このアルバムの3つのポイント

カルロ・マリア・ジュリーニ イン アメリカ シカゴ交響楽団
カルロ・マリア・ジュリーニ イン アメリカ シカゴ交響楽団
  • 全盛期のシカゴ響のスケール大きな演奏
  • ジュリーニの伸びやかな指揮
  • 作家の百田尚樹氏も著書「至高の音楽」で推薦

米国の名門オーケストラ、シカゴ交響楽団フリッツ・ライナーが音楽監督だった時代に最初の黄金期を迎え、そして1969年にゲオルグ・ショルティが音楽監督に就いてから目覚ましい活躍で第二の黄金時代に入りました。ショルティと同時に1969年から首席客演指揮者を務めたのがカルロ・マリア・ジュリーニ

1972年に首席客演指揮者から退任していますが、その後もシカゴ響との演奏、レコーディングは続けています。グイグイと推進力のある1969年のブラームスの交響曲第4番や、ハツラツとした1971年のベートーヴェンの交響曲第7番などジュリーニとシカゴ響との初期の録音はEMIレーベル(現ワーナー・クラシック)でレコーディングしていますが、1976年から78年にはドイツ・グラモフォン・レーベルで録音しています。

その中には、1976年4月に録音されたジュリーニの屈指の名盤であるマーラーの交響曲第9番もあり、ジュリーニを語る上で、そしてシカゴ響を聴く上で欠かせない演奏ばかりです。

今回紹介するのは、モデスト・ムソルグスキーがピアノ曲として作曲し、モーリス・ラヴェルがオーケストラ用に編曲した組曲「展覧会の絵」。マーラーの第9番と同時期の1976年4月にシカゴでレコーディングされています。

ジュリーニは後に1990年2月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と「展覧会の絵」を再録音しますが、こちらの記事(FC2ブログ)で書いたように、晩年のジュリーニらしくテンポはよりゆったりとした歩みで、マイルドに演奏されていきました。このシカゴ響との旧録は黄金時代を感じさせる演奏です。

こちらの記事で紹介しましたが、小説「海賊とよばれた男」や「永遠のゼロ」などの著者百田尚樹さんは、大のクラシック音楽ファンで、何十年にも渡ってレコードを聴き続けているそうです。数万枚以上所有している中から、オススメの曲や録音を紹介したエッセイ「至高の音楽」で「展覧会の絵」も取り上げています。

その「展覧会の絵」のレコーディングで最初にオススメされていたのが、ジュリーニ指揮シカゴ響の演奏。このように語っています。

さて推薦盤だが、名盤が多すぎて困る。ラヴェル版ならカルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の演奏が見事。オーケストラの上手さには舌を巻く。

百田尚樹『至高の音楽』第12曲ムソルグスキー「展覧会の絵」より

第1プロムナードではトランペットが高らかに奏で、さらにホルン、トロンボーン、チューバが加わり、シカゴ響のパワフルな金管セクションが鳴り響きます。ジュリーニはここで伸びやかに旋律を引き出しています。弦楽器がメロディを引き継ぐと、シカゴ響らしい明朗な響きで華やかに奏でられます。

続く「小人(グノーム)」ではあまりグロテクスさは出さずに、ゆったりとしたテンポで丁寧に綺麗にまとめています。第2曲の「古城」では低弦が静かな一定のリズムを刻み、その上に木管の心温まる旋律が乗り、見事ですし、第3曲「テュイルリーの庭」では、うっとりしてしまうほど美しい木管とヴァイオリンが良いです。

そして第4曲の「ビドロ(牛車)」。前半こそおとなしいですが、牛車が坂道を突き進むような荒々しい曲想ではシカゴ響の圧倒的な迫力が聴き応えがあります。小太鼓は消えていくように静かになっていきます。ビドロには牛車の他にもポーランド語で「(牛のように)虐げられた人」という意味があり、この曲には圧政に苦しむ人を描いているとの解釈もあります。このジュリーニの演奏を聴くと、牛車も虐げられた人々のどちらの意味にも捉えられるので不思議です。

クライマックスの第10曲「キエフの大門」。ここでもシカゴ響自慢の金管セクションが炸裂しています。少しゆったりとしたテンポで壮大なスケールで描く。最後の楽譜2ページ半の「Poco a poco rallentando (少しずつだんだん遅く)」では、ここぞとばかりにジュリーニはテンポをさらに落としていきますが、音の強さはff (フォルテッシモ)をキープして、爆発していくかのように最後の一音を鳴らします。まさに圧巻です。

ジュリーニが全盛期のシカゴ響と録音した「展覧会の絵」。シカゴ響のパワーを活かしつつも随所でジュリーニの伸びやかな旋律やユニークな解釈を感じられる名演でしょう。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
シカゴ交響楽団
録音:1976年4月, シカゴ・メディナ・テンプル

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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コメント数:2

  1. ジュリーニとシカゴ響、マーラーの9番と同時期の録音ということで、これは間違いない、と期待して聴きました。素晴らしい演奏でした。金管が凄い、気持ちいい、痺れる。木管も好き。低弦もパワフル。速めの曲ではテンポは予測していた通りやや遅めでしたが、解像度が上がり、かえって緊張感が高くなっていました。キエフの大門では圧倒されました。

    • XIZEさま
      いつもコメントありがとうございます。この時期のシカゴ響のオーケストラの凄さが感じられる演奏ですよね。ジュリーニならではの音楽作りも見事です。

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