このアルバムの3つのポイント
- マウリツィオ・ポリーニによるショパンの後期作品集
- 円熟味を増したピアニズム
- ポリーニにしては珍しいマズルカも
2008年以降のポリーニによるショパン再録音
現代を代表するピアニストの一人、マウリツィオ・ポリーニ。2008年からショパンの作品を作曲年代毎に録音するプロジェクトを始めています。
2008年がピアノソナタ第2番、バラード第2番を含むOp.33〜36とOp.38。
2011年に24の前奏曲とスケルツォ第2番(FC2ブログ)、Op.27、28、30、31。
ショパン主要作品再録音プロジェクト第3弾が今回紹介するアルバムで、『舟歌』や『幻想ポロネーズ』を含むOp.59〜64とOp68 No.4です。
また、第4弾は2018年にOp.55~58のピアノソナタ第3番を含む作品を録音しています。
完璧な技巧で魅了してきたマウリツィオ・ポリーニが、「ほころび」を見せながらも年齢を重ねて深化していくピアニズムが何とも魅力的です。
ショパンに対するポリーニの想い
ピアニストにとってショパンは特別な作曲家だと思いますが、マウリツィオ・ポリーニ自身、今回のアルバムでこう記しています。
1960年のショパン・コンクールで優勝したのも遥か遠い昔のことになってしまいましたが、ベートーヴェンとともにショパンが今でもポリーニの中で特別な存在なのは確かでしょう。
ショパンの後期作品
このディスクで収録されている曲は、
- 舟歌Op.60
- 3つのマズルカOp.59
- 幻想ポロネーズOp.61
- 2つのノクターンOp.62
- 3つのマズルカOp.63
- 3つのワルツOp.64
- マズルカ遺作Op.68 No.4
で、2015年5月, 9月, 2016年5月の録音です。
2016年4月に私はサントリーホールのポリーニのピアノ・リサイタルを聴きに行きました。こちらのFC2ブログに感想を書いています。
演奏後は大ホールが全員スタンディングオベーションで、ポリーニへの人気は衰えを知らないと感じました。
休憩を挟んでプログラム後半の1曲目に『舟歌』を演奏しました。冒頭の和音を弾いたら、溜めずにすぐに開始し、少し急ぎ目の舟の旅となりましたが、ピアノの音色の重なり方が実に綺麗だったのを覚えています。
このディスクのトラック1で聴ける舟歌も記憶にあるものと同じ。演奏時間は7分55秒です。1990年のポリーニの旧録音で8分36秒でしたので、やはり速目になっています。ただ、音の重なりが本当に見事です。
また、『幻想ポロネーズ』でも今だからこそできる演奏で、円熟味ある音楽になっています。
指がもたつくところはありますが
1942年生まれの彼は、録音時で73〜74歳。指がもたつくところも時たまあるのですが、これほど熟成された響きは以前の録音では聴くことはできないでしょう。
Op.62の2曲のノクターン第17番、第18番も深いです。静寂な中で月を眺めている気分です。
今までポリーニがあまり録音しなかったマズルカやワルツも聴けるのは嬉しいですね。
まとめ
常に第一線に立つピアニスト、マウリツィオ・ポリーニのショパンの後期作品集。巨匠の「今」を感じる、深みがあって円熟を増した演奏です。
オススメ度
ピアノ:マウリツィオ・ポリーニ
録音:2015年5月, 9月, 2016年5月, ヘラクレス・ザール
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試聴
上記タワーレコードのページ、ドイツ・グラモフォンの製品ページ及びiTunesで試聴可能。
受賞
特に無し。
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