カール・ベーム唯一のドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」のセッション録音 威風堂々としたウィーンフィル(1978年)

カール・ベーム後期レコーディングス

このアルバムの3つのポイント

カール・ベーム後期レコーディングス
カール・ベーム後期レコーディングス
  • カール・ベーム唯一の「新世界より」のセッション録音
  • ウィーンフィルの豊かな響き
  • 第2楽章での慈愛

チェコの作曲家アントニン・ドヴォルザークの不朽の名作、交響曲第9番「新世界より」Op.95。第2楽章「家路」は夕方に流れる音楽にも使われていますし、第4楽章はBGMや映画でもよく使われていて知名度が高い音楽です。

私も大昔、祖父母の家に帰省したときに17時になると聞こえてくるのがこの「家路」でした。タ〜ララ〜 タ〜ララ〜 タ〜ラ〜ラララ〜というメロディが流れてから「小学生、中学生のみなさん、家に帰る時刻となりました。車に気を付けて帰宅しましょう」とアナウンスがあって、よし帰ろうと思ったものでした。

この「新世界より」はドヴォルザークが祖国を離れて米国の音楽院の院長を務めていたときに書かれた作品で、米国で出逢った黒人霊歌が第2楽章に引用されたり、蒸気機関車が第4楽章の冒頭で表現されているとも言われています。

米国のオーケストラが演奏する「新世界より」はパワフルに演奏しますね。私もコロナ前にボストンに出張したときにシンフォニー・ホールで聴いたボストン交響楽団とアンドリス・ネルソンスの「新世界より」の演奏は素晴らしいと思いました(FC2ブログ記事)。

また、ドヴォルザークのスラブ的な要素を掘り下げる演奏も良いと思います。本場チェコのオーケストラは格別です。

色々な演奏スタイルが許容される「新世界より」ですが、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団もドヴォルザークを演奏したらうまいオーケストラの一つでしょう。1985年には晩年のヘルベルト・フォン・カラヤンが指揮した交響曲第8番と第9番の録音もあり、今でも根強い人気があります。

しかし、今回紹介するのは、カール・ベームが指揮したものです。

ベームとウィーンフィルは1978年5月にムジークフェラインザールで「新世界より」を録音しています。

ベームの「新世界より」の録音は珍しいなと思ったら、タワーレコードの説明によると、唯一のセッション録音だそうです。

「新世界より」はベーム唯一のこの曲のセッション録音。最晩年のベームの作風が表出された枯淡な演奏と捉えられがちですが、重厚というよりむしろ、ウィーン・フィルの美しい音色を最大限に活かしながら、細部にまで配慮された稀に見る「新世界」です。

タワーレコード, カール・ベームのドヴォルザーク: 交響曲第9番《新世界より》/シューマン: 交響曲第4番の説明より

私は2015年6月にリリースされた「カール・ベーム後期レコーディング集」のCDボックスの1枚を聴いていますが、2019年1月にはタワーレコード限定でSACDハイブリッドでの高音質CDもリリースされています。後期レコーディングズでも音質は気にならないですが、より高音質で聴く選択肢もあるということですね。

ただ、もうすぐ(2021年10月中旬)「カール・ベーム ドイツ・グラモフォン管弦楽曲録音全集」が出ます。こちらはCD 67枚のボックスでボリューミーですが、ベームが指揮したレコーディングをまとめて聴きたいならそちらを待っても良いと思います。

さて、ベームの「新世界より」はどんな感じなんだろうと思って聴き始めていると、意外な展開が。

第1楽章は冒頭から素朴な旋律。ヴィオラ、チェロ、コントラバスで奏でられる切ない旋律にクラリネットとファゴットが優しく重なります。

そうか、牧歌的な演奏で行くのかなと思った矢先、ヴァイオリンが豹変するように厳しい表情でレーミ♭ラと激しく演奏します。荒々しくなって一旦は静まりますが、また熱を帯びていき、Allegro molto に移行してどんどんヒートアップしていくのです。

「これ、ベームの演奏?カラヤンのと間違った聴いているのか」と思ってトラックリストを確認しますが、やはりベームの指揮のもの。

ベームにしては意外というか、ゴツゴツしていてかなり武骨なのです。ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」であれほど滑らかさに演奏していたベームとウィーンフィルが、ここでは剥き出しの原石のような触感で演奏しています。ウィーンフィルにしては金管がけたたましいですし、セッション録音としては唯一のベームの「新世界より」はなかなか意外で冒険的な演奏。

吠えるような第1楽章を終えて、ベームはドヴォルザークが苦手だったのかなという感想を抱いたまま第2楽章へ。ここで印象が一転します。クラリネットとファゴット、金管がまるでためらうかのような空気を生み出す中、イングリッシュ・ホルンが慈愛に満ちた旋律を奏でます。ウィーンフィルの美音が活かされています。ベームの「新世界より」の聴きどころはこの楽章にありますね。

そして第3楽章ではまた1楽章の感じに戻るかのように序奏を奏でるとハキハキとしてヒートアップして音楽が流れていきます。客観的なスタイルが持ち味の晩年のベームにしては熱い演奏です。

第4楽章はテンポこそ中庸ですが、威風堂々としています。ベームらしいなと思ったのは休符。モーツァルトを演奏するときと同じように、休符記号はきっちり休ませています。アドレナリンが出て前へと流れていきやすい楽章ですが、キビキビとしたアーティキュレーションです。

カール・ベーム唯一の「新世界より」のセッション録音。意外性に富んだ演奏で、一度聴くと印象に残ります。特に第2楽章の慈愛さは素晴らしいと思いました。

オススメ度

評価 :3/5。

指揮:カール・ベーム
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1978年5月19, 20日, ウィーン楽友協会・大ホール

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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