このアルバムの3つのポイント

ラヴェル「ボレロ」他 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1976年)
ラヴェル「ボレロ」他 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1976年)
  • ショルティ /シカゴ響のフランス・アルバム
  • オーケストラの醍醐味、ボレロ
  • 米国グラミー賞の最優秀技術賞を受賞

なるべく様々な演奏家の演奏を紹介したいと思ってはいるのですが、名指揮者サー・ゲオルグ・ショルティカルロ・マリア・ジュリーニについては良いなぁと思う演奏が多いので、まだ紹介しきれていないものをどんどん書いていこうと思います。今日はショルティとシカゴ交響楽団のフランスの作品集を。

モーリス・ラヴェルの「ボレロ」、クロード・ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、交響詩「」は1976年5月の録音。そして組曲「クープランの墓」が1980年5月です。私は2007年にリリースされた「20世紀の巨匠シリーズ黄金時代のショルティ|シカゴ交響楽団」の国内盤で聴いています。

1976年といえば、4月にはジュリーニもシカゴ響とムソルグスキー=ラヴェルの「展覧会の絵」を録音していますし、名盤の誉れ高いマーラーの交響曲第9番もこの時期。さらに12月にはブルックナーの交響曲第9番も録音していて、黄金時代のシカゴ響が充実した時代。

今回紹介するボレロのアルバムは、米国グラミー賞の最優秀オーケストラ・パフォーマンスと最優秀クラシック・アルバム賞にノミネートして受賞はなりませんでしたが、録音技術が評価されて最優秀技術賞(クラシック)を受賞しています。

ボレロは各楽器のソロが多いのでオーケストラのレベルを計るのにうってつけの作品。同じ旋律を楽器が加わって徐々に盛り上がっていき、クライマックスでは壮大なスケールで描かれます。15分ほどの作品ですが、似たような音楽が続くので単調と感じる方もいるでしょう。先週の日経新聞の「名作コンシェルジュ」で音楽評論家の鈴木 淳史氏がエリアフ・インバルのラヴェル管弦楽曲集を紹介していましたが、ボレロについては1行か2行だけだったと記憶していますが、やけにあっさりとしたレビューでした。

私もボレロを多く聴くわけではないですが、このショルティ×シカゴ響の演奏はそうした単調さを感じさせない演奏と言えます。

当時世界最強と言われた金管セクションが特にすごいですね。前半はツヤのある音色で魅せてくれますし、クライマックスでは圧倒的なパワー。本当に飽きさせません。もちろん最初からリズム良く演奏し続ける打楽器も見事。リズムに持ち味のあるショルティらしく、オーソドックスな演奏ですが、うまいです。緩やかにクレッシェンドしていく音楽が最後のクライマックスで燃えるような熱さになるのがさすがです。本拠地シカゴ・オーケストラ・ホールでの録音ですが、ラヴェルの色彩を余すことなく伝える録音技術も良いですね。

「クープランの墓」、「牧神の午後への前奏曲」も落ち着いていて良い演奏ですが、次に私がPRしたいのは交響詩「海」。この曲では晩年のジュリーニとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の渋い録音がありまして、私も愛聴していますが、あちらは穏やかな海を眺めているような感じがしました。このショルティ×シカゴ響の海は水が飛び跳ね、スケールが大きく、激しさがあります。第2曲「波の戯れ」でのハツラツとした表情、そして第3曲「風の海の対話」の冒頭でのゾクゾクするような怖さ。オペラを得意としたショルティらしく、ドビュッシーの管弦楽曲でも音だけで情景が目に浮かぶようです。

黄金時代のショルティ×シカゴ響によるフランス作品集。「ボレロ」と「海」で唯一無二の演奏を聴かせてくれます。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1976年5月(ボレロ、牧神、海), 1980年5月(クープラン), シカゴ・オーケストラ・ホール

iTunesで試聴可能。

1978年米国グラミー賞でKenneth Wilkinsonが「最優秀技術賞(クラシック)」を受賞。またアルバムが最優秀オーケストラ・パフォーマンスと最優秀クラシック・アルバム賞にノミネート。

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コメント数:1

  1. 大好きなボレロです。グラミー賞の最優秀技術賞を受賞するだけあって、録音が良いですね。昔話ですが、ボレロをカセットで聞いていた頃は、出だしの小さい部分などはヒスノイズしか聞こえなかったものです。ピアニシモで緊張感高く始まるのですが、管のソロが皆、伸び伸びと個性豊かな演奏を繰り広げていくのが、聴いていてとても楽しいです。

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