- カリスマ指揮者カルロス・クライバーのウィーンフィルとのデビュー
- クラシックの王道、ベートーヴェンの第5番と7番
- ぐいぐいとした推進力でウィーンフィルから火花散る響き
鬼才の指揮者、カルロス・クライバー
指揮者カルロス・クライバーは、父エーリッヒ・クライバーも大指揮者であったが、単なる二世指揮者に留まらず持ち前のカリスマ性で稀代の名演を行った。ただ、キャンセル魔であったし、録音嫌いだったため、レコーディングの数は多くはない。ただ、残された録音はそのどれもがその曲の一、二を争う名盤と評されている。
ウィーンフィルとの最初の録音が第5番「運命」
この「運命」は、ウィーンフィルを指揮した最初の録音。当時はまだ無名に近かったカルロス・クライバーが、名門の老舗オーケストラであるウィーンフィルを指揮して演奏する曲が、クラシックの王道であるベートーヴェン、しかも「運命」である。それだけでクライバーの自信のほどがうかがえる。
第1楽章の冒頭から速めのテンポ。「なるほど、こう来るのか」とニヤッとしてしまうのだが、聴いていると不思議な気持ちになる。
「ウィーンフィルがこんなハーモニーを出すのか」
上品な響きが持ち味のウィーンフィルが、ほとばしる感情を丸出しにした炎みたいな演奏を行っているのだ。
前にウィーンフィルとこういう火花散る「運命」を演奏していた指揮者がいたよな、と過去のFC2ブログを探していると、分かった。そうか、ゲオルグ・ショルティの1959年の録音だ。あの録音を聴いたときもウィーンフィルらしからぬ響きを引き出していたことに驚いたものだが、このクライバーの演奏もそれに近い。
ただ、第2楽章や3楽章はいつものウィーンフィルらしく優雅なのだが、切れ目なく始まる第4楽章ではトランペットが音が割れてしまっているぐらいで、またクライバーはウィーンフィルに革新をもたらしている。この推進力とゾクゾクする感じはこの録音ならでは。
カップリングは第7番
第5番「運命」とカップリングされているのが、同じくウィーンフィルと1975年11月と76年1月に録音されたベートーヴェンの交響曲第7番。日本でも「のだめカンタービレ」で人気を博した曲だが、この名曲で音楽評論家が選ぶレコーディングで筆頭に挙げられるのが、このカルロス・クライバーとウィーンフィル盤である。
ここでは「運命」よりは少し落ち着いていて、第1楽章は静かに始まり壮大なファンファーレでもスケールは大きいが音が割れるほどではない。メリハリがはっきりした演奏で、滑らかに美しいフレーズとぐいぐいとドライブして堂々としたフレーズとで対比を際立たせる。クライマックスではキレキレで、そしてテンポを上げてアドレナリン全開の演奏。
第7番は数多くの名演があるが、確かに、このクライバー/ウィーンフィル盤は筆頭に挙がるのも納得。
まとめ
ベートーヴェンの2つの王道の交響曲を火花散るようなウィーンフィルの演奏で聴ける貴重な1枚。
オススメ度
指揮:カルロス・クライバー
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1974年3月-4月(第5番), 1975年11月, 1976年1月(第7番), ウィーン楽友協会・大ホール
スポンサーリンク
試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
第5番のアルバムが1975年の米国グラミー賞「クラシック年間アルバム」と「ベストクラシックパフォーマンス(オーケストラ)」にノミネーション。
コメントはまだありません。この記事の最初のコメントを付けてみませんか?