
英国籍を持つショルティ唯一の『惑星』録音
真夏日が続くと、聴く音楽も重厚な交響曲から、ピアノや印象派の曲が多くなってきます。私はこれを「音楽の衣替え」と呼んでいるのですが、皆さんは暑い日にどんな音楽を聴いているでしょうか。ドビュッシーやラヴェルも良いですが、最近よく聴くのはエルガーとホルスト。
今日紹介するのは、サー・ゲオルグ・ショルティ指揮ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団による『惑星』。ハンガリー出身ですが英国に帰化して「サー」の称号を得たショルティ。英国の作曲家エドワード・エルガーのエニグマ変奏曲はシカゴ交響楽団とウィーン・フィルハーモニー管弦楽団それぞれで録音していましたが、英国の作曲家グスターヴ・ホルストの組曲『惑星』の録音は一度のみ。首席指揮者を務めていたロンドンフィルとのものだけです。
炎が燃え上がる火星
火星、金星、水星、木星、土星、天王星、海王星の7曲から構成される組曲ですが、ショルティとロンドンフィルの演奏で際立っているのは第1曲の『火星〜戦争の神』。冒頭では5弦がコル・レーニョ (col legno)、つまり弓の棹で弦を叩く演奏法が指示されていますが、ロンドンフィルはこれをはち切れんばかりに荒々しく弾き、ここが戦いの場であることを表現しています。そしてファゴットとホルンによる第1主題が遠くから聴こえて力強さが増し、第2主題は金管がパワフルに。この勇ましさは第3主題のチューバとトランペットへと引き継がれます。オペラを得意としたショルティだけに、音だけで炎が燃え上がる火星の光景が浮かぶようなショルティ・ワールド。この『火星』だけでも繰り返し聴いてしまいます。
続く『金星』では一転して穏やかでまばゆい世界が広がります。うまいなぁ。『水星』ではリズミカルで引き締まったユニゾンがショルティらしいです。『木星』は宇宙に響くかのような壮大さですし、『土星』では神秘的。『天王星』では賑やかな中にファゴットが良い味を出しています。そしてさらに深い宇宙へと進み、『海王星』はまるで光がゆらいでるかのような雰囲気を表現しています。
ショルティ唯一の『惑星』録音。夏の暑さを忘れさせる、深遠の宇宙へといざなってくれます。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ロンドン・フィルハーモニー合唱団 (海王星)
録音:1978年2月, キングズウェイ・ホール
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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