このアルバムの3つのポイント
- アバド/ベルリンフィルのもう一つの第九
- ザルツブルク音楽祭でのライヴ録音
- 全集とは違う実験的な演奏?
アバド/ベルリンフィルのもう一つの第九
クラウディオ・アバドとベルリンフィルは、2000年〜2001年にベートーヴェンの交響曲全集をドイツ・グラモフォン・レーベルでライヴ録音した。第9番「合唱付き」については、2000年5月1日のベルリンフィルのヨーロッパ・コンサート@ベルリンでのライヴ録音で、こちらの記事で紹介したようにEuroArtsからDVDとしてもリリースされている。そのときは、ほとばしるような情熱がこもった演奏で、胃がんが見つかる前のアバドの壮年期の熱さが感じられた。
それよりも前の1996年、ザルツブルク音楽祭で収録した第九もある。そちらはソニークラシカル・レーベルでの収録なのだが、ソニークラシカルの紹介ページでは「ザルツブルク音楽祭での実況録音」と書かれている。「実況録音」って何だ?、と最初はピンと来なかったが、ライヴ録音と読み替えるとスッキリした。ゲームをプレイしながら話しながら動画にするなら実況録音と言うべきだろうが、音楽の演奏会を収録したのならライヴ録音で良いだろう。何でそんなにまどろっこしい言葉を使っているのだろう。
私はこの録音を2014年にリリースされたClaudio Abbado The Complete RCA and Sony Album Collectionで入手したのだが、既に廃盤になってしまい、この第九は分売でも入手困難になってしまっている。ソニークラシカルからそのうち再リリースされることを期待しているが、ストリーミング配信にあるならそういう心配はないだろう。
実験的な?斬新な解釈
この第九は一言で表すと「実験的」。アバド自身が色々な試行錯誤をしているようだ。2000年のベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音に比べると、まだこちらのザルツブルク盤のほうがおとなしい感じがして、あの録音を聴いてほとばしり過ぎた演奏に眉をひそめた方だったらこちらのほうをオススメする。
第1楽章は適度に重厚感もあり、程よくほとばしっている。ただ、1996年の録音にしては音質が良くなくて、音がこもって聴こえる。
第2楽章Molto vivaceは、タ・タ・タ・タと一音一音を切るように演奏。弦のユニゾンの後のティンパニーがやけに静か。思わず音量のボリュームを確認してしまったほどだったが、再生機器のせいではなく、そういう演奏だったのだ。随分斬新だ。
ポルチーニのように香ばしい第3楽章
第3楽章は文句無しにうまい。ポルチーニ茸のようなふわっと香ばしい匂いがするようだ。柔らかくて温かくて、オブラートにじんわりと包まれている感じ。
第4楽章は冒頭から吠えている。ここは2000年のライヴ録音と共通している。低弦のレチタティーヴォが本当に歌っているように演奏されている。ただ力強さというよりは優しく諭すような声に聴こえる。低弦で演奏される歓喜のメロディがなぜか音が小さすぎてよく聴こえないのだが、続く高い弦に引き継がれてようやく聴こえるようになってくる。トゥッティでの歓喜のメロディはほとばしっていて、逆に音が大きすぎる。ベストな音量のコントロールが難しい。
バリトン独唱の「おお友よ、このような音ではない!」がフライングで、オーケストラの音が止む前に歌われてしまうのもライヴならではのご愛嬌だろうか。アバドは声楽が入った作品を得意としていたが、ここでも合唱が入ってからは特に良い。ただ、音質がもっと良ければクリアに聴こえただろうに、惜しい。合唱の熱唱するところでは音が割れてしまっている。。
まとめ
アバド/ベルリンフィルのもう一つの第九。実験的な感じがしてこの後に2000年のベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音を聴くと違いがよく分かる。
オススメ度
ソプラノ:ジェーン・イーグレン
メゾ・ソプラノ:ヴァルトラウト・マイアー
テノール:ベン・ヘプナー
バス:ブリン・ターフェル
スウェーデン放送合唱団
エリック・エリクソン室内合唱団
指揮:クラウディオ・アバド
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1996年4月2, 6日, ザルツブルク祝祭大劇場(ライヴ)
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iTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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