ベートーヴェン交響曲全集 ヨッフム/ベルリンフィル/バイエルン放送響

オイゲン・ヨッフム/ベルリンフィル、バイエルン放送響 ベートーヴェン交響曲全集
オイゲン・ヨッフム/ベルリンフィル、バイエルン放送響 ベートーヴェン交響曲全集
オイゲン・ヨッフム/ベルリンフィル、バイエルン放送響 ベートーヴェン交響曲全集
  • ヨッフムがベルリンフィルとバイエルン放送響を振り分けたベートーヴェンの交響曲全集
  • 伸びやかで、力強く、これぞ「ベートーヴェン」
  • 古き良きベルリンフィルの響きと、設立間もないバイエルン放送響の若さ

オイゲン・ヨッフムは、ベートーヴェンの交響曲全集を3回完成させている。1回目は1952年から1961年にかけて、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とバイエルン放送交響楽団を振り分けたドイツ・グラモフォンでのレコーディング。2回目は1967年から1969年にロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮したフィリップスでのレコーディング。そして3回目は1976年から1979年にかけてロンドン交響楽団とEMIレーベルにレコーディングしたもの。

今回紹介するのは1回目のもので、バイエルン放送響が第1番, 第5番, 第9番、残りをベルリンフィルが演奏するという豪華な組合せ。私は2016年9月にリリースされた「Eugen Jochum – Complete Recordings On Deutsche Grammophon Vol.1 – Orchestral Works」というCD42枚組のボックス・セットで聴いたのだが、今や廃盤になってしまった。どうもこういうCDボックスは枚数の割にお得なのでつい買ってしまうのだが、正直どれもあまり聴いていない。やっぱり1枚1枚買って聴いたほうが、大事に聴くのだと思う。ほとんどのCDボックスが買って最初何枚か聴いた後、そのまま収納棚の奥のほうに追いやられてしまっている。今回は年末が近づいてきたので、オイゲン・ヨッフムの第九はどんな演奏だったのだろう、と興味を持って再び聴いてみることに。

録音自体は古いのだが、この時期の良きベルリンフィルの響きや、設立間もないバイエルン放送響の若さを感じる。オススメは伸びがありフレッシュな第1番、重厚で引き締まった第7番。

交響曲第1番はバイエルン放送響との1959年4月の録音。ベルリンフィルに比べると軽やかさや透明感があるバイエルン放送響がこのフレッシュな交響曲との演奏で選ばれたのも合点がいく。透き通ったハーモニーでベートーヴェンの第1交響曲を舞い上がるかのように演奏していく。

逆にこの交響曲第2番はベルリンフィルとの演奏で、1958年1月の録音。冒頭の和音のトゥッティで重厚感があるのですぐに分かる。交響曲第1番と同様にこちらもバイエルン放送響が演奏したほうが良かった気はするが、ベルリンフィルになったことで非常にシンフォニックになっている。

勇ましい交響曲第3番「英雄」は期待を裏切らない。重厚でとにかくベルリンフィルが鳴りまくっている。このヨッフムの録音は1954年のものだが、1961年にカール・ベームがやはりベルリンフィルを指揮して録音した「英雄」とオーケストラの状態が同じだ。これだよ、ベルリンフィルの重厚さは。1970年代以降になってくるとヘルベルト・フォン・カラヤンとの時代でどんどんスマートさや機能性が磨かれていくが、その分重厚さは失われてしまった感がある。このヨッフムとベルリンフィルの「英雄」にはベルリンフィルの良き時代の響きが残されている。音質は悪いがしかたない。

第2楽章「葬送行進曲」では、テンポをぐっと落として、主題を奏でるオーボエが際立っている。第4楽章では音質がものすごく悪くて残念だが、しかしクライマックスへと向かって大きなうねりを持って進む推進力が見事。

交響曲第4番は1961年1月にベルリンフィルと録音したもので、この全集の最後を飾ったもの。ヨッフムとベルリンフィルは、この交響曲を奇数番号の交響曲のように壮大なスケールで演奏していく。第2楽章のアダージョは穏やかで癒やされる。第3楽章はゆったりとしたテンポで祝典的な雰囲気がする。第4楽章は明るく駆けずり回る弦に、重厚なトゥッティが交互に答えていくようでメリハリがある。

「運命」は1959年4月にバイエルン放送響と録音したもの。ライナーノーツを見なくても、スッキリとした響きでバイエルン放送響ということが分かる。ベルリンフィルだったらもっと重たい始まり方だっただろう。第1楽章ではゆっくりとしたテンポで丁寧に「運命」の主題を演奏していく。第4楽章は細かい弦のトレモロが奏でられる上で金管の勇ましいファンファーレが演奏され、音楽が立体的に聴こえる。ここでもタタタタン、の動機が丁寧に演奏され、全楽章が有機的につながっている。

