ベートーヴェン ピアノソナタ集 福間 洸太朗(2019年)

ベートーヴェン ピアノ・ソナタ集 福間洸太朗(2019年)
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ集 福間洸太朗(2019年)
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ集 福間洸太朗(2019年)
  • 福間洸太朗初のベートーヴェン・アルバム
  • 「テンペスト」、「テレーゼ」、そして第32番
  • 間合いをたっぷりととった深い音楽

1月24日(日)の日経新聞の朝刊では、日曜版の日経スタイルの「文化時評」で、「コロナ禍が日本の若手育てる」という記事がありました。昨年からのコロナ禍の影響で、海外からの劇団や演奏家、指揮者の来日が難しくなり、その代役として日本人の演奏家や指揮者、特に若手が注目されるようになった、との内容です。

その中に、このような一節が。

例えば82年生まれのピアニスト、福間洸太朗さんのアルバムは、昨年、ベートーベンの生誕250年を記念する多くのCDの中で、一時、トップクラスの売れ行きを記録した。
「コロナ禍が日本の若手育てる」、日経新聞2021年1月24日(日)朝刊

そう、日本人ピアニストで現在はベルリン在住の福間洸太朗(ふくま こうたろう)さんのベートーヴェン・アルバムが紹介されていたのです。

福間洸太朗は1982年、東京都の国分寺市出身のピアニストです。私は「日本人演奏家だから聴こう」という発想は無く、自分の耳で聴いて良いなと思ったら聴き続けようというリスナーです。

2020年はベートーヴェンの生誕250周年のアニバーサリーだったのですが、新たに購入したのはアンドリス・ネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の交響曲全集クラウディオ・アバド指揮ウィーンフィルの交響曲全集ベルナルト・ハイティンク指揮ウィーンフィルのザルツブルク音楽祭2019での演奏で、ウィーンフィルばかり。そう言えばピアノ・ソナタは全然新しいの聴いてないぞと思い、試しに福間さんのアルバムを買ってみることにしました。

このアルバムは、福間さんにとって初のベートーヴェン・アルバムだそうです。解説書には、14歳の時にウィーンのベートーヴェンの墓石を訪れ、その時にベートーヴェンから音楽家になる覚悟はあるか問われた気がする、と語っています。あれから20数年経って、ようやくリリースすることとなったピアノ・ソナタ集。CDには福間さんからのメッセージがこう書かれていました。

私が特別な畏敬の念を抱いて来たベートーヴェンの独創的で幅広い芸術性が皆様にも伝わりますように。
福間 洸太朗、ベートーヴェン・アルバムに寄せて

収録されているのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第17番「テンペスト」、第24番「テレーゼ」、そして第32番の3曲です。それでは順番に聴いていきたいと思います。

こちらは福間さんが温めてきたピアノソナタ。第1楽章の冒頭から、高い集中力で、静かな音まで引き込まれます。作品に込められた内声もうまく引き出しています。打鍵やペダルの残響などの技術も素晴らしいと思います。福間さんの誠実な人柄が出ている感じです。ただ、敢えて言うならもう少し遊びがあっても良いのではと思いました。楽譜に忠実で型にハマっているのですが、もう少しパッションがほとばしっていても良いと思います。

第2楽章は穏やかでゆったりと間合いを取った演奏。静寂な世界に月のように音が引き立っています。ただ、後半になってくると飽きが来てしまいます。もっとアゴーギクを入れても良かったかもしれません。

そして目玉の第3楽章。無窮動で最後まで緊張感ある演奏です。ここでもテクニックがすごいですね。音もクリアに聴こえますし。ただ、激動の荒波が小粒かなという印象。もっと抗えない運命のように大きくうねって表現したほうが私としては好みでした。

CDの2曲目を「テレーゼ」にした理由について、福間さんはこう語っています。

2015年に始めたシリーズ「三大楽聖のキセキ」で取り上げた『テンペスト』と『ラストソナタ』を軸に置き、それらと対比をなし、嬰ヘ長調という珍しい調性で書かれた2楽章制の『テレーゼ』を間に置くというものです。
福間 洸太朗、ベートーヴェン・アルバムに寄せて

ただ、激しい「テンペスト」を聴いた後に「テレーゼ」は結構しんどいです。第1楽章の高音がキンキンとなって、もう疲れてきます。福間さんの演奏はとても誠実なのですが、この曲自体が元気が良すぎます。

最後に、ベートーヴェン最後のピアノソナタ第32番。第1楽章ではたっぷりと間合いをもたせて、1つ1つのフレーズの遷移を丁寧に丁寧に演奏していきます。ここではあまりペダルで音を残さずに、スッキリとした音色で演奏しています。打鍵が切れのあること。ただ、良い意味で中庸と言えば適切でしょうか、あまり差し迫った感じもせず、程よくダイナミックに表現しています。

第2楽章でもたっぷりと間を持たせて、静寂な中にレチタティーヴォの旋律が語りかけるかのように演奏されます。福間さんはフォルテよりもピアノ(弱音)のほうがより魅力を感じますね。星空が輝くような変奏曲では、ペダルをあまり使わないからか、どこかバロック音楽のような武骨な印象を受けました。私個人としては後のロマン派につながるような幻想的な演奏のほうが好みではありますが。

福間 洸太朗による初のベートーヴェン・アルバム。3曲とも高い技術とクリアな音色で聴ける演奏です。

オススメ度

評価 :3/5。

ピアノ:福間 洸太朗
録音:2019年10月28-30日, ワイヤストーン・コンサート・ホール

【タワレコ】ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第17番、第24番、第32番

iTunesで試聴可能。

Naxos Japanの公式YouTubeから「テンペスト」の視聴が可能。

また、関連して福間洸太朗さん自身がテンペストを解説する動画もあります。

特に無し。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。