ショルティとシカゴ響の黄金時代の幕開け 最初の録音はマーラーの交響曲第5番(1970年)

マーラー交響曲第5番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1970年)

このアルバムの3つのポイント

マーラー交響曲第5番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1970年)
マーラー交響曲第5番 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1970年)
  • 後の黄金時代を予感させる、ショルティのシカゴ響音楽監督最初の録音
  • シカゴ響ならではのスケール満点で速めのテンポで引き締まった演奏
  • アダージェットで魅せる美しさ

ゲオルグ・ショルティがシカゴ交響楽団の音楽監督に就任したのは1969年のこと。この後、シカゴ響の第2次の黄金時代が到来するのだが、このコンビが最初に録音したのが1970年3月にシカゴのメディナ・テンプルで、選んだのはマーラーの交響曲第5番嬰ハ短調。

ショルティにしてみれば、これまでロンドン響やコンセルトヘボウ管と行っていたデッカレーベルでのマーラーの交響曲全集録音の一環の続きとしての録音だったのかもしれないが、シカゴ響との出来栄えに大満足したショルティは、その後、他のオーケストラと録音していた作品をシカゴ響と録り直して、シカゴ響だけで9つのマーラーの交響曲全集を完成させた。

ショルティとシカゴ響のデビュー盤というだけではなく、録音から50年近く経った今でもマーラー交響曲第5番の色褪せない名演として愛されているこのレコーディングは、度々再発売がされてきた。私は2007年の「20世紀の巨匠シリーズ」(UCCD-3742)のCDを持っているが、2018年にSACD(SHM-CD)での再発売もされているので、可能なら新しいリマスタリングを聴いたほうが良いだろう。

このマーラー交響曲第5番の録音はすごい。本当に1970年の録音なのかというぐらいに音質はクリアだ。第3楽章のクライマックスでは音が乱れるところもあるのだが、それを考慮しても十二分に良い。1980年頃からはデジタル録音が主流になるので、どのレコードレーベルでも音質はあまり気にならなくなるのだが、それ以前のADD(アナログのマスターテープからデジタルで編集・リマスタリング)の場合は、デッカレーベルかどうかで音質が全然違う。ゲオルグ・ショルティはデッカ専属(たまにRCAもあるが)だったので、デッカレーベルに膨大なレコーディングを遺しているが、音質の良さもあって、今でも現役で聴けるものばかりだ。

なぜマーラーの交響曲第5番をシカゴ響との最初のレコーディング曲にしたのか、この録音を耳にするとすぐに分かる。第1楽章の冒頭のトランペットのソロから、さすがというべき出来栄えである。金管に定評のあるシカゴ響だが、ここでのトランペットも堂々とした演奏。ソロの後にオケ全体でのトゥッティが入るが、このスケールもまた良い。R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう語った」の序奏のような壮大さがある。

第2楽章はとてつもない力でうごめく生命力を感じる。まるでストラヴィンスキーの「春の祭典」の「春のきざし」を聴いているかのような力強さと躍動感だ。演奏にキレがあり、音楽監督に就任して間もないオーケストラなのにこんなにも一糸乱れない演奏ができるのがとても驚き。

第3楽章はボルテージが高い演奏なので、音が割れるところも何箇所かあるのだが、ティンパニーがまるでハンマーを振り落とすように、ドカーンという迫力がある。野性的で荒々しい演奏が曲にマッチしている。

第4楽章アダージェットでは、一転して溶けるような美しさが素晴らしい。シカゴ響と言えばスーパーオーケストラでパワフルな金管や、力強い演奏が持ち味だが、もう一つ忘れてはいけないのが弦の美しさ。ショルティが音楽監督になったことで、研ぎ澄まされた美音を聴かせてくれる。これまでの荒々しさと対照的な乙女のような繊細さである。

第5楽章は色鮮やかで力強く締めくくる。セッション録音なので最後のトゥッティの後、シンとしてトラックが終わるのだが、これがライヴだったら「ブラボー」の大喝采だっただろう。それぐらい圧巻の演奏。

ゲオルグ・ショルティのマーラーの交響曲第5番は、1990年のウィーンでのシカゴ響とのライヴ録音もある。シカゴ響とのデビュー盤か、音楽監督退任1年前の20年後の再録か、どちらが良いかは分かれるところだが、正直、どちらも素晴らしいと言ってしまって良いと思う。演奏時間の比較は以下の表のとおり。

1970年1990年
第1楽章11:5712:51
第2楽章13:5814:47
第3楽章16:4217:15
第4楽章9:509:42
第5楽章13:4014:53
ショルティ/シカゴ響のマーラー交響曲第5番の録音の演奏時間比較

再録のほうが少しまろやかになっており、4楽章を除いてテンポも少しゆっくりになる。ただ、今回紹介している旧録のほうには、野性的な魅力や、演奏のボルテージの高さがあって、私は気に入っている。

ゲオルグ・ショルティが音楽監督になって最初の録音で、マーラーの難曲をこのテンポで弾きこなしてしまうシカゴ響の演奏力に脱帽。その後の黄金時代の幕開けを飾る演奏と言って良いだろう。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1970年3月, シカゴ・メディナ・テンプル

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Deccaのサイト及びiTunesで試聴可能。

特に無し。

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