このアルバムの3つのポイント
- 2011年夏のルツェルン音楽祭で絶賛されたアバドとルツェルン祝祭管のブル5
- ブルックナーが曲に託した想いがアバドのタクトによって情熱的にほとばしる
- 高音質と鮮明な映像でライヴならではの臨場感
アバドはブルックナーと相性が悪いと思っていたが
クラウディオ・アバドは私が尊敬し、そして好んで聴いている指揮者の1人だが、正直、ブルックナーの演奏についてはあまり良い印象を持っていなかった。1993年のウィーンフィルとの第5番の録音(FC2ブログの記事)も、「テンポの緩急を強調し、金管はけたたましく、ティンパニーも激しい」、「本当にウィーンフィルなのかと思うぐらいに野生的」と感想を書いたとおり、本来ブルックナーを十八番としているウィーンフィルなのに、アバドの激しすぎる情熱的なアプローチで、その良さが生きていないと感じたためである。ブルックナーはアバドと相性が悪い、そう思っていた。
ルツェルン音楽祭2011夏の最高の演奏
それから18年ほど経って2011年ルツェルン音楽祭・夏で演奏された、ブルックナーの交響曲第5番。解説にはこの音楽祭最高の演奏として記憶されたとあるが、まさにその評価に頷ける内容だろう。
静寂と情熱が合わさったような見事な演奏で、喧騒まで行きすぎない絶妙なコントロール。第1楽章のしんと静まり返った中で微かに聴こえる弦のピッツィカートから、金管のコーラスでの壮大さ。静と動の対比が見事である。第2楽章でのゆったりとしたテンポでの美しさは比類無く身体がとろけそうになるぐらいだし、第3楽章の華やかさ、第4楽章のクライマックスでは、荘厳さと美しさに恍惚としてしまう。
アバドの指揮も、無駄な動きがなく蝶が舞うようにしなやか。時折、ルツェルン祝祭管のメンバーが自分たちの演奏に満足そうな笑みを浮かべるときがあるが、やはり演奏者自身が素晴らしいと感じるものは聴き手にも素晴らしいと感じる。
ブルックナーの「理想的な解釈者」と絶賛
Blu-rayの裏ジャケットに、この演奏に対するガーディアン誌の批評が掲載されているが、
“The composer himself, one suspects, might have leapt to embrace Abbado as an ideal interpreter.”
ガーディアン誌
この演奏をもしブルックナー自身が聴いたら、理想的な解釈者だと絶賛してアバドに抱擁しに行っただろう
と書いている。それほどブルックナー交響曲第5番を余すことなく表現し切ったということだろう。
演奏を終えて満面の笑みのクラウディオ・アバド
演奏後に聴衆から温かい拍手で迎えられ、アバドも思わずにっこり。演奏時の無表情な感じと違う柔らかい印象。こういう笑顔も素敵だ。
オススメ度
指揮:クラウディオ・アバド
ルツェルン祝祭管弦楽団
演奏:2011年8月19, 20日, ルツェルン・カルチャー・コングレスセンター(ライヴ)
受賞
2012年英国のグラモフォン賞で「DVD Perfomance」部門を受賞。
試聴
Accentus Musicの公式YouTubeサイトから動画を閲覧可能。
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