
完成期に入ったペトレンコ&ベルリンフィルがついにブラ1を録音
2019年からベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者&音楽監督を務めているキリル・ペトレンコ。6年経ってそのコンビが完成されてきています。11月の来日公演ではまさに王者の貫禄を見せつけてくれました。私は横浜のペトルーシュカのほうに行ってきて、こちらの記事で紹介しました。
リリースしたのは、ブラームスの交響曲第1番。ベルリンフィルが得意とするレパートリーで歴代の音楽監督と度々演奏、録音してきた作品です。このドイツ王道とも言えるブラ1をついにペトレンコ&ベルリンフィルが録音しました。
ブラームスの交響曲第1番は2025/26開幕コンサート(8月)、9月定期、そして台湾・韓国・日本のアジアツアー (11月)でも演奏してきたペトレンコとベルリンフィル。CD の情報だと9月17-19日のベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音とあるので、9/19のデジタル・コンサートホールの演奏も含まれています。すると、コンサート・マスターはノア・ベンディックス=バルグリー (樫本 大進ではなく)、オーボエ首席はジョナサン・ケリー (プログラム前半のオーボエ協奏曲ではアルブレヒト・マイヤーでしたが)、フルート首席はステファン・ラグナー・ホスクルドソン (8月の演奏会のほうではエマニュエル・パユでした)、クラリネット首席がヴェンツェル・フックス、ファゴット首席がシュテファン・シュヴァイゲルト、ティンパニはヴィンセント・フォーゲル。
CD よりも配信か映像で
CD の値段が6600円と高価な割に音質はSACD はSHM-CD ではなく通常のCD。なのでレビュー評価が低いですが、私もこれについてはApple ミュージックでハイレゾ音源で聴いています。
来日公演でCD のサイン会がやっていましたが、ベルリンフィルの「メンバーによる」サインであってペトレンコがサインするわけでもなく、そのときの公演のコンマスは樫本さんでしたが、9月録音時のコンマスはノアだったので、と色々考えて私も見送ってしまいました。
往年の響きと高密度の爆発
第1楽章の序奏部。対向配置での演奏ですが、左奥にいるコントラバスが低音を効かせてベルリンフィルの往年の重厚な響きがします。espr. (表情豊かに)の指示がある弦がしっとりと美しく、木管が憂うようです。ピチカートでの第1ヴァイオリンの左と第2ヴァイオリンの右からの音がステレオ高価。148小節では爆発を起こしますが、提示部第1主題は重厚さの中にどこか明るさが感じられて、重苦しさは感じません。190小節の繰り返しは省略します。展開部の第3部ではカオスの世界に。抜け出してから再現部へと入り、12:22あたりでコーダへ入り、熱を冷ましていき、線香花火の炎が消え入るかのように静かに幕が下ります。第1楽章だけでもハ短調かで始まり、ハ長調で終わるのですが、ペトレンコはこの楽章で完結させるのではなく、物語は次の楽章へ。
第2楽章は安らぎのハーモニー。アルフレード・マイヤーによるオーボエのソロが光ります。そして6:12あたりでヴァイオリン独奏。コンマスのノアが気品と存在感を見せてくれます。フェルマータで光が放つように終わると第3楽章へ。クラリネット、ファゴット、ホルンの掛け合いが素晴らしいです。3:48あたりのespr.での陰ができるのを聴き逃せません。
第4楽章はコントラファゴットによる弱くも存在感ある低音から。ピチカートのよる弦のユニゾンが死の宣告のような不気味さをもたらします。ここではゆったりとしたテンポですが、クレッシェンドとともにアッチェレランドを掛けていくペトレンコ。2:50あたりでは序奏部第2部のメロディでフルートが輝いています。ビブラートを効かせてゆらすように。4:50あたりで提示部主要主題が雄大にそして温かく歌われます。5:53、練習番号Dでのフォルテッシモのトゥッティではテンポを上げていきますが、ベルリンフィルのアンサンブルの機動力がすごいです。オーボエとフルートがうますぎませんか。クライマックスではすごすぎるとしか感想が言えないのですが、コーダでの圧倒感といったら。。
「ブラボーをもらうタイプの指揮者ではない」ペトレンコが
デジタル・コンサートホールに上がっているペトレンコ首席指揮者就任時のドキュメンタリーでは、「ブラボーをもらうタイプの指揮者ではない。温かく長い拍手をもらうタイプ」と説明されていましたが、この9月のフィルハーモニーでの演奏はベルリンっ子も熱くなる名演。最後の音が鳴り終わるや否や、ブラボーと拍手喝采を浴びていました。
ペトレンコとベルリンフィルの完成期を感じるブラ1。すごすぎます。
CDでは割高なので、配信またはデジタル・コンサートホールでの視聴をオススメします。
オススメ度
指揮:キリル・ペトレンコ
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2025年9月17-19日, ベルリン・フィルハーモニー (ライブ)
試聴
Apple Music で試聴可能。
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