※2020/12/17 初稿、2022/04/01追記
このアルバムの3つのポイント



- シカゴ響125周年のブルックナーライヴ演奏
- 音楽監督リッカルド・ムーティの初となる第9番の録音
- 伸びやかな旋律とシカゴ響のサウンド
現代の頼みの綱、リッカルド・ムーティ
1941年生まれの指揮者リッカルド・ムーティは最近のクラシック音楽界の頼みの綱とされています。2010年からシカゴ交響楽団の音楽監督を務めていて、その契約は2023年まで延長されています。
2019年は東京・春・音楽祭でリゴレットを上演し、2021年新春のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートも6度目の指揮を行い、同年秋のウィーンフィル来日公演も指揮しました。未だに現役バリバリの巨匠指揮者です。同じ曲でもムーティが指揮すると気品があると、2018年のニューイヤーコンサートで解説の方から評されていました。
クラウディオ・アバド、ベルナルト・ハイティンク、マリス・ヤンソンスと、第一線で活躍してきた名指揮者が逝去されてぽっかり空いた穴を埋めるように、ムーティはより一層各国の一流オーケストラから重宝されているように思えます。
珍しいブルックナー、初となる第9番
ムーティはブルックナーの録音はあまりおこなってこなかったし、交響曲第9番については、今回紹介する2016年6月のシカゴ響とのライヴ録音が初だそうです。この録音はシカゴ響の自主レーベルCSO-Resoundからリリースされているのですが、オリジナル主義のムーティらしく、楽譜は1894年原典版(ノヴァーク版)を使用しています。
この演奏では、ゆっくりなテンポでも旋律がしっかりと歌われており、金管のスケールも適度にコントロールされています。同じシカゴ響でもサー・ゲオルグ・ショルティの1985年の演奏では金管が元気すぎた感もありますが、その辺も含めてこのムーティ盤は絶妙。ただ、第1楽章の立ち上がりはややレガートが強すぎて音がくっついて聴こえます。ニ短調の曲ですがあまり苦悩は感じません。また、第1楽章の巨大な渦を描くところ(fのクレッシェンドからfffになるところ)では溜めが無くあっさりし過ぎている感じもします。
シカゴ響のブルックナーはアメリカのオーケストラらしく力強く大スケールのサウンドが特徴で、歴代の指揮者がそのコントロールに苦心を払っていましたが、ムーティもうるさすぎるところがなく絶妙にバランスを取っています。
シカゴ響の持ち味である明朗な響きで健康的な音色に聴こえます。主旋律以外のハーモニーもよく聴こえて、美しい弦の響きや、ディテールまで精密なトレモロも良いですね。
まとめ
シカゴ響の健康的なサウンドで大作を描いた、音楽監督リッカルド・ムーティとの伸びやかなブルックナーです。
オススメ度
指揮:リッカルド・ムーティ
シカゴ交響楽団
録音:2016年6月23-26日, シカゴ・オーケストラ・ホール(ライヴ)
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試聴
iTunesで試聴可能。またシカゴ響の公式YouTubeサイトで動画を視聴可能。
受賞
特に無し。
コメント数:1
響きがまろやかで重厚感があって良いと思いました。一方、シカゴ響にこちらが勝手に抱いているイメージとは少し異なる演奏でした。第一楽章が始まって1分弱の所で登場するホルンでまず「あれっ?」 と思いました。全体として金管がおとなしめで、シカゴ響だと思って聴くと物足りない気がします。本当に勝手ですが、先入観や思い込みを捨てて聴くのは難しいものです。