このアルバムの3つのポイント
- 新旧あるアシュケナージの『展覧会の絵』ピアノ版の旧録
- 力強く土臭さもあるピアノ
- ビドロでの迫力
1982年の新録音もあるアシュケナージの『展覧会の絵』
ピアニストで指揮者のヴラディーミル・アシュケナージはモデスト・ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』をピアノ原曲版もオーケストラ編曲版もどちらも演奏、録音してきました。
ピアノ原曲版は2回録音していて、旧録音が1967年6月、新録音が1982年6月に、どちらもイギリス、ロンドンにあるキングズウェイ・ホールでのレコーディングでした。
新録音はこちらの記事で紹介しましたが、カラフルでバランス感覚に優れたアシュケナージのいつものピアノの特徴とは少し違って、ロシアらしい凄みがあった演奏。
新録音のほうはずっと聴いていたのですが、旧録音のほうはこちらの記事で紹介した生誕85周年を記念して2022年7月にリリースされた、デッカ・レーベルでのヴラディーミル・アシュケナージ・ソロ録音全集でようやく聴くことができました。
土臭い旧録音
カップリングには、ズービン・メータ指揮ロサンゼルス・フィルハーモニックのラヴェル編曲の管弦楽版の演奏もありますが、ここではアシュケナージのピアノ版の演奏だけ紹介します。
1960年代のアナログ録音なので少しこもっていますが、立体的に聴こえるデッカ・サウンド。第1曲のプロムナードからハツラツとしてアシュケナージのピアノの粒が立っています。チャイコフスキーの洗練された音楽とは対照的に、ムソルグスキーの音楽には土臭さもあるのですが、アシュケナージのこの演奏はその特徴がよく現れています。続く『小人 (グノム)』は、新録ではグロテスクな表現でしたが、この旧録音ではショパンの『雨だれ』のようにしっとりとしています。『古城』も内省的にどこか儚さも感じさせる演奏。
『テュイルリーの庭』ではアシュケナージのシャープなテクニックで軽やかに描かれます。聴きどころは『ビドロ (牛車)』。力強く粒の大きな打鍵で荒々しさすら感じさせる演奏。『リモージュの市場』のクライマックスではカラフルに重なり合う音色が市場の賑わいを表しているようです。切れ目なく続く『カタコンベ』では強靭さと悟りのような優しさ。
終曲『キエフ (キーウ)の大門』では壮大なフィナーレを迎えますが、粒の大きなタッチでペダルも新録音に比べると程々なので、ノン・レガートで打楽器的にも聴こえます。
まとめ
アシュケナージの『展覧会の絵』の新旧の録音でどちらが良いかと言われたらデジタル録音で音質も良い1982年の新録のほうだと思いますが、この旧録にはムソルグスキーらしさが強く出ている気がします。
オススメ度
ピアノ:ヴラディーミル・アシュケナージ
録音:1967年6月, キングズウェイ・ホール
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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