このアルバムの3つのポイント
- アシュケナージ3回目のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番録音
- オーマンディとフィラデルフィア管の鳥肌が立つ、デフォルメされたサウンド
- 強靭で力強いアシュケナージのピアノ
アシュケナージの3回目のラフマニノフの協奏曲第3番
旧ソ連出身のピアニストで指揮者のヴラディーミル・アシュケナージは、過去にピアニストとして5回、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を録音しています。
ピアノ協奏曲の全集も2回録音しており、アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団(197-71年)のものと、ベルナルト・ハイティンク指揮のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とのものはそれぞれ全集として屈指の人気です。
今回紹介する3回目のピアノ協奏曲第3番は、少し珍しいです。何と、オーケストラがアメリカの最強オーケストラと言われたフィラデルフィア管弦楽団で、指揮を務めたのはユージン・オーマンディです。この曲を1939年〜40年に作曲家のセルゲイ・ラフマニノフ自身のピアノで録音したときと同じパートナーなのです。
この録音はRCAレーベル(現ソニーミュージック)からリリースされていますが、リリース毎にカップリングの曲が異なります。私は2010年7月にリリースされたCDを持っていて、カップリングはフィリップ・アントルモンのピアノ独奏によるラフマニノフのピアノ協奏曲第4番でした。
鳥肌が立つフィラデルフィア・サウンドとデフォルメされた味付け
この第3番の演奏はカーネギーホールでの公演直後にフィラデルフィア・タウン・ホールに移動して収録されたもののようです。
そのためか、ライヴさながらの緊張感があります。
冒頭からテンポは遅めで、オーマンディが指揮するフィラデルフィア管の弦楽器はすすり泣くような音を出しています。思わず鳥肌が立ちました。聴き慣れた曲なのに、オーマンディが指揮するとこんなに違うのかと驚きました。アシュケナージのピアノはタッチが強めで、全体的に力強い印象です。
音質はちょっとイマイチな感じが否めません。音がベチャッとなって聴こえます。同じ1970年代の録音でも、音質に定評のあるデッカ・レーベルの録音に耳慣れていると、ちょっと気になってしまいますね。
オーマンディとフィラデルフィア管は、まるでメロドラマのBGMのように、結構濃い目の味付けでデフォルメした音楽を生み出していますが、この演奏がそのまま映画に使われても違和感がないくらいです。
カップリングにアントルモンとのピアノ協奏曲第4番も
第3番とカップリングされているのは、同じくラフマニノフのピアノ協奏曲第4番で、フランスのピアニスト、フィリップ・アントルモンがソロを務めています。
この第4番は1927年にラフマニノフ自身のピアノでフィラデルフィア管がレオポルド・ストコフスキー指揮で初演された作品ですが、オーケストラにゆかりの深いこの曲をオーマンディがどう指揮するのか大変興味がありました。
第1楽章の冒頭から小気味良いテンポ。オーマンディとフィラデルフィア管は弱音から始めて、1音ずつクレッシェンドしてスケールの大きな音量でこの音楽の開始を告げています。まるでハリウッド映画のBGMを聴いているかのようです。アントルモンのピアノも煌びやかでいて、ロマンティックな演奏でこの曲に彩りを添えています。
第1楽章のクライマックスではこれでもかというぐらいの大音量でメランコリーな旋律を響かせます。こちらもデフォルメされた演奏で、往年の時代を感じますね。ただ、1961年の録音ということもあり、音質は良くありません。ステレオと書いてありますがモノラルに近いレベルです。
第4番は、ラフマニノフのピアノ協奏曲の中では人気が無いのですが、曲が難解なところがその理由。ただ、このアントルモンとオーマンディの録音を聴くと、この曲の魅力が分かったような気になります。
まとめ
当時最強と言われたフィラデルフィア管のサウンドを堪能できる録音で、オーマンディのデフォルメされた味付けもこの時代ならでは。アシュケナージのピアノ協奏曲第3番の録音はベルナルト・ハイティンクとの再録音のほうが私はオススメですが、このオーマンディとの協演はここでしか聴けない独特な音楽で、一度は聴いていただきたい演奏。
オススメ度
ピアノ:ヴラディーミル・アシュケナージ(第3番)
ピアノ:フィリップ・アントルモン(第4番)
指揮:ユージン・オーマンディ
フィラデルフィア管弦楽団
録音:1961年11月2日(第4番), 1975年2月(第3番), フィラデルフィア・タウン・ホール
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試聴
iTunes及び上記タワレコのリンクから試聴可能。
受賞
特に無し。
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