オスロフィル時代のヤンソンス
ラトヴィア出身の名指揮者マリス・ヤンソンス (1943-2019年)はオスロ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を1979年から2002年までの23年間務め、ノルウェーのこのオーケストラを世界トップクラスのレベルへと鍛え上げました。その間にヤンソンス自体の評価も上がり、後にバイエルン放送交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団という名門オーケストラの首席指揮者を兼任することになります。
ヤンソンスはオーケストラの真価を問うため、オスロフィルとチャイコフスキーの交響曲第5番を自費で録音し、それを聴いたシャンドス・レーベルが感動し、チャイコフスキーの交響曲全集への企画へと進みました (1984-86年)。その後ヤンソンスとオスロフィルはEMI レーベル (現ワーナー)に数多くの録音を遺しています。こちらの記事で紹介したワーナーのマリス・ヤンソンス/オスロ・フィル・レコーディングズ (2020年10月リリース)にまとまっていて、CD21枚、DVD 5枚という大ボリューム。
ヤンソンスにしては珍しいドヴォルザークの7番
その中で聴けていなかったドヴォルザークの交響曲第7番を聴いて猛烈に感動しています。ヤンソンスはその後ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送響とコンセルトヘボウ管で、第8番や第9番はライヴ録音したものがありましたが、第7番は今のところ無いのです。
1992年1月にオスロフィルの本拠地コンセルトフス (Konserthus)でセッション録音されたもので、第7番はシャープなテンポでオーケストラを鳴らし切っています。第1楽章の第16小節 (トラック1の32秒あたり)のヴィオラとチェロのmarcato (はっきりと)がくっきりと浮かび、そのままヴィオラが主旋律を奏で休符の後に第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンに引き継がれる切ない調べ。33小節からのcon forzaでは弦が推進力を上げてフォルテッシモへと突き進みます。フルートとオーボエの美しい旋律から続く副主題 (第73小節)では「音の魔術師」とも言われるヤンソンスの妙技が光ります。トラック1の4:09からの第123小節でフォルテッシモの頂点を迎えますが、ここでヤンソンスはトロンボーンで副主題の旋律をはっきりと現しています。第1楽章コーダでは燃え上がるような熱気と素早いテンポでも乱れないオスロフィルが見事。そして再び現れる第1主題はまるで輪廻のよう。安らぎを与えてくれる第2楽章、繊細な第3楽章、そして堂々とした第4楽章も聴き応え十分です。今も変わらない清涼感のある響きがオスロらしいですね。
交響曲第8番は後のベルリンフィル、バイエルン放送響とも名演をおこなってきたヤンソンスの得意な曲。この録音では引き締まったストレートな表現で、オーケストラとの息の合った演奏を聴かせてくれます。第4楽章のゆったりとしたテンポで伸びる旋律が実に美しいです。
オススメ度
指揮:マリス・ヤンソンス
オスロ・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1992年1月, コンセルトフス
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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