このアルバムの3つのポイント
- マリス・ヤンソンスとバイエルン放送響による2016年のマーラー交響曲第9番のライヴ!
- 5年前の忘れ形見
- 来日公演もベスト・コンサートに選出!
マリス・ヤンソンスとバイエルン放送響の2016年来日公演では
マリス・ヤンソンスとバイエルン放送交響楽団は、2016年11月に来日公演をおこなった。そこで演奏されたリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」とグスタフ・マーラーの交響曲第9番のコンサートは、クラシック音楽専門誌「音楽の友」で2016年の読者が選ぶベスト・コンサートで1位を獲得しており、日本でも生でその素晴らしさに触れ合えた方も多いだろう。
バイエルン放送響のマーラー交響曲第9番と言えば…
マーラーの交響曲第9番は私も好きな作品なので、これまで古今東西の様々な演奏家の演奏・録音を聴いてきた。レナード・バーンスタインとベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の1979年の一期一会のライヴ録音のように没頭するような躍動感ある演奏もあるが、私はどちらかというとスケールもありつつ、第4楽章での天国的な美しさが引き出されている演奏が好みである。
その中でも先日の記事で紹介した2011年12月のベルナルト・ハイティンクとバイエルン放送響との録音と、1976年4月のカルロ・マリア・ジュリーニとシカゴ交響楽団の録音が良いと思ってよく聴いている。名曲だけに名演も多い交響曲ではあるが、ハイティンクの名演と同じバイエルン放送響で、しかも相性ぴったりの首席指揮者マリス・ヤンソンスとの録音が追加されるのは非常に嬉しい。
そもそも、2011年12月のハイティンクとバイエルン放送響のマーラー交響曲第9番のコンサートは、元々首席指揮者のヤンソンスが指揮台に立つ予定だったのだが、体調不良により、急遽ハイティンクに代役を頼むことになったようだ。5年前の忘れ形見を2016年10月、ヤンソンスとバイエルン放送響は果たすことになった。
SACDハイブリッドもあるが、通常のCDでも高音質
このヤンソンスとバイエルン放送響のレコーディングはBR Klassikレーベルからリリースされている。全4楽章のトータル演奏時間は80分45秒。以前のCDだったら2枚に分かれてしまい、交換するのが面倒だったのだが、今のCDには80分を超えても収録できるので1枚に収まっている。私は輸入盤の通常のCDで聴いているが、高音質で繊細な響きまでよく伝わってくる。日本国内盤ではSACDハイブリッドも出ているので、SACDで聴くともっと良いのだろう。
ヤンソンスの熟成された音楽で聴くマーラーの名曲
マリス・ヤンソンスがバイエルン放送交響楽団を指揮してマーラーを演奏するなら絶対素晴らしい演奏になっているだろうと思いつつ、この録音を実際に聴いてみると期待以上の素晴らしさ。
第1楽章はゆったりとしていながらも遅さは感じない絶妙なテンポ設定で、穏やかに始まったのだが気付くと巨大な音の渦が迫ってくる。ゾクゾクするような劇的な表現だ。第2楽章はバイエルン放送響の音色が実に生き生きとしている。ヤンソンスと一緒に音楽を作ることが本当に心地よさそうだ。さすがだと思うのは、ヤンソンスのバランス加減。決して金管楽器がうるさすぎることはなく、強めの音でも絶妙なバランスで抑えられている。第3楽章はもっと活力がみなぎっている。演奏時に73歳だったヤンソンス(1943年1月生まれ)の年齢をみじんも感じさせないフレッシュさだ。よく指揮者は晩年になるとテンポが遅くなりすぎることがあるのだが、ヤンソンスはそういうことが無くむしろ若くなっている感じすらする。
そして待ちに待った第4楽章はやはり最高。ゆったりとしたテンポで、バイエルン放送響の美しく透き通った響きが存分に引き出されている。まるで天国にいるような、極楽の響きだ。そして最後には音が少しずつ、少しずつ、消えていき、余韻だけが残る。
まとめ
マリス・ヤンソンスとバイエルン放送響が5年前の忘れ形見を果たした、マーラー交響曲第9番の名演。この響き。この美しさ。やっぱり最高だ。
オススメ度
指揮:マリス・ヤンソンス
バイエルン放送交響楽団
録音:2016年10月20-21日, フィルハーモニー・ガスタイク(ライヴ)
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
2017年ルクセンブルクのPizzicat誌のSupersonic賞を受賞。
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