- 2018年1月のヤンソンス75歳の祝賀コンサート
- ストラヴィンスキー、フンメル、ベートーヴェンの異色のプログラム
- 緻密なハーモニーと鮮明な映像と音質
マリス・ヤンソンス75歳祝賀コンサート
2018年1月11日にミュンヘンのフィルハーモニー・ガスタイクで行われた演奏会は、マリス・ヤンソンスの75歳祝賀コンサートであった。ヤンソンスは1943年1月14日生まれなので、このコンサートの数日後に75歳を迎えている。
このときの演奏プログラムは以下のとおり。
- ストラヴィンスキー 3楽章の交響曲
- フンメル トランペット協奏曲 ホ長調
トランペット独奏はマルティン・アンゲラー - ベートーヴェン ミサ曲 ハ長調 Op.86
作曲者の生まれ年で行ったら時代を遡っている順番だが、最初の曲はストラヴィンスキーと言ってもシンプルなオーケストラ編成の交響曲だし、続くフンメルのトランペット協奏曲も古典派らしい素朴さがあって、そこからミサ曲で荘厳で締まるという面白いプログラムである。ただし、作曲年で言ったらフンメルのトランペット協奏曲が1803年で、ベートーヴェンのミサ曲ハ長調が1807年なので、フンメルの作品のほうが古い。
マリス・ヤンソンスはバイエルン放送響の首席指揮者に就任して15年が経つが、ヤンソンスとのコンビによる演奏はますます熟成されていっている印象を受ける。
ストラヴィンスキーの3楽章の交響曲
ストラヴィンスキーにしては古典風の作品のこの交響曲。バッハを思わせるようなシンプルな作品なのだが、響きは従来の調性にはない近代的なものを持っている。
マリス・ヤンソンスは目の周りにゴーグルを押し当てたような跡があり、体調もあまり良くは無さそうだが、演奏に入るとそれを忘れさせるような引き締まった顔付きになる。バイエルン放送響のアンサンブルは本当に緻密で、ピアノ奏者もスタッカートの効いてキレのある演奏。ロシアっぽい凄みとも違うが、達人たちの技を聴いている気分だ。
フンメルのトランペット協奏曲
続くフンメルのトランペット協奏曲では、マルティン・アンゲラーが独奏を務めた。意外だったのは楽譜を見て演奏していたこと。協奏曲はピアノにせよ、ヴァイオリンにせよ、チェロにせよ、暗譜で行われるほうが断然多いのだが、アンゲラーは譜面を見ながら演奏していた。フンメルの作品はそこまで暗譜が難しくないのではという素人感覚だが、慎重なのだろうか。
作品は古典派ならではという感じ。シンプルで素朴な音楽の構成にトランペットが温かみのある味を出していた。
ベートーヴェンのミサ曲ハ長調
そして目玉のベートーヴェンのミサ曲。実は私はこのBlu-rayを事前予約した際に、ミサ・ソレムニス(Op.123)のほうだと勘違いして購入してしまったのだが、聴いてみて「あれ?」と思ってしまった。
ミサはミサでもそっちのミサだったか…
ただ、結果としてはこのOp.86のハ長調のミサ曲のほうが、構成もシンプルで、前の2曲との相性も考えるとこの日のプログラムにピッタリだと思った。
バイエルン放送響の演奏も隙がないというか、緻密なアンサンブルで完璧に演奏していた。歌手陣や合唱団も良かった。
演奏を終えて温かい拍手に迎えられたが、マリス・ヤンソンスはすぐには客席のほうを振り返らずに、まずはソロの歌手陣と握手して、次に見事な演奏を聴かせてくれたオーケストラのメンバーに起立してもらい、そしてオーケストラ全員と合唱団に「さぁ立って」と合図してからようやく客席を振り返った。ただ、長いミサ曲で集中したためか、ヤンソンスの表情を見るとだいぶお疲れな様子。
まとめ
マリス・ヤンソンスの75歳の祝賀コンサートだったようだが、特に花束の贈呈とかはなく、通常の定期公演としてのコンサートだった。3曲とも「ブラボー」が出るような盛り上がる曲ではないが、ヤンソンスとバイエルン放送響の職人技をまざまざと感じさせてくれる演奏会であった。
オススメ度
トランペット: マルティン・アンゲラー (フンメル)
ソプラノ: ゲニア・キューマイアー (ベートーヴェン)
メゾ・ソプラノ: ゲルヒルト・ロンベルガー (ベートーヴェン)
テノール: マキシミリアン・シュミット (ベートーヴェン)
バス・バリトン: ルカ・ピサローニ (ベートーヴェン)
バイエルン放送合唱団 (ベートーヴェン)
合唱指揮: ハワード・アーマン (ベートーヴェン)
指揮:マリス・ヤンソンス
バイエルン放送交響楽団
録音:2018年1月11日, フィルハーモニー・ガスタイク(ライヴ)
スポンサーリンク
【タワレコ】ベートーヴェン: ミサ曲 ハ長調、ストラヴィンスキー: 3楽章の交響曲、フンメル: トランペット協奏曲(Blu-ray)試聴
特に無し。
受賞
特に無し。
コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?