このアルバムの3つのポイント

ショスタコーヴィチ交響曲第4番 ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団(2008年)
ショスタコーヴィチ交響曲第4番 ベルナルト・ハイティンク/シカゴ交響楽団(2008年)
  • 首席指揮者だったハイティンクとシカゴ響によるショスタコーヴィチのライヴ録音
  • どっしりと構えたスケールでえぐり出す凶暴さ
  • 米国グラミー賞受賞!

オランダ出身の指揮者、ベルナルト・ハイティンクは、こちらの記事で書いたように残念ながら10月21日に92歳でご自宅で逝去となりました。

ハイティンクが遺した録音を一つでも紹介していこうと思い、まだ紹介していなかったレコーディングを探していたら、見付けたのがシカゴ響とのショスタコーヴィチの録音。

1977年から1984年にかけてハイティンクはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団と、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮してショスタコーヴィチの交響曲全集を完成させました。冷戦時代、ソ連以外の「西側」の指揮者としては初めての快挙でした。

ハイティンクのショスタコーヴィチは、全集以外にも交響曲第15番を2010年3月にコンセルトヘボウ管と32年ぶりにライヴ録音したものや、シカゴ交響楽団との2008年の交響曲第4番のライヴ録音もあります。

フリッツ・ライナー時代に最初の黄金期、そしてサー・ゲオルグ・ショルティ時代に第二の黄金期を迎えたこの名門オーケストラも、その後ダニエル・バレンボイム時代の後半からレパートリーやゲスト演奏者の固定化などで人気に陰りが見えてきて経営が赤字になることも。

その救世主としてシカゴ響が目を付けたのが、ハイティンクとピエール・ブーレーズ。2006年からハイティンクはから首席指揮者、ブーレーズは名誉指揮者に就任しました。そして待望の音楽監督は2010年から、リッカルド・ムーティが就任しています。

首席指揮者のハイティンクは、シカゴ響の自主レーベルCSO Resoundでライヴ録音を次々と出していますが、2007年にブルックナーの交響曲第7番マーラーの交響曲第6番「悲劇的」、そしてラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」(FC2ブログ記事)などを出しています。

今回紹介するショスタコーヴィチの交響曲第4番は2008年5月のライヴ録音で、米国グラミー賞の「BEST ORCHESTRAL PERFORMANCE」を受賞しています。ハイティンクは既に巨匠と言える存在でしたが米国のグラミー賞には不思議と縁が薄く、これまでに2002年に英国のロイヤル・オペラ・ハウスを指揮して録音したヤナーチェクのオペラ「イェヌーファ」が2003年のグラミー賞「BEST OPERA RECORDING」を受賞しただけでした。このシカゴ響とのショスタコーヴィチがハイティンクにとって2回目のグラミー賞受賞となりました。首席指揮者に就任してすぐ音楽賞で結果を出すのがすごいですね。

その後、アンドリス・ネルソンスがボストン交響楽団を指揮して2018年にライヴ録音したショスタコーヴィチの交響曲第4番を含むレコーディングもグラミー賞を獲得していますが、素速いテンポで電光石火のような演奏だったのに対して、このハイティンク&シカゴの4番はどっしりと構えています。

この交響曲はショスタコーヴィチの作品でも特にスケールが巨大ですが、シカゴ響が演奏するとそのパワーに圧倒されます。

冒頭から驚かされるのが、響きのテクスチャ。悲鳴のような旋律から始まるのですが、個々の楽器の音色が明瞭に聴こえます。そしてトゥッティではボンッと爆発するような強烈さがあります。ハイティンクはとりわけ耳が良い指揮者だと私は思うのですが、冒頭を聴いただけでバランス感覚のすごさに驚かされます。

テンポはゆったりとしていますが、29分39秒の第1楽章をあっという間に聴き終えてしまうほど、とても濃い中身です。「中庸」な印象のハイティンクにしては激しさや凶暴さすら感じます。

第2楽章も弱音がよくコントロールされていて、本当にそれぞれの楽器の音がよく引き出されています。

第3楽章は静から動へ、陰から光へと変化して、大団円の演奏へと突入するのですが、ここでもシカゴ響のパワフルさがすさまじいです。ただ、「うるさい」と感じることはなく、ここはハイティンクのタクトが見事にコントロールしています。この楽章も31分6秒という長さがありますが、あっという間に終わって気付くとフィナーレの静寂に浸っています。

首席指揮者のベルナルト・ハイティンクがシカゴ交響楽団を指揮してライヴ録音したショスタコーヴィチ。どっしりと演奏でシカゴ響の名技も光ります。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:ベルナルト・ハイティンク
シカゴ交響楽団
録音:2008年5月8-11, 13日, シカゴ・オーケストラ・ホール(ライヴ)

廃盤のため無し。

iTunesで試聴可能。

2008年の米国グラミー賞「BEST ORCHESTRAL PERFORMANCE」を受賞。

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コメント数:1

  1. ショスタコーヴィッチは学生の頃オケで5番をやったことがありますが、その他で聴いたことがあるのは 6番、9番だけ。4番は曲自体を初めて聞きました。緻密でいて破茶滅茶、深刻なようで人を食ったようなところがあって、前衛的な印象をうけました。ショス5の方が聴きなじんでいるせいか古典的に感じられます。シカゴ響のテクニックとパワーはさすが。そしてハイティンクのレパートリーは幅が広いですね。次のブルックナー9番もじっくりと聴いてみます。

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