタイン(1977〜1979年)、カルロス・クライバー(第5番と7番のみ。1974〜1976年)などがある。
レナード・バーンスタインは1970年代後半からウィーンフィルと蜜月の関係を築き、ベートーヴェン、ブラームス、そしてモーツァルトの録音が多い。ベートーヴェンについては、交響曲全集を完成させた他、同時期に1978年1月のウィーン・シュターツ・オーパー(ウィーン国立歌劇場)での「フィデリオ」の公演でも、ルネ・コロがフロレスタン役でテノールを務めていた。第9もミサ・ソレムニスも同じで、よっぽどバーンスタインお気に入りだったのだろう。
なお、第1番から第8番はウィーン楽友協会(ムジークフェラインザール)・大ホールでのライヴ録音だが、この第九だけウィーン国立歌劇場(ウィーン・シュターツ・オーパー)でのライヴ録音である。
なお、この交響曲全集は、1980年度の日本のレコード大賞を受賞しているもので、プロの音楽評論家で第九のベスト盤でこのバーンスタインとウィーンフィルの録音を挙げる人もいる。
おどおどろしい第九
第1楽章から濃厚でバーンスタインらしい。冒頭から何かが突っかかっているかのようで、スムーズには進まない。音質はそこまで良くないので、音が曇って聴こえるのがやや残念。再現部における8分36秒あたりから始まるティンパニーの連打では、ウィーンフィルなのに荒れ狂っている。そしてふっと晴れる。緩急の付け方がまるでショスタコーヴィチを聴いてるようだ。また、第1楽章の最後では、激しく叫ぶように音が強くなっていくのだが、最後の最後で喉にものが引っかかるかのように、突然進みが遅くなる。
第2楽章は軽やかだがキビギビとしていて、第3楽章は穏やかでウィーンフィルの真骨頂だろう。
第4楽章はおどおどろしい。ただ、冒頭から激しいのだがややゆっくりで勢いが無かったりして少しちぐはぐな印象を受ける。優雅なテイストの持ち味のウィーンフィルだと分が悪いのかもしれない。機動力に長けたベルリンフィルやニューヨークフィルあたりと演奏したほうが相性が良かった気がする。
それでいて、テノール独唱が入る前のAllegro assaiでは、テンポがややゆっくりとなって特に味付けなく演奏される。「ふむふむ」と聴いていたら「あれ?」と思うようなフレーズがところどころあり、バーンスタインの解釈には好みが分かれるだろう。
まとめ
ウィーンフィルっぽくない荒々しさを濃厚なバーンスタインのタクトで楽しめる。ただ、緩急の付け方が極端で、好き嫌いは分かれる演奏だろう。
オススメ度
交響曲第9番
ソプラノ:ギネス・ジョーンズ
アルト:ハンナ・シュヴァルツ
テノール:ルネ・コロ
バス:クルト・モル
指揮:レナード・バーンスタイン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱連盟
録音:1979年9月2-4日, ウィーン国立歌劇場(ライヴ)
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受賞
- 1980年度の日本のレコード・アカデミー賞で交響曲部門と大賞をダブル受賞。
- 1980年の米国グラミー賞BEST CLASSICAL ORCHESTRAL RECORDINGにノミネートのみで受賞はならず。
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