米グラミー賞で2冠に輝く サー・ゲオルグ・ショルティとシカゴ響の唯一のブラームス交響曲全集(1978-79年)

ブラームス交響曲全集 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978-1979年)

このアルバムの3つのポイント

ブラームス交響曲全集 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978-1979年)
ブラームス交響曲全集 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978-1979年)
  • ゲオルグ・ショルティ唯一のブラームス交響曲全集
  • シカゴ響を鳴らしきった贅肉の無い引き締まった演奏
  • グラミー賞で2冠受賞

サー・ゲオルグ・ショルティは意外にもブラームスの交響曲全集は一度しか録音していない。それが1978年5月と1979年1月に録音されたシカゴ交響楽団との交響曲全集である。

1972年のベートーヴェンの交響曲全集のときのように、楽譜に忠実な演奏を目指していて、通常は省略される交響曲第1番第1楽章のリピートもきっちり守っている。

この全集は1979年の米国グラミー賞「BEST CLASSICAL ALBUM」と「BEST CLASSICAL ORCHESTRAL RECORDING」の二冠を受賞した名盤である。また、同時にブラームスのドイツ・レクイエムの録音も「BEST CHORAL PERFORMANCE, CLASSICAL (OTHER THAN OPERA)」を受賞していて、それを合わせると三冠である。すごい。

ただ、演奏があまりにも引き締まっているので、表情は厳しい。好き嫌いは分かれるかもしれない。それでは交響曲を順に聴いてみよう。

ブラームス交響曲第1番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1979年)
ブラームス交響曲第1番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1979年)

第1楽章の立ち上がりから特徴的だ。冒頭の和音を溜めずに一瞬で鳴らしている。鍛え上げたシカゴ響の機能美が存分に発揮されている。楽譜に忠実な、オーソドックスな解釈をしており、省略されることも多い第1楽章のリピートもしっかり守っている。

第4楽章はこのオケの総合力とアンサンブルを活かした良い演奏で、オペラのような躍動感ある名演である。

ブラームス交響曲第2番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1979年)
ブラームス交響曲第2番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1979年)

ブラームスの「田園」とも言われるこの交響曲第2番であるが、ショルティとシカゴ響のこの録音では、決して情に流されることなく、キリッと引き締まった演奏を聴かせる。

第1楽章はヴァイオリンの高音部の音のレンジを絞り、メロディラインがはっきりと聴こえるように奏でている。弦楽器が特に美しいが、言葉で表現しづらいがちょっとした安らぎが欲しいところ。

第4楽章がこの時期のショルティとシカゴ響らしく、速めのテンポでながら、引き締まった音でピタリと揃ったアンサンブルを聴かせる。それにしてもヴァイオリンの音のレンジを絞って、かなり鋭角的に演奏している。

速いフレーズでは息もつかずに一気に弾き走り、フレーズの終わりにぐっとテンポを落とす。オペラらしい弾き方だ。こういう緊張感ある演奏がこの時期のショルティの特徴である。

ブラームス交響曲第3番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978年)
ブラームス交響曲第3番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978年)

ブラームスで最も優雅な交響曲第3番だが、この全集の中で私は最も良いと思う。特に第4楽章の吹き飛ばすようなすごさは、他の演奏では聴くことができない。

ショルティとシカゴ響は第1楽章から、絞った音色でメロディラインをはっきりと聴かせる。この曲は同じようなフレーズが続くため、流れが淀む危険もあるが、ショルティの指揮は見通しが良く、聴きやすい。

有名な第3楽章のけだるくメランコリックな曲は、「さよならをもう一度」というフランス映画でも使われた他、BGMとしてよく使用されている曲であるが、ここではシカゴ響の弦楽器のうまさが光る。

第4楽章では嵐のように邪念を吹き飛ばす爽快な曲だが、ここでシカゴ響とショルティの引き締まった演奏がぴたりとハマる。密度の濃いアンサンブルで素早く、この楽章の特徴を良くとらえている。第4楽章だけでも聴いておきたい、名演である。

ブラームス交響曲第4番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978年)
ブラームス交響曲第4番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1978年)

ここで聴く第4番も、わびさびという要素はなく、あくまでも磨き上げた機能美で作品を表現した、というべきだろうか。第1楽章はテンポは少し速めで、ルバートを掛けたり溜めたりはしない。音を絞ってメロディラインを浮き上がらせ、弦楽器はこれでもかというぐらいに美しい。コントラバスなどの低音部の弦もよく響かせ、バランスが取れた心地よいハーモニーである。

第2楽章のアンダンテではゆったりとしたテンポで、シカゴ響の鍛え上げられた美音を堪能できる。ここで聴くヴァイオリンが本当に美しい。木管の安らぎの音色も心癒される。これが世界一とも言われたシカゴ響のハーモニーであろう。

第3楽章は速めのテンポで、ショルティらしくきびきびとした演奏。こういうノリの良い曲ではオペラで鍛えられたショルティの手腕が光る。

第4楽章ではこの時期のショルティらしく、引き締まった特徴がよく出ている。バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第10番のホ短調のフーガとよく似た旋律が出てくるところでは、弦楽器が密度の高いアンサンブルで素速く弾き走る。実にうまい。

こちらは全集に先立つ1977年5月の録音。4つの交響曲や2つの序曲を聴いた後にこの変奏曲を聴くと、ホッとする。牧歌的で穏やかで、ハイドンの主題がシカゴ響の明るい音色で美しく変化していく。

大学祝典序曲は1978年5月の録音。祝典的な明るい音色、大砲が打たれるようなスケールの大きさ。シカゴ響が得意とする音楽だ。

こちらも1978年5月の録音。音を絞ったような研ぎ澄まされた響きで輪郭を描いていく。「悲劇的」という標題があるが、音色は明朗でシカゴ響らしい。オペラを聴くかのようなドラマティックな表現が、さすがショルティだ。

ショルティのブラームスは、メロディラインをシャープにした引き締まった音色で、精度高く揃ったアンサンブルが特徴。贅肉のないブラームスで聴く者を圧倒させる演奏だろう。ドイツ本家の伝統的な演奏ではないかもしれないが、ショルティとシカゴ響のブラームスには機能美の素晴らしさがある。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1977年5月(ハイドン変奏曲), 1978年5月(第3番、第4番、序曲), 1979年1月(第1番、第2番), シカゴ・メディナ・テンプル

【タワレコ】ブラームス: 交響曲全集(4CD)

iTunesで試聴可能。

1979年米国グラミー賞「BEST CLASSICAL ALBUM」と「BEST CLASSICAL ORCHESTRAL RECORDING」、ドイツ・レクイエムが「BEST CHORAL PERFORMANCE, CLASSICAL (OTHER THAN OPERA)」を受賞。

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