このアルバムの3つのポイント

マーラー交響曲第9番 ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団(1967年)
マーラー交響曲第9番 ラファエル・クーベリック/バイエルン放送交響楽団(1967年)
  • クーベリックとバイエルン放送響のマーラー交響曲全集の1枚
  • じわじわ来る侘び寂び
  • 対向配置によるヴァイオリン

この1ヶ月半ぐらいは新たにCDを買うのを意識的にストップして、以前買ってあまり聴かずにいたCD BOXをじっくり聴くようにしているのですが、改めて良い演奏だなぁと思うものも結構あります。

今回紹介するのは、チェコ出身の名指揮者、ラファエル・クーベリックのマーラー。1960年代にレナード・バーンスタインゲオルグ・ショルティなどの活躍もありマーラーのブームが来たのですが、クーベリックも1967年から71年にかけて首席指揮者を務めていたバイエルン放送交響楽団と交響曲全集を完成させています。レコード販売元によると、この全集がドイツのオーケストラで最初のマーラー・チクルスだったそうです。

以前クーベリックとバイエルン放送響のマーラーを一通り聴いた際は、特に印象に残らなくて記事に書きづらくて紹介しないでいたのですが、改めて第9番を繰り返し聴いているうちにじわじわ来たので、ようやく書けるほど聴き込めました。

1960年代のマーラーの第9番の録音だと、1967年4月〜5月のショルティとロンドン交響楽団のボルテージの高い録音こちらの記事で紹介した1964年1月のサー・ジョン・バルビローリベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などもあり、まだまだ現在ほどマーラーが確立していない状態で各々の指揮者が熟慮を重ねた様子が伺えます。

このクーベリックとバイエルン放送響の第9番の録音でまず驚いたのは、第2ヴァイオリン。第1楽章の冒頭はヴァイオリンは第1ヴァイオリンは登場せず第2ヴァイオリンのみなのですが、チェロ、ハープ、ホルン、ヴィオラの後に登場する第2ヴァイオリンが、右のスピーカーからのみ聴こえます。CDの冊子には書いていませんが、クーベリックは指揮者に対して第2ヴァイオリンが右奥に来る「対向配置(両翼配置)」のフォーメーションを取っているようです。

そういえば、以前紹介した1965年4月の大阪フェシティバル・ホールでの来日公演でも対向配置でしたね。マーラーの第9番の対向配置と言えば、1993年12月のサイモン・ラトルとウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のライヴ録音でもそうでしたが、配置が異なるだけで普段聴いている曲でも違う角度から聴こえる不思議な気持ちになります。

第1楽章で感じるのはヴァイオリンを始めとする弦の美しさ。バイエルン放送響のこの曲は2011年のベルナルト・ハイティンクとのライヴ録音でも2016年のマリス・ヤンソンスとのライヴ録音でも国際的な音楽賞を受賞していますが、そのときも透明感ある美しさが際立っていました。1967年のこのクーベリックとの録音でもオーケストラの弦の美しさは今に通じるものがあります。

第2楽章も透き通った響きで整った線を描いていきます。少し線がか細いところもありますが、バイエルン放送響らしいとも言えます。注目すべきは12分50秒過ぎ。旋律が断片的に登場するこの不思議な音楽で、クーベリックとバイエルン放送響はテンポを少し落として不気味な響きを生み出しています。手探りでどちらが出口か分からないまま進むような不安感があります。

続く第3楽章のロンド・ブルレスケは透き通った響きで室内楽のような軽やかさがあります。そして第4楽章は冒頭の第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンだけの2小節で同じ音を奏でるのですが、対向配置なので左からも右からも同じように旋律が耳に届きます。たっぷりとメロディを伸ばしているのが何とも言えないほど心地良いです。この楽章は今も昔もバイエルン放送響は上手いですね。

クーベリックとバイエルン放送響によるマーラーの交響曲第9番。じわじわと来る味気があります。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:ラファエル・クーベリック
バイエルン放送交響楽団
録音:1967年2月, 3月, ヘラクレス・ザール

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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コメント数:1

  1. 対向配置が斬新で、セカンドバイオリンの活躍と重要さに改めて気づかされました。左耳のほうで鳴るコントラバスも含めて、新しい刺激で脳が活性化された気分です。演奏も自然で曲の良さが十分に引き出されていて素晴らしかったです。録音も時代を感じさせず、ヘッドホンで聴いていても疲れませんでした。全集なのでクーベリック × バイエルンのマーラーをもう少し聴いてみようと思いました。

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