※2023/06/20 更新:最終号となる2023年7月号の発売を追記
※2023/04/25 更新:日経新聞の続報を追記
※2023/04/03 初稿
70年以上の歴史があるクラシック音楽の専門誌「レコード芸術」
クラシック音楽を聴く方なら必ず知っていると言っても良い雑誌が、『レコード芸術』、略してレコ芸。定期購読されている方も、毎月書店に並ぶを楽しみにしている方も多いでしょう。
私は書店でパラッと読んで、特集が面白そうだったら買う、というスタイルを取っていて、こちらの記事で紹介した2021年10月号の「いぶし銀の名指揮者」特集はかなり面白かったです。ただ、他に「音楽の友」の専門誌や演奏家・作曲家の書籍も買っているので、レコ芸は年に1回買うかぐらいでした。
1952年3月に創刊して、2023年で71年以上の歴史を持つ殿堂的な専門誌ですが、今日は日本中が震撼したニュースが出ました。
レコ芸が2023年7月号で休刊へ
なんと、レコ芸が2023年7月号をもって休刊になることが発表されたのです。
【音楽之友社】『レコード芸術』休刊のお知らせ (2023/04/03)
以前は過激な文章で一刀両断でばっさり切るような個性の強い音楽評論家もいましたが、最近は安心して読める文章が多くて、音楽という聴覚で捉えたものをどう文章に表現すれば伝わるのかを参考にしていました。
ただ、雑誌を取り巻く状況や材料費の高騰でこれ以上の継続は難しいとの判断にいたったようです。
レコード・アカデミー賞とリーダーズチョイスは?
レコード芸術では新譜のレコードに2人でレビューを書き、2人が推薦すると「特選」という扱いになります。さらに年末にこの特選のディスクの中からさらに専門家が複数人で今年のイチオシを挙げ、それがレコード・アカデミー賞となり1月号で発表されるわけです。そして翌月号にはリーダーズチョイスといって、レコ芸の読者が選ぶベスト盤が発表されるのですが、前提となるレコ芸自身が休刊になってしまうと、これらの賞がどうなるのか、現在は分かりません。
レコ芸の最終号は7月号 (6月20日発売)。私も必ず買うつもりです。
日経新聞に続報記事が掲載
※2023/04/25 追記
今日(4月25日)の日経新聞の夕刊に、レコ芸休刊について続報が掲載されました。オンラインでは18日に公開されています。会員限定記事ですがリンクを載せておきます。
【日経新聞】「レコ芸」休刊に波紋 音楽メディア批評、存続の道は (2023/04/18)
休刊のより詳細な理由が書かれており、クラシック音楽CDがピーク時には月間400ぐらいあったのが今は100ぐらいまで減ってしまい、レコード会社からの広告出稿が少なくなったこと、そして読者の85%が50〜70代で高齢化が進んでいることが書かれています。確かにレコ芸の巻尾にある読者からのコメント欄を見ると年齢が高い方たちが多いなと思ったのですが、85%とはすごい割合ですね。長く愛読されていることを表しているようですが、一方で若い読者をあまり獲得できていなかったとは。
クラシック音楽ファンには録音派と生演奏派と分かれているのはずっと以前からのことですが、ピアノのリサイタルやオーケストラの演奏会に行くと20〜30代と思われる若年層の方も結構いて驚きます。今や演奏者が直接SNS で情報発信をしていたりもするので、そうした若い世代は直接情報をキャッチしたり、自分の「推し」の演奏家のファン同士でつながっていたりもします。また、Amazon などのネットショップでは商品レビュー欄に一般の方の感想がたくさん書かれているので、そういうのを参考にして、わざわざ雑誌を買って、自分が興味ない演奏家の録音についてプロが書いた批評を読んだりはしないんだろうなぁと感じています。
今の時代に合ったレビューの掲載を
日経新聞では広告出稿の減少と読者の高齢化を休刊の理由にあげていましたが、SNS により演奏家が情報発信できるようになったことやファン同士のつながり、そしてAmazon エフェクトと言っても良いと思いますが、ネット社会で誰もがレビューできるような時代になったこと、そういうのも影響しているんだろうと私は考えています。
例えば本を買おうとする際に文芸評論家の批評を読むのと、Amazonや楽天に書かれた100人100通りの商品レビューを見て決めるか、映画を見ようとする際に映画評論家1人の批評記事と、それともYahoo映画の1000人の口コミレビューとどちらを参考にするか。
また音楽レビューも英国のグラモフォン誌はオンラインで記事が読めるようになっていますが、レコ芸はホームページはありますが記事のネット掲載はありません。そういうアクセスのしやすさも今の時代に幅広いユーザー層には求められていると思います。
最終号となる2023年7月号が発売
※2023/06/20 更新
そしてついに最終号となる2023年7月号が発売されました。
私は東京スカイツリー近くに用事があったので、通りがかった書店で買おうと考えていたら、音楽コーナーにレコ芸がありません。店員さんに聞くと「取り扱っていません」とのことで、観光地で人通りも多く、しかも有名なチェーン店の書店でもレコ芸を扱っていないのかと驚いてしまいました。
後ほど、他の書店にも足を運んで平積みになっていた最後の1冊を購入できました。
6月号は税込み1430円でしたが、最終号は1540円。様々な執筆陣によるレコ芸で出会った思い入れのあるアルバムの紹介があって読み応えがあります。
個人的に感動したのは「レコード芸術よ、永遠なれ!」(ソニー・クラシカル)や「藝術を終わらせない」(TOPWING)、「70年以上にわたる出版ありがとうございます」(レグルス)などのスポンサーの特別広告。こういう粋な計らい、良いですね。
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