このアルバムの3つのポイント

R.シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」他 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1975年)
R.シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」他 サー・ゲオルグ・ショルティ/シカゴ交響楽団(1975年)
  • 黄金時代のショルティ×シカゴ響によるR.シュトラウスの交響詩
  • オーケストラを鳴らしきったスケールと官能美
  • 日本のレコード・アカデミー賞と米国グラミー賞受賞!

さて、今回はリヒャルト・シュトラウスの作品を紹介したいと思います。

新年のニューイヤー・コンサートでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がヨハン・シュトラウスやヨーゼフ・シュトラウスなどのワルツやポルカを演奏していましたが、リヒャルトのほうのシュトラウスはこのシュトラウス家とは血縁関係がありません。シュトラウスだけだとどの作曲家か分からないので、R.シュトラウスと略される事が多いです。

R.シュトラウスはリヒャルト・ヴァーグナーの影響を強く受けていて、アドレナリン全開のサウンドと官能的な美しさに一度ハマるとしばらく他を聴けなくなるような中毒性があります。1864年生まれのR.シュトラウスは、1860年のグスタフ・マーラーと同時期に活躍し、ともに指揮者としても有名でした。マーラーもそうでしたが、名指揮者が作曲をするとオーケストラの鳴らし方は断然上手いですよね。R.シュトラウスの作品も壮大できらびやかさがあり、各楽器のパートもよく考えられているなと感じます。

R.シュトラウスの作品を得意とした指揮者は多数いますが、私はヘルベルト・フォン・カラヤンサー・ゲオルグ・ショルティ、そしてマリス・ヤンソンスの3人をよく聴いています。このサイトの記事では様々な演奏家を紹介するように意識しているのですが、順番的にそろそろショルティの演奏を紹介したいと思っていたので、ショルティとシカゴ響によるR.シュトラウスのアルバムについて書きます。

ショルティはR.シュトラウスを得意としていて、管弦楽曲、オペラのレコーディングも充実しています。今回紹介するアルバムは交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」Op.30交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」Op.28交響詩「ドン・ファン」Op.20が収録されているもの。私は2007年にリリースされた20世紀の巨匠シリーズ「サー・ゲオルグ・ショルティの芸術 Vol.1」のアルバムで聴いています。CDのトラックリストには「ドン・ファン」は1973年5月のレコーディングと書いてあるのですが、2020年7月にタワーレコード限定でリリースされたアルバムでは、1972年5月となっているので、こちらの情報を下記にも記しています。

「ツァラトゥストラ」と「ティル・オイレンシュピーゲル」はともに1975年5月にシカゴのメディナ・テンプルでのレコーディングです。こちらは日本のレコード・アカデミー賞と米国グラミー賞をW受賞する快挙。ちなみにこの年のレコード・アカデミー賞は「大賞」はありませんでしたが、あの名盤のカルロ・マリア・ジュリーニ指揮シカゴ響のマーラーの交響曲第9番が交響曲部門、そしてこのショルティのツァラトゥストラが管弦楽曲部門を受賞し、シカゴ響が上位を占めました。まさにシカゴ響の黄金時代だったと言えるでしょう。

交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」または「ツァラトゥストラはこう語った」はフリードリヒ・ニーチェの同名の書物にインスピレーションされて作曲されたもので、物語の情景が音楽で描かれています。

第1曲の「日の出」があまりにも有名で映画「2001年宇宙の旅」でサウンドトラックとして使われましたし、最近ではテレビ「ナニコレ珍百景」のBGMとして使われています。ただ、私が好きなのは第2曲の「現世に背を向ける人々について」。このコラールの美しさはR.シュトラウスならではです。

ショルティとシカゴ響のこの演奏では、「日の出」は最初薄暗い中で何かがうごめくように、遠くからティンパニの弱音が聴こえてきて、日が出るところではトランペットが鮮やかに奏でます。トゥッティではオーケストラの力強さが見事です。第2曲での弦の美しさもシカゴ響の特徴。憂いを感じさせる低弦の音色も素晴らしいですが、それをさらに昇華させるかのような高弦の儚い美しさには涙が出そうになります。

第3曲の「大いなる憧れについて」ではハープが加わり、色彩を帯びていきますが、第2曲の美しいコラールが再び登場しつつも別の激しい動機がぶつかるように激しさを増していき、第4曲「喜びと情熱について」へ。 ここではまさにショルティ・ワールド。パッションと冷静なコントロールが絶妙で、シカゴ響との演奏を昇華させていきます。途中を割愛してしまいますが、最後の「夜のさすらい人の歌」まで本当に聴きどころの多い演奏で、30分ほどの演奏時間があっという間に過ぎてしまいます。

ちなみにショルティのツァラトゥストラは1990年代のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのライヴ録音もあるのですがそちらは未聴です。

「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」はティル・オイレンシュピーゲルという人にまつわる昔話をR.シュトラウスが音楽で表現したものです。ショルティとシカゴ響によるレコーディングはツァラトゥストラと同じ時期の録音ですが、こちらは少しゆったりとしたテンポで導入部を演奏し、そして弦のトレモロが細かく刻みながらも進みが加速していき、オーケストラが躍動していきます。ヴィルトゥオーソ・オーケストラのすごさが随所に出ています。

このアルバムでは3曲目に「ドン・ファン」が収録されていますが、録音場所がクラナート・センターということもあり前の2曲に比べると若干録音の質が落ちるかなという印象。最初からボルテージ全開で非常にエネルギッシュな演奏です。ここでもシカゴ響の官能美が感じられますが、前の2つに比べると金管が元気過ぎるところもあります。

黄金時代のショルティとシカゴ響によるR. シュトラウスの交響詩。特にツァラトゥストラは素晴らしく、レコードアカデミー賞とグラミー賞をダブル受賞したのも頷けます。

オススメ度

評価 :5/5。

指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1972年5月9日, クラナート・センター (ドン・ファン)
1975年5月13-15日, シカゴ・メディナ・テンプル (ツァラトゥストラ、ティル)

iTunesで試聴可能。

「ツァラトゥストラ」を含むアルバムが1977年度の日本のレコード・アカデミー賞「管弦楽曲部門」と1976年の米国グラミー賞の「BEST CLASSICAL ORCHESTRAL PERFORMANCE」を受賞。

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コメント数:1

  1. このアルバムのエネルギーとテンションには圧倒されます。朝から血圧上がったと思います。聴きながら、遠い昔の学生時代のホルン吹きの友人のことを思い出しました。どの曲も、すべてのパートに名人技が要求されていて、見事にそれらが融合していました。個人的にはやはり金管の活躍が痛快で気持ちいいです。ショルティ × シカゴ、やっぱり好きです。

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