このアルバムの3つのポイント
- クラウディオ・アバド、最後のコンサート&レコーディング
- 未完の作品を並べたコンサート
- 英国グラモフォン賞のレコーディング・オブ・ザ・イヤー受賞!
クラウディオ・アバド、最後のコンサート
ルツェルン音楽祭の2013年8月21日から26日に、クラウディオ・アバドはルツェルン祝祭管弦楽団とコンサートを行った。プログラムはシューベルトの交響曲第7番「未完成」とブルックナーの第9番。ともに未完の作品を並べたのが、アバド最後のコンサートとなった。この後にアバド&ルツェルン祝祭管と来日公演を予定していて、ブルックナーの交響曲第9番も演奏するはずだった。しかしアバドの健康状態が芳しくなく、来日公演はキャンセルに。そして2014年1月にアバドは息を引き取った。
この最後のコンサートでのブルックナーの交響曲第9番が、これまでもアバド&ルツェルン祝祭管のコンサート映像をリリースしていたAccentus Musicレーベルで収録されており、2014年にドイツ・グラモフォンレーベルからCDでリリースされた。現在はドイツ・グラモフォンのCDは廃盤となっており、代わりにAccentus Musicレーベルからブルックナーの交響曲第1番&9番のペアで同じ音源のCDがリリースされている。
アバドのブルックナーと言えば
アバドのブルックナーというと、悪い意味で印象深い。1990年代にウィーンフィルとブルックナーの交響曲を多く録音したのだが、アバドの燃え上がるような情熱が、ブルックナーの荘厳さと相性が合わず、ブルックナーを得意とするウィーンフィルとの演奏にも関わらず、最後まで聴くに耐えられない演奏となってしまったのだ。1996年のウィーンフィルとの第9番の録音(FC2ブログ記事)を聴いたときなんかは、これほどブルックナーとの相性が悪い指揮者はいないのではないかと思った。
それが、2011年のルツェルン音楽祭でのブルックナーの交響曲第5番の映像を見たら、印象が変わった。晩年のアバドは、ルツェルン祝祭管とこんなに神の領域のような演奏ができるのか、と。
ゆったりとしたテンポで現れるパッション
さてこの第9番だが、晩年のアバドらしくじっくりと考えられた解釈で、それを音として表現するルツェルン祝祭管の演奏も息がぴったりだ。全体的にゆったりとした流れで進み、ウィーンフィルとの旧録ではドラゴンクエストの「メラゾーマ」のように情熱がほとばしり過ぎて暴走していたかのような演奏だったのだが、今回はまるで違う。
アバドらしいパッションは随所に見受けられるが、適度に重厚感があり、ブルックナーの荘厳さがよく表れている。第1楽章や第2楽章では金管が若干強いかなと思うところがあるので、もう少し柔らかいほうが私個人的には好みではあるが。
第3楽章は弱音まで美しく、慈愛に満ちている。段々消えるように音が無くなっていき、通奏低音だけが残り、それもふっと消えてしまう。永遠に終わらないで欲しい、そんなアダージョである。
まとめ
イギリスのグラモフォン賞を受賞したのも頷ける、アバド最後の貴重な遺産である。
オススメ度
指揮:クラウディオ・アバド
ルツェルン祝祭管弦楽団
録音:2013年8月21-26日, ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(ライヴ)
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【タワレコ】ブルックナー: 交響曲第1&9番試聴
iTunesで試聴可能。
受賞
2015年英国グラモフォン賞のレコーディング・オブ・ザ・イヤーを受賞。
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