
実演の好評の割に録音が少ないナガノとハンブルクフィル
今日紹介するのは6月にリリースされたばかりの新譜。普段はApple Music の配信でニューリリースを聴いていますが、本当に良いなと思ったものはCD でも買うようにしています。記事で紹介するのはそうした自腹で払っているCD や演奏会のものだけにするのがモットーです。
ケント・ナガノは2015年からハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団 (ハンブルク国立フィルハーモニー管弦楽団とも言われます)の首席指揮者を務めています。ハンブルク・フィルやバイエルン州立歌劇場などの活躍が評価され、2025年4月に旭日中綬章を受賞したナガノ氏 (外部記事)。あいにくナガノとハンブルク・フィルのコンビでの来日公演は2019年秋にしか実現されていないようで、2025年に退任する予定なのが心惜しいところ。実演での評価が高いのに録音が少ないコンビですが、ようやくBIS レーベルからブラームスのアルバムがリリースされました。
BIS レーベルといえば、以前紹介したトーマス・ダウスゴー&ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団のブルックナーの録音(第6番、第3番)もBIS から出ていましたね。玄人好みの録音をリリースしてくれますね。
2019年1月に録音された第4番と2023年4月の第3番で、どちらもハンブルクにあるエルプフィルハーモニー・大ホールでのライヴ録音。
細かな陰影
私もApple Music で聴いてすぐに感じたのですが、ナガノとハンブルク・フィルのこのブラームスは細かな陰影が見事です。ブラームスの交響曲は録音でも生演奏でも聴き飽きたと思っていた (失礼ながら)のですが、この演奏ではまるで大きな波をよく観察すると小さなさざ波が寄せ集まっているように、聴き慣れたブラームスの旋律に細やかな陰影が付いていて、今までに味わったことのない曲の表情を見せます。今まで直線だと思っていたのが、実は細かなフラクタルの形が積み重なっていたのだと気付くかのような、新しい発見。重厚さとはまた違う、温かくて透明感のある楽器の響きは、空気をも包み込むようなBIS レーベルの録音によってしっかりと再現できています。
呼吸するかのようにゆったりと始まった第4番は、第1楽章のコーダに入ると加速しまるでヴァーグナーのように輝かしい音色で頂点を迎えます。第2楽章ではナガノ氏の歌う声も聴こえます。
夏にブラームスを聴くのは暑苦しいかもしれませんが、この新譜は聴く価値があると思いますので、まだの方はぜひ。
オススメ度
指揮:ケント・ナガノ
ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2019年1月 (第4番), 2023年4月 (第3番), エルプフィルハーモニー・ハンブルク 大ホール (ライヴ)
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
新譜のため未定。
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