名指揮者の白鳥の歌
人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残すことを「白鳥の歌」と言います。これは、白鳥が亡くなる直前に美しい声で鳴くから、という言い伝えがあるからですが、クラシック音楽でも演奏家や指揮者が亡くなる前の最後の演奏、レコーディングを「白鳥の歌」と呼ぶことがあります。ここでは名指揮者のラスト・レコーディングを紹介していきたいと思います。往年のクラシック音楽をリードしてきた指揮者たちが、最後にどのようなレコーディングを遺したのか、紹介していきます。
ヘルベルト・フォン・カラヤン 究極のブルックナー(1989年)
20世紀後半を代表する指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤン。膨大な数の録音をおこなったカラヤンですが、最後となった録音は1989年4月にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したブルックナーの交響曲第7番です。同時期にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を辞任し、新たな再出発となる頃ですが、奇しくもこれがカラヤンの遺した最後の録音となってしまいました。「カラヤン美学」と評された美しさの究極を聴くことができます。
クラウディオ・アバド 最後のブルックナー(2013年)
クラウディオ・アバドは晩年のベスト・パートナーであったルツェルン祝祭管弦楽団と、2013年ルツェルン音楽祭でブルックナーの最後の交響曲第9番を演奏しました。このライヴ録音がアバド最後のレコーディングとなりました。ほとばしる情熱は最後までアバドらしさを伝えてくれています。
ベルナルト・ハイティンク 悠久の音楽(2019年)
ベルナルト・ハイティンクは90歳を迎えた2019年に、65年以上にわたる指揮者のキャリアを引退しました。最後のコンサートは2019年9月のルツェルン音楽祭でしたが、その録音がまだリリースされるのか分からないので、現時点で最後の録音としてリリースされている、2019年8月31日のザルツブルク音楽祭での演奏を紹介します。当時70歳のエマニュエル・アックスがピアノ独奏を務めたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、そしてブルックナーの交響曲第7番の曲目でした。これまでのハイティンクのキャリアを回顧するかのような悠久の音楽がありました。
マリス・ヤンソンス 緊張感、儚さ、そして美しさ(2019年)
マリス・ヤンソンスは首席指揮者を務めていたバイエルン放送交響楽団と2019年11月にアメリカ公演をおこなっていました。しかし11月8日のニューヨークのカーネギー・ホールで公演後、ヤンソンスは体調を崩し3週間後に亡くなってしまいます。最後となったコンサートではR.シュトラウスと、ブラームスの作品を演奏しました。ヤンソンスの体調が万全ではないということはニューヨークでも伝えられていたようで、「これが最後かも」という緊張感の中、ヤンソンスとバイエルン放送響は儚くて美しい演奏をおこなっています。
まとめ
名指揮者の最後のレコーディングは、それぞれの晩年の集大成となる研ぎ澄まされた音楽で何年経っても聴く者の心を掴みます。まだまだ名指揮者のラスト・レコーディングを書ききれていませんので、随時更新していきます。
コメント数:1
ザンデルリンクの、内田光子とのモーツアルト、ハイドンバリエーションを前プロにシューマン4番が渋かった。