このアルバムの3つのポイント

ラフマニノフ ピアノ協奏曲全集 ヴラディーミル・アシュケナージ/アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団(1970-1971年)
ラフマニノフ ピアノ協奏曲全集 ヴラディーミル・アシュケナージ/アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団(1970-1971年)
  • アシュケナージ1回目のラフマニノフのピアノ協奏曲全集
  • キレのあるアシュケナージのピアノ
  • プレヴィン指揮ロンドン響とのモダンな演奏

ピアニストで指揮者のヴラディーミル・アシュケナージは、ピアニストとして2回、ラフマニノフのピアノ協奏曲全集を完成させています。

1回目が今回紹介するアルバムで、1970年から1971年に、アンドレ・プレヴィン指揮のロンドン交響楽団と録音したものです。イギリスのレコード・レーベルのデッカ(Decca)との契約なので、特に1960年代から70年代まではロンドン響との協演が多かったアシュケナージ。

プレヴィンはピアニストとしても活躍しました。アシュケナージとは、ラフマニノフのピアノ協奏曲全集の他に、ラフマニノフのピアノデュオの作品を協演していますし、指揮者としてはさらにプロコフィエフのピアノ協奏曲全集も完成させています。

近代音楽を得意とし、自ら作曲もおこなったプレヴィンの指揮は、ロシア音楽はうまいです。モダンな響きで音楽がビビッドに聞こえます。そしてロンドン響も近代音楽を演奏するには理想のパートナーでしょう。

アシュケナージ2回目のラフマニノフのピアノ協奏曲全集は、1984年から1986年にベルナルト・ハイティンク指揮のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と協演したもの。こちらはデジタル録音で音質もクリアになっていますが、何よりもコンセルトヘボウ管のいぶし銀のような響きが渋くて、ラフマニノフのメランコリーな特徴が引き出されています。

アシュケナージはピアニストとして全集以外にもラフマニノフのピアノ協奏曲を録音していて、例えばアシュケナージのデッカ・レーベルへのデビュー盤となった1963年3月のピアノ協奏曲第3番があります。こちらはアナトール・フィストゥラーリが指揮して、オーケストラはやはりロンドン響です。

また1963年9月〜10月にはキリル・コンドラシン指揮のモスクワ・フィルハーモニー管弦楽団とピアノ協奏曲第2番を録音しています。こちらはコンドラシンが生み出すロシアらしい哀愁と暗さが見事で、アシュケナージのピアノも切れ味があります。こちらの記事に紹介しています。

また、1975年2月には、ユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団と、ピアノ協奏曲第3番を録音しています。こちらの記事に紹介しましたが、オーマンディとフィラデルフィア管がメロドラマのBGMのように濃い目の味付けでデフォルメされた音楽を作っていました。

さてアシュケナージとプレヴィン、ロンドン響によるこのラフマニノフのピアノ協奏曲全集のアルバムですが、感想を一言で言うと「モダン」。

プレヴィンとロンドン響が生み出すラフマニノフは、パレットの絵の具がふんだんに使われて彩られています。ロシア本家のオーケストラだったらもっとメランコリーにくすんだ色で描いたであろう原風景を、このコンビは色彩豊かに鮮明に写しています。

例えばピアノ協奏曲第2番の第1楽章。1963年のコンドラシンとの録音と同様に、アルペジオで冒頭の鐘の音を弾き始めるアシュケナージのピアノ。その後にコンドラシンはノスタルジックに切ない旋律を引き出していましたが、プレヴィンはむしろ雄大さすら感じる厚みで旋律を堂々と演奏していきます。そして続くオーケストラとピアノが本当にきらびやかです。

私はこのアルバムでは、ピアノ協奏曲第1番と第4番が好みですが、どちらもプレヴィンとロンドン響のモダンさがマッチしているからです。逆に第2番はコンドラシン/モスクワフィルとの旧録、第3番はハイティンク/コンセルトヘボウ管の再録のほうがより良いと考えています。

ヴラディーミル・アシュケナージ1回目のラフマニノフのピアノ協奏曲全集。アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団のコンビが生み出すモダンな響きを活かしたビビッドな演奏です。

オススメ度

評価 :4/5。

ピアノ:ヴラディーミル・アシュケナージ
指揮:アンドレ・プレヴィン
ロンドン交響楽団
録音:1970年4月-1971年11月, キングズウェイ・ホール

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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