プロデューサーが首を振った? ショルティ/ウィーンフィルのシューマン交響曲全集(1967-1969年)

シューマン交響曲全集 ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1967-1969年)

このアルバムの3つのポイント

シューマン交響曲全集 ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1967-1969年)
シューマン交響曲全集 ゲオルグ・ショルティ/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1967-1969年)
  • ゲオルグ・ショルティ唯一のシューマンの交響曲録音
  • デッカのプロデューサーが首を振った録音
  • エネルギッシュでみなぎる緊迫感

ゲオルグ・ショルティは、1958年に開始したヴァーグナーの『ニーベルングの指環』の全曲スタジオ録音で、デッカ・レーベルでウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との録音を開始しました。

こちらの記事に『ラインの黄金』のレビューを書いています。

同時期にオペラ以外の作品も録音していて、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」、第5番「運命」、第7番の火花散るような演奏や、こちらの記事で紹介したように、緊迫感があってウィーンフィルを鳴らしきったブルックナーの交響曲第7番、交響曲第8番もあります。

1967年と1969年にショルティとウィーンフィルはシューマンの交響曲全集も録音していますが、これがまたエネルギッシュで緊迫感漂う演奏なのです。

1998年に出版されたサー・ゲオルグ・ショルティの自伝で、このシューマンの交響曲全集について書かれています。

今は自伝が手元に無いので正確な文言は覚えていないのですが、シューマンの交響曲を録音したときに、演奏を聴いていたデッカのプロデューサーが「これはダメだ」という意味で首を横に振ったことが書いてありました。

結果的にショルティ唯一のシューマンの交響曲録音となってしまったこのレコーディングですが、世間的には名盤とは言えないかもしれませんが、私は結構好きな録音です。

シューマンの交響曲全集は他にもたくさん聴きましたが、このショルティ/ウィーンフィル盤ほど明快で豪快な演奏はありませんでした。

私はショルティ没後10周年(2007年)にリリースされた「20世紀の巨匠 ゲオルグ・ショルティの芸術」で出た国内盤のCDと、1999年に出ていた2枚組のDouble Deccaの輸入盤を持っています。

残念ながら、この交響曲全集のCDは今や廃盤で入手困難ですが、iTunesなどの配信では聴くことができます。

この全集には4つの交響曲「序奏、スケルツォとフィナーレ」 Op.52、序曲「ジュリアス・シーザー」  Op.128もカップリングされています。

どれも全体像の見通しが良くて、エネルギッシュな演奏が特徴です。

デッカにしては珍しくところどころ音が割れるところもありますが、それ以上にウィーンフィルを指揮してこれほど逞しい演奏になるのかと驚かされるばかりです。

同時期に録音されたブルックナーの交響曲のときのように、緊迫感が漂っていて、オペラのドラマ性を管弦楽作品に持ってきたショルティの手腕が光っています。

交響曲第1番「春」は冒頭の金管のファンファーレから、ツヤがあって伸びやかです。ウィーンフィルの美音を活かしながら、この時期のショルティらしくドラマティックに仕上げているのです。ヴァイオリンをはじめとする弦楽器の美しさは相変わらずですが、金管やトライアングルが華やかさを添え、キラキラと輝いています。まさに「春」ですね。音が割れることもあり、録音の質は良いとは言えないが、素晴らしい演奏です。

交響曲第2番はシューマンの交響曲の中では最も内省的な作品。ショルティとウィーンフィルは、冒頭から長い時間を掛けてゆっくりとクレッシェンドをしながら、ハーモニーを重ね、主題が出てくるまでたっぷりと金管と木管と弦楽器で紡いでいきます。惜しいのはところどころ音が割れるところですが、この美音はさすがウィーンフィルです。緩急が付いた演奏で、一気に突き進むフレーズではオペラを得意とするショルティの手腕が活きています。

交響曲第3番「ライン」はショルティらしく音のスケールと、ぐいぐいという推進力がすごいです。この曲の持つハツラツさをうまく表現しています。雰囲気が変わる第4楽章では、ウィーンフィルのヴァイオリンの美しさがきらりと光っています。

交響曲第4番は4つあるシューマンの交響曲の中で最も情熱的な曲です。ショルティとウィーンフィルのこの演奏はぎゅっと引き締まった和音と、躍動感あるテンポ、情熱的な弾き走りが特徴的です。全体を通じて弦楽器が特に美しく、さすがウィーンフィル。感情の激しい曲ですが、第2楽章は穏やかな曲想で、特にヴァイオリンの優雅な美しさが素晴らしいです。フィナーレでもテンポを速めて弾き走り、シューマンのパッションが余すことなく再現されています。これは名演だと思います。

カップリングされている「序奏、スケルツォとフィナーレ」Op.52は3曲から成る作品ですが、性格の違う曲想をショルティは見事に振り分けています。フィナーレでの美しさと壮大さが見事です。

序曲「ジュリアス・シーザー」 Op.128は序曲らしくハツラツとしています。やや抑えが効いた演奏で、シャラシャラと輝かしいオーケストラの響きが良いですね。

ゲオルグ・ショルティ唯一のシューマンの交響曲録音。ウィーンフィルから逞しくてエネルギッシュな音楽を生み出しています。

シューマンの交響曲全集では今のところラファエル・クーベリック指揮ベルリンフィルの録音が一番気に入っていますが、このショルティとウィーンフィル盤も好きなアルバムです。

オススメ度

評価 :4/5。

指揮:ゲオルグ・ショルティ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1967年11月(第3番、第4番), 1969年9月(第1番、第2番), ゾフィエンザール

廃盤のため無し。

iTunesで試聴可能。

特に無し。

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