「田園」交響曲は1954年11月にベルリンフィルと演奏されたもの。穏やかな音楽だけに、音質がとても大事な作品だが、残念ながらこのヨッフム盤の音質はかなり悪い。全集の中でもワーストのような気がする。時代的にしかたないが、ゆっくりとしたテンポで奏でられる第1楽章の第1主題がこもって聴こえる。ただ、そこで聴くのを終えてしまうとヨッフムの意図が分からなくなってしまう。こもった音の向こう側を聴くように努めてみる。

ヨッフムとベルリンフィルはこの交響曲をとてもシンフォニックに演奏している。標題にとらわれずに、純粋な交響作品として見なしてベルリンフィルを鳴らしきっている感じだ。例えば第1楽章は「田舎に到着したときの愉快な感情の目覚め」という標題があるが、ヨッフムとベルリンフィルのこの演奏ではまるで凱旋して故郷に戻ってきたかのような勇ましさのように聴こえる。田舎ののどかな音楽ではなく、力強いファンファーレのようだ。

第3楽章までがこれほど雄大だと嵐が訪れる第4楽章はすごいことになるだろうなと、覚悟を持って聴き進めると、ものすごい暴風雨がやって来た気分だ。ベルリンフィルの重厚さで大きなうねりを作って聴くものを飲み込んでしまう。金管とティンパニによる稲妻はものすごく強烈だ。

ようやく第5楽章で救いが来た。クラリネットの音色が癒やされる。ホルンも音質が悪くて音がこもってしまっているが、のどかだ。そしてオーケストラ一丸になってのどかな音楽を奏でた後、力強くなっていきクライマックスを作っていく。

交響曲第7番はベルリンフィルと1952年11月の録音で、全集の最初を飾ったものである。冒頭のつんざくような切れ味鋭い響きで、「あぁこれはベルリンフィルだな」と分かる。とにかく覇気があって、グイグイと進んで行く。ヨッフムとともにベルリンフィルが巨大な波を作っている。音質こそ悪いが、フルートの可憐な第1主題の後、オーケストラがトゥッティでものすごい力強い音楽で飲み込んでしまうのには驚いた。圧巻だ。

第2楽章も几帳面なほどイン・テンポで静かに進んで行くのが不気味に感じる。そこに弦楽器で奏でられる主題がふっと陽の光を当てるかのように、優しく彩りを添える。重厚感だけでない、この魅力。すごいな、ヨッフム。オブリガートの変装に入ると音の厚みが膨らみ、クライマックスを迎える。

第4楽章でもまた切れ味鋭いトゥッティで始まる。テンポは速すぎず、遅すぎず、中庸なのだが、音にキレがあるので力強く聴こえる。

1958年4月から5月に録音された、ヨッフムとベルリンフィルのベートーヴェンの交響曲第8番。「田園」のように穏やかなのかなと期待して聴いてみると、ビビッドで、力強い演奏で驚いた。不思議とこの交響曲だけ音質がマシなので、各楽器の音まではっきりと聞こえる。第2楽章と第3楽章で少し落ち着いてホッとするのだが、弦がとにかく元気が良い。第4楽章でも木管がまろやかなのに弦が切れ味鋭くて、そのギャップが面白い。

音質は決して良くないのだが、バイエルン放送響なのにものすごい重厚感があり、推進力がある。初代首席指揮者のヨッフムによって鍛え上げられたため、設立してすぐのオーケストラとは思えないほど、レベルが高い。

確かに録音が古く、音質は良くないのだが、どの曲も、伸びやかで、力強く、これぞ「ベートーヴェン」というべき演奏ばかりである。カラヤン時代以降のベルリンフィルでは聞けないこの重厚感。貴重だ。

オススメ度

評価 :3/5。

ソプラノ:クララ・エバース
コントラルト:ゲルトルーデ・ピッツィンガー
テノール:ヴァルター・ルートヴィヒ
バス:フランツ・フェルディナンド
指揮:オイゲン・ヨッフム
バイエルン放送交響楽団(第1番, 第5番, 第9番, 序曲「フィデリオ」,「アテネの廃墟」, 「プロメテウスの創造」)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(第2番, 第4番, 第3番, 第6番, 第7番, 第8番, 序曲「レオノーレ」第2番)
録音:
1959年4月3, 5日(第1番), ヘラクレス・ザール
1958年1月27-31日(第2番), ベルリン・イエス・キリスト教会
1954年2月1-7日(第3番), ベルリン・イエス・キリスト教会
1961年1月26-31日(第4番), ベルリン・イエス・キリスト教会
1959年4月25-27日(第5番), ヘラクレス・ザール
1954年11月9-16日(第6番), ベルリン・イエス・キリスト教会
1952年11月12-14日(第7番), ベルリン・イエス・キリスト教会
1958年4月30日-5月5日(第8番), ベルリン・イエス・キリスト教会
1952年11月24日-12月2日(第9番), ヒンメルファールトゥス教会
1958年10月3日(序曲「アテネの廃墟」, 序曲「プロメテウスの創造」), ヘラクレス・ザール
1959年4月27日(序曲「フィデリオ」), ヘラクレス・ザール
1961年1月25-26日(序曲「レオノーレ」第2番), ベルリン・イエス・キリスト教会

【タワレコ】The Symphonies – Beethoven, Brahms, Bruckner

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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