このアルバムの3つのポイント
- 「究極のブルックナー」と評された録音
- シカゴ響の持ち味が全開
- 引き締まって曖昧さが全く無い毅然とした演奏
こちらはサー・ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団の1985年のブルックナーの交響曲第9番の録音のレビューです。1965年・1966年のウィーンフィルや1979年から1995年のシカゴ響との交響曲全集を含むレビューは以下の記事をご覧ください。
ゲオルグ・ショルティのブルックナー録音 (ウィーン/シカゴ)
「究極のブルックナー」
サー・ゲオルグ・ショルティは、シカゴ交響楽団と1979年からブルックナーの交響曲全集の録音を始め、第0番を1995年に録音して完成させた。足かけ16年と、ショルティにしては長い期間を掛けている。といっても、この間にマーラーの交響曲全集、ベートーヴェンの2回目の交響曲全集を始め、公演の傍ら膨大なレコーディングも行ってきているので、そのバイタリティには驚く。
交響曲第9番ニ短調の録音は発売当時、音楽評論家から「究極のブルックナー」と言われた録音。1997年にリリースされたショルティとシカゴ響のブルックナーの交響曲全集のCDはまだ在庫があるようだが、さすがに古い。もっと新しいCDはと言うと、第9番だけ分売されたものがあり、ショルティ没後10周年の2007年に20世紀の巨匠シリーズ「黄金時代のショルティ・シカゴ交響楽団」と、20周年の2017年に、それぞれデッカレーベルから型番UCCD-3736でリリースされていたのだが、限定生産だったため今や廃盤だ。CDだとこういう廃盤があるだが、ストリーミングで聴けるならその心配が無くて良い。
ちなみに私は2007年の「20世紀の巨匠シリーズ」で購入したCDを持っているのだが、たまにこの演奏を聴きたくなるときがあり、CDラックから掘り出してみては聴いている。
引き締まっていて、毅然とした演奏
ショルティはこの曲にしては速めのテンポを取り、オペラやレクイエムを指揮するときのようなぴりっとした緊張感が漂う。弦楽器も金管も情に流されないで、実に引き締まった演奏をしている。第1楽章はもう少しゆったりと取るスタイルが多いと思うが、ショルティとシカゴ響は猛然と突き進んでいく。金管がとてもパワフル。曖昧さが無く、毅然とした演奏で、まるで真冬に雪が激しく降る中を、前が見えないまま歩き続けているような気分になる。厳しい冬もこの曲を聴いていれば何とかなりそうな、力を与えてもらえる。
第2楽章では金管が元気が良すぎるところもあるが、いかにもシカゴ響らしい。シカゴのオーケストラ・ホールでの演奏なのだが、まるで大聖堂に響き渡るような荘厳さがある。それにしてもデッカが誇るレコーディング技術で、空気が揺れる感じまで伝わってくる。
第3楽章は一転して、美しさと慈愛
第3楽章はこれまでと一転して、穏やかで美しい。これもシカゴ響の持ち味なのだが、2楽章までと同じオーケストラが演奏しているのか、と驚いてしまうほど印象が違う。
この楽章は30分弱くらい掛かる長丁場で、演奏によっては間延びしてしまうものもある。このショルティとシカゴ響の演奏では26分55秒。テンポが速いと言うわけではなく、ちゃんと必要な間を持たせてのこの長さである。ショルティのメリハリの効いた指揮で、慈愛に満ちたこの楽章を最後まで飽きさせずに聴かせてくれる。
シカゴ響の弦は何とも美しい。第2主題の最後ではフォルティッシッシモで、吠えるように不協和音が演奏されるが、コーダに入るとまた優しいオブラートに包むような調べで、ディミヌエンドで少しずつ消えていく。最後の長い長い音符が終わるまで、聴き入ってしまう。
まとめ
ピリッとした緊迫感がある引き締まったブルックナー。寒さが厳しくなってきた季節に聴くと、あまりの毅然とした演奏に寒さを忘れさせてくれる。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1985年10月, シカゴ・オーケストラ・ホール
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【タワレコ】ブルックナー: 交響曲全集試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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