このアルバムの3つのポイント
- ショルティゆかりのハンガリーの作曲家たちの作品
- 音楽監督勇退後のシカゴ響と
- リズム、キレ、引き締まったハーモニー
ショルティゆかりのハンガリーの作曲家
今日は久しぶりに指揮者サー・ゲオルグ・ショルティ (1912-1997年)について。
ショルティはハンガリーのブダペスト出身で、リスト音楽院ではベラ・バルトーク、ゾルターン・コダーイ、レオー・ヴェイネルらに指導を受け、ピアノと指揮、作曲を学んでいます。はじめはピアニストとして活躍し、そして指揮者としてのデビューも1938年にブダペストの歌劇場でした。第二次世界大戦の影響でユダヤ人だったショルティは指揮者としての活動の場を失い、再びピアノに軸を移しましたが、戦争が終わり、1946年にはドイツ・ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場の音楽監督を務めて、デッカとの契約、さらにはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのヴァーグナーの『ニーベルングの指環』の全曲録音で名声を得て、以後はアメリカのシカゴ交響楽団などと活躍し、このオーケストラの黄金時代を迎えることとなりました。
確かに母国はハンガリーですが、1972年にイギリスに帰化していますし、世界で活躍するショルティにとってはハンガリーはアイデンティティでもあり、遠い存在になってしまっていたのも事実。
ハンガリーの作曲家についてもスペシャリストというわけではなく、ショルティの膨大なレパートリーの中の一つという位置付けかもしれませんが、実際にリスト音楽院で教えを受けたこともあるので特別な存在であるでしょう。
今回紹介するアルバムは、ショルティとシカゴ響の「ハンガリー・コネクションズ」。
フランツ・リストのメフィスト・ワルツ第1番、ハンガリー狂詩曲第2番、バルトークの5つのハンガリーのスケッチSz97とルーマニア民俗舞曲Sz68、ヴェイネルの序奏とスケルツォ、そしてコダーイの組曲『ハーリ・ヤーノシュ』Op.35aが収録され、全て1993年11月にシカゴのオーケストラ・ホールでライヴ録音されたもの。
コダーイの『ハーリ・ヤーノシュ』は1949年、当時首席指揮者を務めていたバイエルンでのライヴ録音や、1955年、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とのアナログ録音もあります。
また同じく晩年には1996年にウィーンフィルを指揮したエルガーのエニグマ変奏曲とコダーイの『孔雀』の録音もあります。
22年も務めたシカゴ響の音楽監督に別れを告げ、1991年に勇退したショルティですが、ダニエル・バレンボイム時代もこのオーケストラと引き続き良好な関係を築き、客演やレコーディングをおこなっていて、この1993年のハンガリー・コネクションズもリラックスしたような雰囲気を感じられます。
ファン必聴のハーリ・ヤーノシュ
ハーリ・ヤーノシュはショルティファン必聴の曲といえるでしょう。生誕100周年の2012年に発売されたドキュメンタリー「Journey of a lifetime (人生の旅)」で冒頭に流れるBGM がハーリ・ヤーノシュの第5曲「間奏曲」なのです。音に合わせて様々なショルティの指揮映像がコラージュされていて、映像と音楽がピタリとあって驚かされたものでした。BGM で使用されていた曲の情報は書かれていませんでしたが、アナログ録音のような音質ではなくクリアに聞こえたのでおそらく、この1993年のシカゴ響との録音が使われたのかなと推測しています。
リズム、キレ、引き締まったハーモニー
ハンガリーを思わせる民謡的な作品も珍しく心打たれますが、このアルバムでは何よりもショルティらしさがよく表れています。
厳格なリズムを特徴したショルティらしく、このアルバムでもリズミカルで、演奏にもキレがあります。さらに長年連れ添ったシカゴ響と気心知れるような演奏で、引き締まったハーモニーでドラマティックに盛り上げていきます。もちろん祖国ハンガリーやリスト音楽院の当時を思い出して指揮棒を振ったように感じますが、どこかノスタルジックで素朴なテイストもしっかりと残しています。
まとめ
ハンガリー出身のショルティが晩年に古巣のシカゴ響とリラックスして演奏したライヴ録音。珠玉の一品です。
オススメ度
指揮:サー・ゲオルグ・ショルティ
シカゴ交響楽団
録音:1993年11月, シカゴ・オーケストラ・ホール(ライヴ録音)
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試聴
Apple Music で試聴可能。
受賞
特に無し。
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