このアルバムの3つのポイント
- ヘルベルト・フォン・カラヤン、最後の演奏会&レコーディング
- ベルリンフィルのポストとの決別直後のウィーンフィルとの演奏
- 美しすぎるブルックナー
カラヤン最後のレコーディング
20世紀を代表する指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤン。壮年期は芸術監督を務めたベルリンフィルとの録音が多かったが、晩年の1983年からオーケストラの楽団員の加入をめぐり、ベルリンフィルと関係が悪化。その鬱憤を晴らすかのようにウィーンフィルとの演奏が目立つようになる。そして、軋轢が積み重なり、健康上の理由からついに1989年4月24日にベルリンフィルの芸術監督を辞任した。そして、ザルツブルク音楽祭で演奏する予定だったヴェルディの「仮面舞踏会」のリハーサルを行った翌日7月16日にカラヤンは急逝することになった。
結果としてカラヤン最後の演奏会かつ録音となったのが、今回紹介する1989年4月のウィーン楽友協会でのブルックナーの交響曲第7番(ハース版)。ちょうどこの演奏会の期間に、カラヤンはベルリンフィルの芸術監督を辞任したのだが、退路を断って新しい道へと進もうとしたこの演奏会が最後となってしまうとは、カラヤンとしても無念だったのではないだろうか。
交響曲第7番は、敬愛するヴァーグナーの死を予感して第2楽章を書き始めたと言われ、ヴァーグナーの死を知ってから悲しみに暮れて「葬送音楽」と言われるコーダを付け加えたと言われている。死を連想させるこの交響曲を演奏することで、カラヤン自身も何か予感していたことがあるのだろうか。
美しすぎるブルックナー
ブルックナーの交響曲第7番はカラヤンが何度も演奏、録音を行ってきたオハコの曲だし、ブルックナーに関しては右に出るものがいないウィーンフィルとの演奏とあって、否が応でも期待してしまうが、ここでのブルックナーは一味違う。カラヤンはベルリンフィルとの交響曲全集のときでも交響曲第7番の楽譜はハース版を使用していたが、このウィーンフィルとの再録でもハース版を使用している。
第1楽章。美しいトレモロを効かせて、メロディラインがくっきりとこれまた美しい線を描く。どこを聴いても磨き抜かれた美しさで、カラヤン美学の境地に行きついた感がある。低音部はあまり目立たせず、ヴァイオリンなどの高音部の音を前面に出すので、美しい反面、重厚さはあまり感じない。これでもかというぐらい美しく奏でる。美しすぎるブルックナーだ。
第2楽章もまじりっ気のない美しさ。カラヤンが求めた音色をウィーンフィルが見事に具現化させている。そしてコーダでは、透き通った空気の中でレクイエムのように死者を弔うようだ。いや、本当に美しい。
第3楽章はキビキビとしたスケルツォで、ウィーンフィルの柔らかい音色が曲想にマッチする。
第4楽章はゆったりとしたテンポで、ファンファーレを高らかに演奏する。荘厳でも壮大でもなく、程よく進む。クライマックスでもゆっくりと、これまでのカラヤンの集大成のようにトゥッティで力強く奏でられる。やはり高音が強調され、低音部は薄い感じはするが。
まとめ
偉大なる巨匠、ヘルベルト・フォン・カラヤン最後の演奏会となってしまったレコーディング。重厚で荘厳なブルックナーが好みの人には合わないかもしれないが、カラヤン美学の境地とも言うべき美しさだ。
オススメ度
指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1989年4月, ウィーン楽友協会・大ホール(ライヴ)
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受賞
特に無し。
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