このアルバムの3つのポイント

シューベルト交響曲第8番「ザ・グレート」 サー・ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1981年)
シューベルト交響曲第8番「ザ・グレート」 サー・ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1981年)
  • ショルティ70歳を記念したデッカからのプレゼントでウィーンフィルとの「ザ・グレート」
  • 温かさと幸福さ
  • ショルティ唯一の「未完成」と再録音の第5番も

指揮者サー・ゲオルグ・ショルティは幅広いレパートリーを演奏してきましたが、シューベルトは珍しく、レコーディングでも1958年5月にイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した第5番D485と1980年代のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との第5番・7番「未完成」、8番「ザ・グレート」の録音があるぐらいです。意外にシューベルトはそこまで積極的には取り組んでいない印象です。

シカゴ響のシューベルトと言えばジュリーニ

ショルティが長年音楽監督を務めていたシカゴ交響楽団と言えばシューベルトを1977年4月にカルロ・マリア・ジュリーニと第8番「ザ・グレート」、1978年3月にと「未完成」と第4番「悲劇的」を録音しています。ジュリーニ得意のシューベルトの3作品で、晩年のバイエルン放送交響楽団とのライヴでの再録音もあり、こちらもゆったりとした慈愛に満ちた演奏で私は好きなのですが、シカゴ響との壮年期の演奏では、程よい緊張感もあり、名演です。

タカ派とハト派とも言われるショルティとジュリーニ。シカゴ響とのシューベルトはジュリーニとの録音だけが残っていて意外にもショルティは録音しませんでした。

ショルティ70歳のデッカからの贈り物

1912年10月生まれのショルティは1982年に70歳を迎えました。長年ショルティのレコーディングを支えてきたレコーディング・レーベルのデッカが70歳のプレゼントとしたのが、ウィーンフィルとのシューベルトの「ザ・グレート」D944の録音。1981年6月でした。これが好評で、1984年9月には第5番D485と第7番「未完成」D759の録音もおこなわれました。

ショルティとウィーンフィルの「ザ・グレート」のアルバムについて、英国グラモフォン誌がこのように評しています。

この録音はデッカがサー・ゲオルグ・ショルティに70歳を記念して贈った捧げ物―たいへん立派な捧げ物である。

(中略)

この録音はその熱心な取り組み姿勢と素晴らしい輝きに加えて、このオーケストラ(ウィーンフィル)が持つ心からの優しさを見事に捉えている。一口に言えば、この素晴らしい交響曲の数多くの録音の中で最も優れた1枚である。

グラモフォン誌の「ザ・グレート」へのレビュー。UCCDー9526のユニバーサルミュージックの日本語訳より

「ザ・グレート」最初のデジタル録音となったものだそうですが、このウィーンフィルとの演奏はショルティにとっても格別でしょう。この時期のシカゴ響との演奏も素晴らしいですが、ブラームスの交響曲全集(1978-79年)のように明朗でパワフルで精緻な響きになったと思いますが、シューベルトの音楽ではどうかなと感じたことだと思います。その点、ウィーンフィルの自発的なウィーンならではの響きでシューベルトが優しく温かく歌われていきます。

なお、ドイツ・グラモフォン・レーベルからリリースされているBest of Wiener Philharmoniker (Apple Music のリンク)でもショルティのこの「ザ・グレート」の第3楽章が含まれています。同じユニバーサル・ミュージックとはいえ、デッカ所属のショルティの演奏がDGのアルバムに含まれるほどの高評価ということでしょう。

雄大な「未完成」26年ぶりの交響曲第5番D485

さらに1984年に録音された2つの交響曲もまた良いんです。特に「未完成」。冒頭から引き込まれてしまいました。楽譜に忠実なピアニッシモ (pp)の弦の不気味な音形の繰り返しの上に、オーボエとクラリネットの明るくて柔らかな旋律が加わるのですが、心に染み入るような感動を受けました。多くの演奏家が演奏してきた傑作「未完成」の中でも、このショルティ盤はオススメしたい1枚です。

一方で、ショルティにとってイスラエルフィルとの1958年5月以来の26年ぶりの再録音となった交響曲第5番D485。ハツラツとしていながらもキリッと引き締まっていた旧録音に比べて、このウィーンフィルとの録音ではそういう音であるべきというのが分かっているかのようにシューベルトの音楽を演奏していきます。水を得た魚のよう、というべきでしょうか。優しさや人間味、そしてときおり諧謔がある、ウィーンならではの演奏です。

70歳を迎えたショルティの唯一の「ザ・グレート」と、続く「未完成」と第5番。ショルティには意外なシューベルトをウィーンフィルという最高のパートナーと作り上げた珠玉の演奏です。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1981年6月(ザ・グレート), 1984年9月(未完成、第5番), ウィーン・ゾフィエンザール

iTunesで「ザ・グレート」「未完成」・第5番を試聴可能。

特に無し。

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