カール・ベーム初来日公演 日生劇場こけら落としでのベートーヴェンの第九 ベルリン・ドイツ・オペラ管(1963年)

ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」 カール・ベーム/ベルリン・ドイツ・オペラ(1963年、日生劇場ライヴ)

このアルバムの3つのポイント

ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」 カール・ベーム/ベルリン・ドイツ・オペラ(1963年、日生劇場ライヴ)
ベートーヴェン交響曲第9番「合唱付き」 カール・ベーム/ベルリン・ドイツ・オペラ(1963年、日生劇場ライヴ)
  • カール・ベームの初来日公演。日生劇場こけら落としの演奏会での第九
  • 当時の大物歌手たちが勢揃い
  • スッキリとした美音だが、金管がイマイチ…

20世紀を代表する指揮者の一人、カール・ベーム。ベームの演奏と言えば、特にドイツ=オーストリアの作曲家の音楽で、「足しも引きもしない」新即物主義的な演奏が特徴だと思います。

自分の個性を押し付けず、あくまでも作品本来の姿を映し出す、そんな演奏がベームにはあります。

確かに1959年のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのブラームスの交響曲第1番の録音1961年のベートーヴェンの「英雄」の録音など、壮年期ではグイグイと推進力ある演奏もありましたが、1970年代以降は達観したと言うか、淡々としていて音楽の流れを作るというよりも、身を委ねるような演奏になってきた印象です。

そんなベームの印象が大きく変わったのが、1つ前の記事で紹介した、1963年7月23日のバイロイト音楽祭での第九。「これがベームなのか?」と何度もCDのトラックリストを確認してしまうほどでした。まるでフルトヴェングラーのように、ティンパニを炸裂させておどろおどろしい世界を生み出していました。

ベームは、同じ年の10月から11月に、初の日本公演に行き、ベルリン・ドイツ・オペラを引き連れて東京・日比谷の日生劇場のこけら落とし(開業演奏会)をおこなっています。

モーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』とベートーヴェンの歌劇『フィデリオ』が上演されましたが、そのレコーディングの発売元キングインターナショナルによるとフィガロが「燃焼度の高い一期一会の公演」、フィデリオが「日本オペラ上演史に残る名演」だったそうです。

ベームとベルリン・ドイツ・オペラ管は、その日本公演の中で11月7日に、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」も1度だけ演奏しました。

その音源がニッポン放送が所有しており、キングインターナショナルから2019年9月にリリースされていますが、今年(2021年)がベーム没後40周年のアニバーサリーなので、私は今更ですが購入してみました。

1963年の録音には、バイロイト盤と日生劇場盤の2種類のライヴ・レコーディングがあるわけですが、中身はかなり違います。

日生劇場での第九では、オペラ出演のために来日していたベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団、合唱団の他、ソプラノにエリザベート・グリュンマー、アルトにはクリスタ・ルートヴィヒ、テノールにはジェームス・キング、バスにはヴァルター・ベリーと当時の大物歌手たちが勢揃いしました。

バイロイト盤では第1楽章から緊張感がみなぎっていましたし、第2楽章でもティンパニが強烈でゾクゾクとしました。第4楽章では声楽にハッとさせるようなハリと力強さがありました。音質はモノラル録音で若干イマイチでしたが、それ以上に迫力がありました。

この日生劇場盤では、音質は圧倒的に良いのですが、スッキリとした響きで第1楽章が始まり、第2楽章も割と軽め。第3楽章はうっとりするほど美しいです。

第4楽章に入るとちょっとフニャッとした入り方をします。バイロイトでは強烈に叩きつけるような力強さがあったのですが、まるで違う始まり方をします。金管、これはトランペットでしょうか、第1楽章冒頭のPrestoで何箇所か裏返っているところもあります。さらにAllegro assaiで管弦楽だけで歓喜の歌の旋律が演奏されるところでも、金管が上滑りしています。ライヴ演奏なので仕方ないところがありますが、ベルリンフィルやウィーンフィル、バイロイト祝祭管に比べるとベルリン・ドイツ・オペラ管は、特に金管セクションがイマイチです。

声楽が加わると、当時の大物ソリストたちが圧倒的なパフォーマンスで魅了してくれます。ただ、せっかくの合唱やソロとのトゥッティで管弦楽が邪魔しちゃっているところがあり、そこもやはり金管。自信を持って炸裂するところが、音色が揺らいでしまっています。ここがベルリン・ドイツ・オペラ管の当時の限界のような気がします。

CDのレビューでは、ベームの第九の中でこの演奏が一番良いという意見もありましたが、私の中では衝撃的なら1963年のバイロイト盤のほうが良いと思いましたし、安定を求めるなら1970年のウィーンフィルとの全集盤のほうがオススメできます。

ただ、演奏後の当時の聴衆からの熱い拍手を聞くと、キズが気にならないぐらいに熱狂した演奏会だったようです。

カール・ベームの初来日で、日比谷の日生劇場の開業コンサートを飾った第九。オーケストラがイマイチなところはありますが、当時の日本の聴衆が圧倒された演奏会がこうして再現できるのは嬉しいことですね。

オススメ度

評価 :3/5。

指揮:カール・ベーム
ソプラノ:エリザベート・グリュンマー
アルト:クリスタ・ルートヴィヒ
テノール:ジェームス・キング
バリトン:ヴァルター・ベリー
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
録音:1963年11月7日, 日生劇場(ライヴ)

特に無し。

特に無し。

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