このアルバムの3つのポイント
- ヴラディーミル・アシュケナージ1回目のベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集
- キレのあるシャープなピアノとショルティ/シカゴ響のマッシブなサウンド
- 日本のレコードアカデミー賞と米国グラミー賞をW受賞!
アシュケナージ1回目のベートーヴェン・ピアノ協奏曲全集
ピアニストのヴラディーミル・アシュケナージは3回、ベートーヴェンのピアノ協奏曲をソリストとして録音しています。
1回目が1972年(1971年〜1972年という情報もあり)にサー・ゲオルグ・ショルティ指揮シカゴ交響楽団と、2回目が1983年にズービン・メータ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と、そして3回目が1986年から1987年のアシュケナージのピアノ・指揮によるクリーヴランド管弦楽団とのものです。
どれも評価は高いですが、特に日本では2回目の全集がレコード・アカデミー大賞を受賞していて飛び抜けた評価を受けています。日本人が好きなウィーンフィルというのも理由だと思いますが。
1回目の全集ではショルティとシカゴ響の黄金時代での録音なので、オーケストラ・パートがとても聴き応えがあります。
また、3回目の全集ではアシュケナージが指揮も兼務したことで、よりアシュケナージの解釈に基づいたアプローチがされていてこれまた興味深い演奏です。
私も2回目のウィーンフィルとの全集も好きですが、ショルティのファンでもあるので1回目の全集は格別な想いがあります。こちらは日本でもレコード・アカデミー賞を受賞しましたし、米国グラミー賞も受賞してW受賞でした。
イリノイ大学クラナート・センターで
このピアノ協奏曲全集は、1972年にイリノイ大学のクラナート・センターで録音されました。こちらの記事で紹介しましたが、ショルティ/シカゴ響は同時期にベートーヴェンの交響曲全集もこの場所で録音しており、シカゴはベートーヴェン一色に染まっていたようです。
ただ、このアシュケナージとショルティのピアノ協奏曲の録音は1972年5月と書かれていますが、CDによっては第3番と第5番「皇帝」は1971年5月という書いてあるのもあります。私が所有している2007年発売のアシュケナージ名盤では全て1972年5月と書いてあるので、この記事でもそれに合わせます。
筋肉質なオーケストラと切れ味鋭いピアノ
さすがだと思うのはショルティとシカゴ響の音楽の作り方。シカゴ響の持ち味である明朗な響きを活かしつつも、弱音から強音までのスケールと、オペラを得意としたショルティらしくピアノ協奏曲にも生命を宿らせ、ダイナミックに描いています。
デッカのエンジニアが音質面でもこのサウンドを最大限引き出そうと、筋肉質でマッシブなサウンドに仕上げています。2007年のCDでは少し音が割れるところもありますが、新しいリリースではその辺は改善されているのかもしれません。
体格では小柄なアシュケナージと大柄なショルティで差がありますが、アシュケナージのピアノもショルティ/シカゴ響のスケールに負けていません。切れ味鋭いシャープな演奏ながら、強靭なタッチでオーケストラと調和しています。
特に第5番「皇帝」ではベートーヴェンが求めていたオーケストラとピアノの協演が理想的な形で表現されていると思います。
オーケストラの響きでオススメなのはピアノ協奏曲第3番。これまではピアノが入るまでのオーケストラだけの序奏はあまり面白さを感じなかったのですが、この演奏でを聴くと冒頭の響きからゾクゾクとしますし、盛り上げ方のうまさがさすがショルティだと思いました。
まとめ
アシュケナージ、ショルティ/シカゴ響。デッカ・レーベルの黄金コンビによるベートーヴェンのピアノ協奏曲は筋肉質で力強いベートーヴェンを描いています。
オススメ度
ピアノ:ヴラディーミル・アシュケナージ
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1972年5月, イリノイ大学クラナート・センター
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試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
日本の1974年度レコードアカデミー賞「協奏曲部門」を受賞。
1973年の米国グラミー賞「BEST CLASSICAL PERFORMANCE INSTRUMENTAL SOLOIST OR SOLOISTS (WITH ORCHESTRA)」を受賞。
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