このアルバムの3つのポイント
- 1963年のバイロイト音楽祭でのカール・ベームの伝説的な第九
- フルトヴェングラーを彷彿とさせる熱演
- モノラル録音でも伝わってくる緊張感
ヴァーグナーの楽劇のための音楽祭「バイロイト音楽祭」
クラシック音楽の夏の風物詩と言えば、ベルリンフィルの野外コンサートのヴァルトビューネ・コンサート、ウィーンフィルの野外コンサートのシェーンブルン宮殿コンサート、そしてオーストリアのザルツブルク音楽祭、スイスのルツェルン音楽祭など、重要なイベントが多いですが、ヴァーグナー・ファン(ヴァグネリアン)にとってはドイツのバイロイト音楽祭でしょう。
ヴァーグナーの楽劇を演奏するための音楽祭で、質の高い意欲的な上演が毎年おこなわれています。
最近はクリスティアン・ティーレマンの登場が多いです。FC2ブログで紹介ましたが、2018年「ローエングリン」、2015年「トリスタンとイゾルデ」があります。
2019年にはヴァレリー・ゲルギエフがついにバイロイト・デビューしました。こちらの記事で紹介しましたが、激動的な見応えある「タンホイザー」でした。
2021年が没後40周年のカール・ベーム
オーストリア出身の名指揮者、カール・ベーム。私も今でもよく聴く指揮者の一人で、特にウィーンフィルとのベートーヴェンの「田園」(1971年)やブルックナーの「ロマンティック」(1973年)、交響曲第8番(1976年)、ベルリンフィルとのブラームスの交響曲第1番(1959年)は繰り返し聴いています。
日本でもファンが多く、特に1975年の来日公演では大フィーバーが起きました。今でも根強い人気があり、レコディングもよく再リリースされてきましたが、今年(2021年)は没後40周年ということで、大型の企画が出ています。
1つ目がデッカ・フィリップスのレコーディング全集(38CDとBlu-ray Audio)で9月中旬予定、そしてもう一つがドイツ・グラモフォン管弦楽レコーディング全集(67CDとBlu-ray Audio)でこちらは10月中旬予定です。
没後40周年ということで、ベームのベートーヴェンを買い直そうと考え、ドイツ・グラモフォンでのウィーンフィルとの交響曲の2019年発売の分売を6枚買って全集を揃えました。
そしたら、買って数日後にドイツ・グラモフォン管弦楽レコーディング全集発売のアナウンス。こちらも買うつもりですが、「あーあ、ベートーヴェンも入っているんだよな。買っちゃったばかりだよ。重複しちゃうな」と少しがっかりしたのも事実です。レコーディング全集はCD、ベートーヴェンの分売はSHM-CDだったので音質が違うとは思うことにします。
ドイツ・グラモフォンのベートーヴェン交響曲全集とともに購入したのが、1963年7月のバイロイト音楽祭でのベーム指揮バイロイト祝祭管の第九ライヴと、同じく1963年の11月のベーム指揮ベルリン・ドイツ・オペラ管の日生劇場での第九ライヴのCD。
CDのレビューを見ると日生劇場のほうが前評判が高そうだったのですが、バイロイト音楽祭のほうが私の中では衝撃的だったので先に書くことにします。
カール・ベームのバイロイト
ベームのバイロイトと言えば、1966年7月の「トリスタンとイゾルデ」の演奏があり、こちらはドイツ・グラモフォンでレコーディングされて、1967年度レコードアカデミー大賞を受賞した名盤です。
1963年7月のバイロイト音楽祭での第九も演奏しており、それはOrfeo D’Orレーベルから2017年にリリースされています。
バイロイトでの第九と言えば
フルトヴェングラー。こちらの記事でフルトヴェングラーのワーナー・クラシックスでのベートーヴェン交響曲全集を紹介しましたが、その中の第九は1951年7月29日のバイロイト音楽祭での演奏でした。
1963年、カール・ベームはベルリン・ドイツ・オペラを率いて初来日公演をおこないますが、そのときの日生劇場のこけら落とし演奏会での第九(11月7日)ではスッキリとした美音で演奏されていました。このバイロイト盤は一味もふた味も違います。
轟くティンパニ
ベームの他の第九の録音と違うのは、グイグイと迫る緊張感。特徴的なのはやはりティンパニでしょう。第1楽章でも、第2楽章でも、轟いでいます。まるでフルトヴェングラーを彷彿とさせるような凄まじさを感じます。これを聴くとベームのイメージが変わりますね。
1970年代での全集での第九や1980年の再録音ではゆったりとしたテンポで進んでいましたが、このバイロイト盤では、第1楽章が16:01、第2楽章が12:10、第3楽章が17:11、第4楽章が25:52でトータルが71分17秒。
1970年のウィーンフィル盤では第1楽章が16:49、第2楽章が12:10、第3楽章が16:40,第4楽章が27:08でトータルが72分44秒でした。バイロイト盤での第1楽章や第4楽章が若干速く第3楽章が少しゆっくりとなって緩急が際立つようになっています。
さらにウィーンフィルとの1980年の再録ではトータルで79分2秒という遅さでしたので、続けて聴くと同じ指揮者かと思うぐらいに衝撃を受けます。
モノラル録音ながら
1963年の録音ですが、このレコーディングはモノラル録音。音質はお世辞にも良くないですが、それ以上に差し迫るベームの気迫を感じます。
特に第4楽章の声楽は、最初のジョージ・ロンドンのバリトンから結構くっきりと聞こえますし、各声楽も合唱もクリアです。プレスティッシモでは圧倒的なクライマックスで、シンバルもバシバシ鳴っています。
まとめ
カール・ベームのイメージが覆った、フルトヴェングラーを彷彿とさせるようなバイロイト音楽祭での第九。モノラル録音で音質はそこまで良くはないですが、それ以上に衝撃を受けたレコーディングでした。
オススメ度
ソプラノ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
アルト:グレース・バンブリー
テノール:ジェス・トーマス
バス:ジョージ・ロンドン
指揮:カール・ベーム
バイロイト祝祭管弦楽団
イロイト祝祭合唱団
録音:1963年7月23日, バイロイト祝祭劇場(ライヴ)
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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