ショパンコンクールの完全覇者、ラファウ・ブレハッチのDGデビュー盤 ショパン前奏曲全集(2007年)

ショパン 前奏曲集 ラファウ・ブレハッチ(2007年)

このアルバムの3つのポイント

ショパン 前奏曲集 ラファウ・ブレハッチ(2007年)
ショパン 前奏曲集 ラファウ・ブレハッチ(2007年)
  • 2005年ショパンコンクールの完全覇者のDGデビュー盤
  • 即興的で詩情豊か
  • フレッシュながら感じられる気品

2005年のショパンコンクール完全覇者

2005年のショパンコンクールは、ポーランド出身のピアニスト、ラファウ・ブレハッチが優勝しました。副賞であるマズルカ賞、ポロネーズ賞、コンチェルト賞を全て独占し、完全覇者という快挙を初めて成し遂げました。同じポーランド出身の世界的なピアニスト、クリスティアン・ツィメルマンもショパンコンクールに優勝してこちらの記事に紹介したようにショパンのピアノ作品を得意としていましたが、ブレハッチはそのツィメルマンからも絶賛されたのです。

私もショパンコンクール優勝後の来日リサイタルを何度か聴きに行っていますが、音楽に対する謙虚な姿勢や音楽を純粋に楽しんでいる姿勢がとても好印象でした。特にブレハッチがリサイタルで演奏した幻想ポロネーズは、今まで聴いたどの演奏よりも素晴らしく、作品の奥深さに引き込まれました。今でも新鮮に残っています。当時まだ20代という若さったのにも関わらず、こんなに詩情豊かな演奏ができるのだなと驚いたものでした。

ドイツ・グラモフォンと専属契約するも、マイペースで

ブレハッチはショパンコンクール優勝後にドイツ・グラモフォンレーベルと専属契約を結んで、着実にレコーディングもリリースしています。ただ、2年にアルバム1枚ぐらいのゆっくりとしたペースで、商業的に消費されずにマイペースで音楽活動を進められているように思えます。

大学で哲学の博士を取得中

Wikipedia(英語版)の情報によると、現在は母国ポーランドのトルンにあるニコラウス・コペルニクス大学にて哲学の博士を取得しているようです。マウリツィオ・ポリーニもショパンコンクールに優勝してから約10年間、表舞台から姿を消してじっくりと勉強をしたことでその後の大活躍がありました。ヴィルトゥオーソとしてコンサート活動に追われそうな若いときにこそ、根をしっかり張っておくのは重要でしょう。

さて、そんな理由もあって、ブレハッチのレコーディングはそれほど多くなく、むしろニューリリースよりも再発売の復刻のほうが多い印象ですが、彼のドイツ・グラモフォンのデビュー盤となったショパンの前奏曲集を改めて聴いてみたいと思います。

収録されているのは全てショパンの作品で、2007年7月の録音です。

  • 24の前奏曲 Op.28
  • 前奏曲 変イ長調 (遺作)
  • 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
  • 2つの夜想曲第17番、第18番 Op.62
  • マズルカ第30番 ト長調 Op.50-1 (日本盤のみのボーナストラック)

来日リサイタルでも演奏していた前奏曲

ショパンの前奏曲については、ブレハッチがショパンコンクール優勝後からレコーディングに向けて演奏を進めていて、2006年の来日リサイタルで前半の12曲、2007年の来日リサイタルで後半の12曲を披露していました。私も東京・初台の東京オペラシティのコンサートホールで聴きに行っています。

即興的なふわっとした演奏や大胆なメリハリ

24の前奏曲では、第1番から感じ取れるように、即興的な印象です。かなり練習に練習を重ねているはずなのに、まるでアドリブで弾いているかのように即興的に聴こえます。しかも、ふわっとして弾いたかと思うと、テンポルバートを掛けて、猫が駆け回るみたいに自由に弾いています。

第7番ではかなりテンポをゆっくりにしてしんみりとたっぷりと弾いている反面、続く第8番では嵐が襲い掛かるかのように素早いテンポで劇的です。

第12番では息もつかぬような速さと力強い演奏で、リズミカルにカッコ良い演奏。そして第13番はゆっくりと繊細なメロディを聴かせます。第14番は一転して暗黒の世界で、低めの暗い音が不気味に鳴り響きます。このときのタッチの違いは絶妙です。

最後を締めくくる第24番は、左手で情熱的な伴奏を行いながら、右手で即興的にメロディを奏でます。音質が良いので硬めのタッチにしているところもよく分かります。最後の最低音のレの3発の音まで、圧巻の演奏ですね。

カップリングの2つの夜想曲でも、第2番が特に注目。冒頭と間奏では詩情たっぷりに演奏したかと思うと、アジタートで曲想が変わるとテンポ・ルバートを掛けて、まるで別人が演奏しているかのようにドラマティックになります。そしてまた間奏、コーダへと静かに音が消えていくのです。

「さり気なく、すごい」というのがブレハッチのキャッチフレーズのようですが、即興的で、詩情豊かで、気品もある、そんな新しいショパン像を打ち出しています。何よりもブレハッチは音楽が好きでたまらないという感じで演奏するのが聴き手にも伝わってきますね。また来日リサイタルでそんな演奏を聴いてみたいです。

オススメ度

評価 :4/5。

ピアノ:ラファウ・ブレハッチ
録音:2007年7月, フリードリッヒ・エバート・ホール

iTunes及び上記のタワーレコードのリンクから試聴可能。

ドイツECHO Klassik 2008の年間器楽レコーディング(Instrumentalist/Instrumentalistin des Jahres)を受賞。


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