ルツェルン音楽祭2019夏 オール・ラフマニノフ・プログラム シャイー/マツーエフ/ルツェルン祝祭管

ルツェルン祝祭管弦楽団を指揮するリッカルド・シャイー(2019年)

このアルバムの3つのポイント

ルツェルン音楽祭2019 デニス・マツーエフ/リッカルド・シャイー/ルツェルン祝祭管弦楽団
ルツェルン音楽祭2019 デニス・マツーエフ/リッカルド・シャイー/ルツェルン祝祭管弦楽団
  • ルツェルン夏の音楽祭2019のオール・ラフマニノフ・プログラム!
  • 現代のギレリス!? ヴィルトゥオーソ、デニス・マツーエフの力強く超絶的なピアノ独奏
  • ルツェルン祝祭管との一体感ある演奏を行った音楽監督リッカルド・シャイーの手腕!

ドラマ「半沢直樹」が絶好調で、俳優陣の演技力や顔芸が絶賛を浴びている。その中でも、銀行の頭取役を務める北大路欣也の存在感が際立っていると評判だ。何もセリフがなくても、いるだけでオーラがすごい。

クラシック界にも雰囲気が似てると思う指揮者がいる。

イタリア出身のリッカルド・シャイーである。

LucerneSummer2019_Riccardo_Chailly
ルツェルン祝祭管弦楽団と一体感ある演奏を行ったリッカルド・シャイー。©Accentus Music

すごい貫禄。

また、音楽面での存在感もすごい。オランダの名門、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者、そしてドイツの最古の名門、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のカペルマイスターを歴任し、今ではイタリアのオペラの殿堂、ミラノ・スカラ座歌劇場の音楽監督、そしてルツェルン祝祭管弦楽団の音楽監督も兼任している。

そのシャイーの新譜が、夏のルツェルン音楽祭2019での、オール・ラフマニノフ・プログラム。Accentus Musicから輸入盤のDVD、Blu-rayが最初8月上旬予定だったが、何故か1ヶ月ほど遅れて、9月4日にリリースされた。国内盤は9月下旬を予定している。

プログラムは全てラフマニノフ作曲の作品で、
・ピアノ協奏曲第3番 Op.30
・エチュード「音の絵」からOp.39 No.2 (ピアノ独奏のアンコール)
・ヴォカリーズ Op.34 No.14(管弦楽版)
・交響曲第3番 Op.44

である。それでは順に観ていこう。

今回の楽しみは、ピアノ独奏のデニス・マツーエフ。ロシア出身のピアニストで、モスクワ音楽院で学び1998年にチャイコフスキーコンクールで優勝している筋金入りのロシアンピアニズムのエリートである。以前FC2ブログで紹介したヴァレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管とのプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番で超絶な演奏を聴かせてくれた。オールドファンなら、エミール・ギレリスみたいと表現すれば分かりやすいだろうか。「鋼鉄のタッチ」と言われたギレリスのあの力強い打鍵と超絶的な技巧が、マツーエフのピアノにある。

このピアノ協奏曲第3番の演奏でも、最初のピアノは静かにゆっくりと始まったが、聴かせどころではマツーエフは太い指で、まるでブルドーザーのような力強さで弾ききった。もっと速さを求めるならヴラディーミル・ホロヴィッツやマルタ・アルゲリッチの演奏を聴いたほうが良いと思うが、マツーエフの演奏は骨太の演奏で、聴き応えがある。スッキリとして気持ちが良い。やはりロシアの作曲家のピアノ協奏曲は抜群にうまい。

シャイーが指揮するルツェルン祝祭管も、一体感がある演奏だ。2017年の「春の祭典」(FC2ブログ)のライヴ録音でも感じたが、超一流の演奏者が揃うスーパーオーケストラを束ねるのがうまい。シャイーの指揮ぶりは体をダイナミックに揺らすので、オーケストラから生み出される音楽に躍動感が生まれる。そして、トゥッティのときも音がピッタリ揃っているし、休符のときもピタッと止む。オーケストラを完全に手の内化している。前の音楽監督のクラウディオ・アバドのときも深みがあって名演が多かったが、今のルツェルン管はまた違った良さが出ている。

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カデンツァを演奏するデニス・マツーエフ。©Accentus Music

聴衆からの絶賛を受けてアンコール曲として弾いたのは、これもラフマニノフの「音の絵」の1曲。熱狂を鎮める目的もあるのだろうが、静かで奥深いこの曲を選んだのは良いセンスだ。ピアノ協奏曲と比べると熱と冷、動と静ぐらい対比的な作品だが、技巧だけではなく表現者としてのマツーエフの素晴らしさが表れている。

次にルツェルン祝祭管が演奏したのは、ヴォカリーズ。元々はピアノ伴奏を伴う歌曲だが、ここではラフマニノフ自身が編曲した管弦楽版。うっとりするような美しい旋律で堪能させてくれる。これまでリッカルド・シャイーの指揮と言えばダイナミックさが持ち味だと考えたいたが、この曲ではこれでもかというぐらい感傷的。現在イタリアの名門歌劇場であるミラノ・スカラ座の音楽監督も兼任しているシャイーだからこそ、ドラマティックさを引き出す腕がさらに磨かれている感じがする。

最後はラフマニノフの交響曲第3番。ラフマニノフといえば、ピアノ協奏曲第2番、第3番や交響曲第2番のように、メランコリーで甘く切ない旋律がある作品が人気だが、この交響曲はやや晩年の作品で、記憶に残りづらい旋律や、不思議なリズムなど、ちょっととっつきにくい。

ここでもシャイーの指揮はルツェルン祝祭管からカラフルな音色を引き出している。最期のトゥッティがバンっときれいに揃っていて、一体感が良い。ただ、作品自体が少し理解しづらかったせいか、演奏後も熱狂的な拍手にはならず、ジワーッと温かい拍手にとどまった。むしろ前半のピアノ協奏曲のほうが「ブラボー」と拍手が多かった。

オール・ラフマニノフのプログラムでリッカルド・シャイーとルツェルン祝祭管弦楽団の充実ぶり、そしてピアノのデニス・マツーエフの快演を楽しめた。大満足。

オススメ度

評価 :5/5。

ピアノ:デニス・マツーエフ
指揮:リッカルド・シャイー
ルツェルン祝祭管弦楽団
演奏:2019年8月, ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(ライヴ)

特に無し。

ルツェルン音楽祭の公式YouTubeサイトでシャイーのラフマニノフに対するドキュメンタリーを試聴可能。

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